肌の揺らぎは一日、ひと月、あるいは季節から年単位で生じるだけでなく
実は一生を通じて起こっています。
10代のころは潤いのある毛穴の引きしたまった弾力のある肌が
ストレスや体内のホルモンバランスの変化により、毛穴が開き、肌がくすみ、たるんできます。
経年変化による代謝速度の低下もこの変化を助長します。
数年前の写真を見ると現在よりもはるかに顔が引き締まり、生き生きとした顔をしていると
感じたことはありませんか?
数年から一生にわたる肌の症状の変化を老化といいますが、
老化も広い意味での、人生における肌の揺らぎを起こすといえるでしょう。
最近、肌の調子が少しおかしい、いったい何が起こっているのか?
肌という組織単位だけでなく、細胞単位、細胞内単位で突き詰めていくと、
細胞の発電機であるミトコンドリアの機能低下ということに行き着きます。
ミトコンドリアは赤血球を除く、すべての細胞に数百個から数千個存在しています。
アデノシン3リン酸(ATP)という高エネルギー物質を作って、細胞の増殖やコラーゲンやセラミドなどの合成をします。
ミトコンドリアではATPをつくると同時に活性酸素も産生されます。
取り込んだ酸素の1から2%が活性酸素になるといわれています。
ミトコンドリア内にはSOD、グルタチオンペルオキシダーゼなどの活性酸素を消去する酵素や
ビタミンC、ビタミンB群、チオレドキシンなどの抗酸化物が存在して活性酸素を消去します。
ストレスや加齢によりミトコンドリアのATP産生能は低下すると同時に活性酸素の産生が増加します。
上の図に示すように、ミトコンドリアの電子伝達系で生じた活性酸素はミトコンドリア内に存在する
SODやグルタチオンペルオキシデースという酵素やビタミンCやグルタチオン(GSH)によって消去されます。
一部の活性酸素は細胞内のシグナル伝達に使用されます。活性酸素はAMPKという酵素やNrf2という転写因子を
活性化してSODの活性化、グルタチオン合成を促進して活性酸素を消去する抗酸化機能を増加させます。
しかしながら、大量の活性酸素が生じると、適正レベルまで減少させることができなくなり、
ミトコンドリアのDNAや、蛋白、脂質、核DNAがダメージを受けます。
ヒトはミトコンドリアと細胞の核に2種類のDNAを持っています。
ミトコンドリアのDNAは電子伝達系をコードするのですが、電子伝達系のすぐそばに存在していて
電子伝達系で生じた活性酸素の影響を受けやすいという特徴があります。
ヒトに精神的、肉体的なストレスが加わると、ミトコンドリアの代謝が増加して、ATP産生だけでなく
活性酸素も同時に生じます。
大量に生じた活性酸素により、ミトコンドリアDNAが障害を受けると、
ミトコンドリアDNAの遺伝子支配を受ける電子伝達系の構造に欠陥が生じ、
より大量の活性酸素が発生すると同時にATP産生は低下します。
その結果、ミトコンドリアDNAがさらに障害を受けるだけでなく、細胞核のDNA、蛋白が障害を受けます。
細胞の増殖、分化に必要なATP産生が低下するので、表皮細胞の合成は低下、皮膚バリア機能低下
コラーゲン、ヒアルロン酸の合成低下による皮膚の委縮、乾燥、が生じます。
ミトコンドリアの障害は大量の活性酸素を生じ、酸化ストレスをお越し、皮膚はくすんできます。
これらの変化が一気に起こると病変発生となりますが、その手前の完璧ではでないが病変という状態が
皮膚の揺らぎを生じるのです。