海外から高く評価されている小栗康平監督による待望の新作です。
1920年代のパリ。
école de Parisの寵児としてフーフー(お調子者)と呼ばれ、裸婦像を描いた際の乳白色の肌の美しさで評価された男FOUJITA。
école de Parisの寵児としてフーフー(お調子者)と呼ばれ、裸婦像を描いた際の乳白色の肌の美しさで評価された男FOUJITA。
1940年代、戦意高揚のための絵画を集めた「国民総力決戦美術展」で会場中央に展示された「アッツ島玉砕」を描いた藤田。
全く異なる画風の中に込められたもの、絵描きとして彼が求めた表現がなんだったのかがパリと日本二つの国での一時を通して描かれる映画です。
ピカソにはピカソの線があるように、フジタにも彼独特の線がある。
白いキャンバスに筆で細く輪郭が描き出される静謐なシーンからは、この映画が絵を描くために生きた男の物語であると明確に伝わってきます。
フランスで蚤の市に赴き、形への愛着があると語るフジタ。
その彼が、戦中、金属供出で運ばれる寺の鐘や小さな薬罐に静かに触れているシーンからは、人という形=命への愛着と執着、そして残酷にも奪っていく世界への怒りが感じられます。
そして、日本の敗戦を匂わせるシーンでぷつりと終わり、フジタが最後に残した礼拝堂の壁画が静かに静かにスクリーンに映し出されます。
設計からフレスコ画まで全てをフジタが手がけたノートルダム・ド・ラペ。
そのキリストの受難までの一連のフレスコ画の中に込められたのは、喜びも悲しみも全てを受け入れる人間の生き様そのもの。
透明さと力強さ、苛烈さ、美しさ、全てが込められた表現の中に、フジタ自身の姿も描かれています。
映画の中なんども彼の肖像が登場するのですが、私は、ラストに描かれた”彼”、絵を描くために全てを受け入れて生きた彼が好きだな、と思いました。
さて、この映画、とにかく全シーンどのカットも美しい!
光と影のコントラスト、静謐で輪郭のはっきりした景観。
動きが少ないのですが、そのワンカットワンカットがまるで、フジタが見た景色が絵として描かれているような、そんな印象を受ける構成をされています。
絵の修行のために様々な絵描きの模写をしたであろう、そんな習作の数々で綴られている気がするのです。
フジタを演じたのはオダギリジョーさん。おかっぱ頭にセルロイドのメガネ、ポスターからしてフジタそのものでした。
静かで、絵を描くことにはストイックだった絵描きであり、どこかつかみどころのない男として、演じています。
フジタの5番面の妻・君代を演じるのは中谷美紀さん。
ラストシーンには君代の姿も描かれるのですが、フジタのミューズの一人だったのだな、と説得力のある美しさと強さがぴったりでした。
伝記映画ではなく、様々な史実やエピソード、そして作品から想起されるFOUJITA=フジタの姿を描こうという映画。
絵画が好きな方にはどのシーンも楽しく興味深いのではないでしょうか。
群馬県の大川美術館では12月13日まで、1920年代の藤田の素描を中心に、パリの画家たちの作品を展示するという企画展が行われています。
映画とともにどうぞお楽しみくださいね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
透明さと力強さ、苛烈さ、美しさ、全てが込められた表現の中に、フジタ自身の姿も描かれています。
映画の中なんども彼の肖像が登場するのですが、私は、ラストに描かれた”彼”、絵を描くために全てを受け入れて生きた彼が好きだな、と思いました。
さて、この映画、とにかく全シーンどのカットも美しい!
光と影のコントラスト、静謐で輪郭のはっきりした景観。
動きが少ないのですが、そのワンカットワンカットがまるで、フジタが見た景色が絵として描かれているような、そんな印象を受ける構成をされています。
絵の修行のために様々な絵描きの模写をしたであろう、そんな習作の数々で綴られている気がするのです。
フジタを演じたのはオダギリジョーさん。おかっぱ頭にセルロイドのメガネ、ポスターからしてフジタそのものでした。
静かで、絵を描くことにはストイックだった絵描きであり、どこかつかみどころのない男として、演じています。
フジタの5番面の妻・君代を演じるのは中谷美紀さん。
ラストシーンには君代の姿も描かれるのですが、フジタのミューズの一人だったのだな、と説得力のある美しさと強さがぴったりでした。
伝記映画ではなく、様々な史実やエピソード、そして作品から想起されるFOUJITA=フジタの姿を描こうという映画。
絵画が好きな方にはどのシーンも楽しく興味深いのではないでしょうか。
群馬県の大川美術館では12月13日まで、1920年代の藤田の素描を中心に、パリの画家たちの作品を展示するという企画展が行われています。
映画とともにどうぞお楽しみくださいね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
神戸国際松竹 ほか全国ロードショー