赤ら顔、酒さのほてり、痛みの原因はTRPV1TRPV2 痛みを感じる受容体です | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

皮膚は外界に接していて、温度の変化などを感知し、最適な反応を取って、皮膚や生体をベストの状態を保つためにTRP (ranjient receptor potentialの略です)というセンサーをもって外界の状況を感知しています。

 

酒さではTRPV1, TRPV2, TRPV4が表皮や肥満細胞で増加していることが

最近報告されました。

 

そこでいったい何をしているのかというのがやっとわかってきました。

僕流に理解して噛み砕いた内容を説明します。

肥満細胞ではTRPV2は蛋白分解酵素の受容体であるPAR-2

に隣接して存在しています。アクネ菌の蛋白分解酵素による刺激などで

活性化した肥満細胞は細胞質の顆粒を放出します。これを脱顆粒と言います。 脱顆粒に伴い放出されたtryptaseという蛋白分解酵素は血管内皮細胞に働いて血管を拡張させるとともに、肥満細胞の蛋白分解酵素受容体であるPAR-2に結合して一酸化窒素、NOを産生します。

NOはTRPV2に結合し活性化してカルシウムイオンを細胞内に流入させます。 

このカルシウムイオンは肥満細胞が大好きなもので、再び肥満細胞を活性化します。そしてまた脱顆粒を引き起こしたり、サイトカインの分泌を促進したりと大活躍します。

TRPV1やTRPV2が活性化するとひりつきや痛みを感じます。

おそらく表皮細胞でも同じようにカルシウムの流入が起こります。

その結果hCAP18という抗菌ペプチドという物質が生産されます。

抗菌ペプチドは抗生物質のようにアクネ菌をやっつける成分です。

そしてカリクレインという蛋白分解酵素がhCAP18をLL37という抗菌ペプチドに変換します。
 

LL37は血管拡張と血管新生をも引き起こします。

悪いばい菌をやっつけるためには血管を開いて血管内のリンパ球などの炎症性細胞を皮膚に誘導してやっつけることが必要だからです。

 

ヒトは、皮膚に存在する脅威、アクネ菌をやっつけようとして血管が開き、抗菌ペプチド LL37が産生されます。

それらがすべて酒さの発症、増悪要因になっているのは皮肉なものです。

 

酒さの場合は過剰反応なのでTRPVの活性を抑えることが必要になります。

 

マグネシウムの細胞内への流入を防ぐ物質としてマグネシウムがあります。

皮膚の場合は飲むよりも塗ることが必要です。

青山ヒフ科クリニックではビタミンCはマグネシウムを含む誘導体を使用しています。

マグネシウムは乾燥肌にも効果を発揮します。

TRPV2はPAR-2が活性化されると活性化するので、PAR-2の活性化を蛋白分解酵素で防ぐことも重要ですね。

 

TRPは外からの脅威を感知するためのセンサーなのです。

この場合、脅威を起こすものはアクネ菌です。

一刻も早くアクネ菌を除くこうとしていろいろな反応が起こるのです。

 

こうして肥満細胞のイラストを描いていたら、武器を一杯持っている

高性能ロボットのような細胞だなと思いました。

酒さの場合真皮には肥満細胞が増加します。

真皮にロボットのような細胞がたくさん存在して、細胞内の顆粒を放出していると、治らないのも道理だなと思てしまいます。

 

酒さの治療のターゲットは肥満細胞です。

これを静かにすること、安定させることが治療の目標です。