ベッドに入ってみたものの、一度身体に宿った熱はなかなか引いてくれず、全く眠れそうにない。
託生はもう寝ただろうか?
隣のベッドを見ても、頭まで布団を被っているので分からない。
気まずいまま週末を過ごすのは嫌なんだけどな。
明日の朝、何もなかったようにオレがおはようと言えば、きっと託生はほっとした顔をして、おはようと返してくれて、それで元に戻るはず。
・・・でも、それでいいのか?
オレは二人の関係をより深いものにしたい。
もっと踏み込んで、託生の思いを確認した方がいいんじゃないのか?
それとも、まだ早いのか?
オレは焦り過ぎているんだろうか?
オレの中の相反する二つの感情は、ぶつかり合って結論は出ない。
「・・・ぐすっ・・・・・」
・・・ん?
鼻をすするような音がしたような・・・。
「託生?起きてるのか?」
ビクリと揺れる布団。
返事はないが、起きているのだろう。
ベッドを降りて近づくと、オレの足音に気づいたのか、もう一度布団が震えた。
「起きてるんだろう?」
布団をめくると・・・、
「託生、どうしたんだ!?」
そこには身体を丸め、声を出さないように両手で口を押えて泣いている託生がいた。
オレと目が合うと、慌てて布団を被ろうとする。
その手を捕まえて、そっと抱き起したら、堪えきれなくなった嗚咽と涙がぽろぽろとこぼれ始めた。
「・・・ごめん・・・、なんでも、ない・・・から・・・」
「なんでもないじゃないだろう。こんなに泣いてるのに」
「だって・・・」
オレをちらりと見て、唇を噛んでまたうつむく。
託生は自分の気持ちをうまく言葉にできない。
辛抱強く待つか、短い言葉から汲み取るかだが、さすがにこれだけではオレも分からない。
オレに誘われたことが泣くほど嫌だったのとしたら・・・、
そんなこと言われたら、オレの方が泣きそうだ。
託生が落ち着くまでしばらく抱きしめて、何も言わない託生にそっと話しかける。
「ごめん託生。・・・そんなに嫌だった?」
腕の中の託生がぴくりと揺れる。
うつむいたままで表情は見えないが、オレに身体を預けているし、オレの腕を掴んでいる手が縋っている様にも見えた。
嫌がってるわけじゃないよな?
少しだけ自信が戻ってきた。
「・・・嫌じゃないよ」
託生の小さな呟きがオレを後押しする。
「え?」
聞こえないふりをしたら、
「嫌、じゃない。そうじゃない」
今度ははっきりと聞こえた。
抱きしめる腕に力を込めても、託生が拒絶する気配はなくて。
「じゃあ、なに?」
「・・・ぼくが嫌がったって、ギイに誤解されたと思って」
「だからって泣くことないだろう?」
「もう、・・・誘ってもらえないかと思ったから」
「・・・・・・」
それって・・・。
それって、つまり・・・。
「つまり、オレともうセックスできないと思って泣いてたのか?」
顔をのぞき込むと、託生は耳まで真っ赤に染めて、気まずげに目を泳がせている。
なんだ、照れてただけなのか。
なら、遠慮しなくてもいいよな?
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
こうしてギイは調子にのっていく?