
ライブ盤で、「良いか悪いか」を何を基準として判断するかは様々である。もし「なまめかしさ」や「臨場感」で判断するなら、このアルバムを超えるものはない。最近では、広い場所で記録されたライブはDVDやらCDでも発売されやすい。ところが、狭いライブハウスなどで記録された音源は、なかなか発売されにくい。「臨場感」がないからだろう。日本では山下達郎の『イッツアポッピンタイム』が臨場感がある。このダニーハサウェイのライブで言う「臨場感」は、その場所にいるような疑似体験を、「音」だけでどれだけ取り入れられるかということである。アーティストと客の間隔が近い、一体感がある、雑音が聞こえる、これらはすべてライブ会場が狭いという利点によって記録できるものである。そこには、なまめかしさがある。ある意味この音源はドキュメンタリーに近いとも言えるかもしれない。このCDのために作られたものは何もなく、このライブを産地直送でそのまま記録したものだからである。“the ghetto”は中でも珠玉の作品。1972年。