正月三ケ日をゆったり過ごせるのは久しぶりでしたので、以前から願っていた初日観劇を実現できました
新春公演初日には文楽人形による鏡開きがおこなわれるのです。
昭和60年の国立文楽劇場開場から続く風物詩なんですよ。
挨拶や、劇場近くの黒門市場から縁起物の「にらみ鯛」が届けられ、お待ちかねの鏡開き。
今年は昼の部の最初の演目「花競四季寿」に登場する「太夫」と「才蔵」の人形が「一、二の三」のかけ声に合わせて豪快に鏡開きを行いました。
私が劇場に着いた9時50分には、この樽酒の振る舞いを待つ人の大行列
一番の人って何時から並ばれていたのでしょう・・・。
さて、演目ですが
第1部(午前11時開演)
『花競四季寿』
近畿圏の四季の情景を綴った景事物(人形による舞踊のような演目)で華やかに舞台の幕が開けられます
『彦山権現誓助剣』「杉坂墓所の段」「毛谷村の段」
剣術の達人で孝行心篤い六助が母を失い悄然としているところ、
老母をつれた浪人が表れ、試合を申し込まれます。
それを引き受け、何者かにおそわれ残された幼子を助けたことで六助の人生が大きく変わります。
『義経千本桜』「道行初音旅」
歌舞伎でもおなじみ。白拍子の静御前が愛する義経のもとを訪ねる道中を、護衛の佐藤忠信(実は狐)を相手に舞や戦物語を繰り広げます。
桜満開の吉野山を背景にした、華やかな一幕。
舞や胸がすっとする敵討の話など、全般に華やかで軽やかな印象の第一部でした。
私はこの昼の第1部だけと思っていたのですが、運良く補助席が買えたので、夜の第2部も見ることが出来ました
この第2部が第1部以上に見応えがありました
第2部(午後4時開演)
『日吉丸稚桜』「駒木山城中の段」
太閤秀吉の生涯のうち、日吉丸の誕生から木下藤吉郎として頭角を現すまでを中心に構成した時代浄瑠璃から、稲葉山城攻めで堀尾茂助吉晴が間道を案内した件を題材にした段です。
初めて観た演目でしたがとても明解で観ていて分かりやすい内容です。
家臣としての忠義、親としての娘への情愛、婿への義理、様々な思いの葛藤の末、五郎助が下す決断に胸が打たれました。
蓑助さんによるお政は、肩の動き具合からそのいじらしさ、切なさ嘆きが伝わってきました。
『冥土の飛脚』「淡路町の段」「封印切りの段」「道行相合かご」
近松門左衛門による『冥土の飛脚』が後の時代に改作され、歌舞伎では『恋飛脚大和往来』としておなじみの演目になっています。
淡路町の店から、堂島の武家屋敷を目指したはずが、いつのまにか新町へ足が向かっていた、というくだりは、大阪の人には距離や方向感覚がすぐにわかるので忠兵衛がどれだけ梅川に入れあげているかが分かるのではないでしょうか。
勘十郎さんの梅川は忠兵衛への一途な恋心と肝の座り具合が伝わってくるものでしたよ。
第2部は夜ということもあり重厚な内容が2つ続き、胸にズーンと響きます。
さて、今大阪松竹座で行われている四代目中村鴈治郎襲名披露の演目でも『封印切』が
上演されています。
初代鴈治郎が定めた玩辞楼十二曲の一つで上方歌舞伎を代表する演目の一つだからです。
悲しき恋人 梅川忠兵衛と二人を取り巻く人々の描かれ方はこの『冥土の飛脚』と違うので、二つを見比べるのに、今は絶好の機会ですよ
とくに封印切りのきっかけとなる八右衛門の描かれ方は180度違いますからね。
江戸と上方が共に盛り上がっていることで歌舞伎の伝統が続くように、
人形浄瑠璃文楽と上方歌舞伎もともに盛り上がっていることが「上方文化」にとって大切なように感じました。
どちらも是非楽しんでください
蛇足ですが、人形浄瑠璃文楽を観ながら古典文法を教わったら、イメージもしやすく素直に古文の読み方を身につけられるような気がするのですが・・・先生方、いかがでしょう?