トラネキサム酸は医学領域では止血剤、美白剤、そして抗炎症剤として
炎症性色素沈着、シミ、アトピー性などの皮膚炎に使用されていました。
最近では、美白作用が注目されいろいろな美白化粧品に配合されています。
トラネキサム酸が美白作用を持つことについては間違いがないのですが、
そのメカニズムについては多少 異なる報告も出ています。
ある実験でメラニン色素を作るメラノサイトという細胞の培養液に直接トラネキサム酸を添加してもメラニン産生は低下しなかった。
そして表皮細胞の培養液を添加するとメラニン産生は増加した。
この時、トラネキサム酸を添加するとメラニン産生は低下したという報告があります。
表皮細胞が産生するプラスミン活性化因子(uPA)がメラニン産生を刺激するのですが、トラネキサム酸はuPAに結合して、uPAがメラノサイトのメラニン産生を刺激するのを抑制するのです。
別の論文では、メラニンをつくる細胞にトラネキサム酸を同程度の濃度添加したら、メラニン産生が抑制され、メラニンを産生するチロジナーゼの合成が低下。さらに、この時オートファジーが増加。すなわち、トラネキサム酸はオートファジーを促進してメラニン産生を抑制するという論文が最近出たのです。
同じ細胞を用いて実験をしても、微妙にデータの異なることはよくあります。
オートファジーとは細胞内の古くなった細胞内器官や不規則に折れ曲がった蛋白を処理して再利用するアンチエイジング効果を持つ作用です。
腹八分の食事によりオートファジーは亢進します。
恐らく限りあるエネルギーをうまく利用するという目的を果たすためでしょう。
また、一般的に受け入れられているトラネキサム酸の効果についての論文です。
トラネキサム酸はメラノサイトで作られたメラニンが表皮細胞に移動するのを抑制して美白作用を発揮します。
実は表皮細胞は自分でKLKなどの蛋白分解酵素を分泌して常にメラニンを自分に取り込む貪食作用を維持するようにしているのです。
トラネキサム酸はKLKに結合して貪食作用を抑制するだけでなく、PAR2というトラネキサム酸の受容体のシグナル伝達を抑制して、貪食抑制作用を強化しています。
さらに皮膚には肥満細胞という炎症性細胞がたくさんあります。
この細胞はtryptaseという蛋白分解酵素を産生します。
tryptaseは表皮細胞の貪食能力を増加させるだけでなく、POMCという
ホルモンの前駆体に作用してαMSHを産生します。
MSHはメラニン産生刺激ホルモンでメラニン産生を増加させます。
トラネキサム酸を外用すると、皮膚の肥満細胞の数が減少し、
さらに肥満細胞の活性化も抑制することが報告されています。
トラネキサム酸はメラノサイト、表皮細胞、肥満細胞など多彩な細胞に作用して
メラニン産生を抑制します。
当院では高濃度トラネキサム酸の導入
ビタミンCと一緒に行うプレミアム美白リフトアップ導入など
トラネキサム酸を利用した多彩なコースを用意しております。
左はプレミアム美白ロフトアップコース前、
右は毎週トリートメントを行った6週間後です。
シミだけでなくシワもなくなっています。なぜシワもなくなったのかは次回解説します。