陽(温・熱)は体を温める食べ物、
陰(涼。寒)は体から熱をとる、体を冷やす食べ物、
平は陽、陰のどちらにも偏らない中間の穏やかな性質の食べ物です。
しかし、この食性は調理による加熱や加工で変化することがあります。
陽と陰のどちらが良いということではなく、下記の食べ物・食材一覧表等を参考にして、季節や生活環境に合わせ、偏らずバランスよく摂取することが大切です。
冷え性の人は、これまで食べていた陰性の食べ物(食材)をまったく制限してしまうことは、現実的でないばかりか、それら陰性の食べ物(食材)から摂取できるはずの栄養素までも制限してしまうことになるため、合理的とは言えません。
それよりも、それら陰性の食べ物(食材)は、加熱調理することにより、或いは体を温める香味野菜、香辛料、調味料その他の食べ物(食材)とうまく取り合わせることにより、体を冷やさない食べ物、体を温める料理に替えて、食べるようにするべきです。
そのうえで、冷え性の人は、体を温める食べ物(食材)を積極的に食べるようにすれば良いのです。
■体を温める食べ物・食材と体を冷やす食べ物・食材の目安 |
北方産の食べ物は体を温め(陽性食品)、南方産の食べ物は体を冷やす(陰性食品)。
北方に住む人はただでさえ寒いのだから、自然に体を温める食べ物を摂るようになり、また、その食べ物が育ちます。
南方に住む人は暑くて仕方がないから、そこでは体を冷やす食べ物を摂るようになり、また、それらがよく収穫されます。
たとえば、そば、塩しゃけなどの北方産の食物は体をあたためる。また、果物は一般に体を冷やす作用がありますが、例外としてリンゴ、サクランボ、ブドウ、プルーンなど、コーカサス地方原産の果物は体を冷やさない。
2…色の黒っぽい食べ物、濃い食べ物,暖色(赤・黒・黄・橙色)の食べ物は体を温めます。
たとえば黒豆、小豆、ヒジキなどの黒に近い色をしているものは、体を温めます。
また、白米より玄米、緑茶より紅茶、白ごまより黒ごま、白砂糖より黒砂糖、白ワインより赤ワインなど色の濃いもののほうが体を温めます。
肉や魚も、白身より赤身が体を温める。肉の中でも、レバーや羊肉は、体を温める食材です。
3…地下で養分を蓄えた食べ物は体を温めます。
地面の下に埋もれているものは、体を温める性質をもっています。
根菜類やイモ類は自分に熱があるので、熱い太陽から逃れようとして、地面の下へ深く伸びようとします。
逆に冷たい性質をもつ食材は、熱を得ようと太陽に向かって伸びていきます。
4…水分が少なく硬い食物は、柔らかいものより体を温めます。
柔らかい食物は、水分や油分を多く含み、体を冷やします。
水分は体に大切なものですが、摂取した水が尿や汗として排出されないと、水分が体に溜まって体を冷やすことになります。油は水とは反対の性質ですが、体を冷やすということでは同じです。
5…塩、すなわちナトリウムの多い食物は体を温めます。
塩、味噌、しょう油、メンタイコ,ちりめんじゃこ、肉、卵、チーズ、漬物、根菜(ゴボウ、にんじん、れんこん、ねぎ、たまねぎ、やまいもなど)は体を温める食材です。
6…酢、カリウムの多い食物は体を冷やします。
葉菜、北方産以外の果物、牛乳、ビールなどは体を冷やす食べ物です。
7…温めも冷やしもしない食べ物(間性)に注目
玄米、トウモロコシ、いも類、大豆、などは、体を温めも冷やしもしない「間性」(陰陽のどちらにも偏らない穏やかな性質=平)という食べ物で、黄~薄茶色の中間色をしている。いつ、どこで、誰が食べてもよく、人類の主食になってきた食べ物は、すべてこの間性の食べ物です。
■体を温める食べ物・体を冷やす食べ物一覧 |
【穀類・豆類】
もち米、黒米、小豆、黒豆
【野菜類】
うど、かぶ、カボチャ、からし菜、グリーンアスパラガス、小松菜、さつまいも、しその葉,玉ねぎ、つくし、菜の花、ニラ、人参、ネギ、パセリ、ピーマン、ふき、山芋、らっきょ,蓮根、わけぎ、わらび
【果物・ナッツ類】
あんず,杏仁、オレンジ、ぎんなん、栗、クルミ、ゴマ、サクランボ、ざくろ、さんざし、なつめ、松の実,陳皮、桃、ココナッツ,ライチ
【肉類】
鶏肉,鶏レバー、豚レバー、羊肉、鹿肉、牛の骨や髄
【魚介類】
あなご、イワシ、海老、干し海老、かつお,鮭、ちりめんじゃこ、なまこ、明太子
【香辛料・調味料】
生姜、コショウ、山椒、クローブ、酒、天然塩、唐辛子、七味唐辛子、豆板醤、シナモン(肉桂)、にんにく、八角、フェンネル、わさび、味噌、しょう油
【油脂】
大豆油、ピーナッツ油、ひまわり油、サフラワー油
【その他】
紅茶、赤ワイン、紹興酒、日本酒、ココナッツミルク,葛
★体を冷やす食べ物
【穀類・豆類】
粟、小麦、白いパン、豆腐、はと麦、ひえ、緑豆、緑豆もやし
【野菜類】
かいわれ、キュウリ、黒きくらげ、くわい、こんにゃく、しめじ、白うり、せり、セロリ、大根、たんぽぽ,冬瓜、トマト、なす、にがうり、白菜、へちま、ホウレン草、まくわうり、よもぎ、レタス
【果物・ナッツ類】
柿,キウイ、スイカ、梨、バナナ、ぶわ、みかん、メロン、ゆず、レモン、羅漢果、パイン
【肉類】
牛の胆のう、すっぽん、馬肉、ピータン、羊の肝臓
【魚介類】
アサリ、うなぎ、うに、カニ、しじみ、たにし、はまぐり、はも
【香辛料・調味料】
白砂糖、合成酢、オイスターソース、テンメンジャン,トウチ
【油脂】
バター、マヨネーズ
【その他】
コーヒー、緑茶、牛乳、清涼飲料水
★温めも冷やしもしない食べ物(間性)
【穀類・豆類】
うるち米,そら豆、大豆、玄米,トウモロコシ、黒パン
【野菜類】
白きくらげ、キャベツ,里芋、椎茸,じゃがいも、春菊、たけのこ、チンゲンサイ、なずな、ブロッコリー,ゆり根
【果物・ナッツ類】
りんご、イチゴ、いちじく、梅、きんかん、グレープフルーツ、すもも、桃仁、ピーナッツ、ぶどう、プルーン
【肉類】
鶏肉、牛肉、豚肉、いのしし肉、うずら卵、牛の胃、牛の腎臓、牛の心臓、牛レバー,鶏の砂肝、鶏卵、豚足、豚の胃、豚の心臓
【魚介類】
アジ、アワビ、いか、貝柱,カキ、くらげ、鯉、さば、さより、白魚、白身魚、スズキ,鯛、たこ、太刀魚、どじょう
【香辛料・調味料】
黒砂糖、氷砂糖
【油脂】
紅花油
【その他】
ウーロン茶、はちみつ、黒みつ
■体を温める春の食べ物 |
春でも寒い日は交感神経がよく働き、温かい日は副交感神経がよく働きます。
一週間のうち、ある日は交感神経優位、ある日は副交感神経優位になるので、バランスがとりにくく、ここから自律神経失調という状態が起こりやすくなります。
自律神経の神経細胞に必要な栄養素はビタミンB1とカルシウムです。
ビタミンはB1はアリウム属の野菜であるネギ、ニラ、ニンニク、タマネギ、ラッキョウに含まれています。
春は特にこれらを多めに摂りましょう。
小麦、胚芽にも入っているので、黒パンや胚芽米をしっかり摂るのもいいでしょう。
カルシウムは小魚やエビ,イカ、タコ、貝、牡蠣などの魚介類、黒砂糖、海藻類、チーズ、自然塩などに含まれています。
また、漢方では生姜とシソの葉が昔から「気を開く」「抑うつ状態をとる」といわれています。
生姜紅茶やシソの葉を入れた味噌汁、シソの葉のてんぷらなど、生姜やシソの葉を摂ることは春先の精神的な不調には効果的です。
この時期を乗り越えるには、野山に芽吹く山菜や、花菜(菜の花、ふきのとうなど)を食べるようにします。
山菜や芽のものには、植物が活動をはじめるのに必要な良質のタンパク質や、多種多様なビタミン、ミネラルが含まれます。
こうした山菜や花菜、木の芽に含まれるアルカロイドという苦味成分には、人の細胞を活性化する作用があります。
これらを食べることで人の細胞も刺激を受け、体の冷えが緩和されます。
★おすすめ春の食材
・山菜…うど、たらの芽
・春の青菜…せり、小松菜
・花のつぼみ、木の芽…菜の花、山椒の若葉(木の芽)
・香味野菜…にんにく、にら、エシャロット
■体を温める夏の食べ物 |
夏野菜は熱を摂る(冷やす)働きをするものが多いのですが、ニンジン、グリーンアスパラガス、絹さや、シソの葉、みょうが、唐辛子、しし唐辛子などは体を温める夏野菜ですから、たっぷりと使いたい野菜です。
夏はハーブの旬です。
セージ、タイム、ローズマリーなどのハーブ類の多くは体を温めますので 煮ものや焼きものにふんだんに使いましょう。
体を冷やす夏野菜であっても、加熱したり、薬味を足すことで、体を温める料理になります。
シソの葉、みょうがなどの香味野菜は、抗菌作用、解毒作用のほか、体を温める効果もあるので、夏場の料理に利用しましょう。
夏場の食卓にのぼることの多い冷奴には、特にたっぷり乗せましょう。
また香辛料の効いた食べ物を食べて汗を出すと、停滞していた代謝が促進されて、食欲が出て、元気も回復してきます。
カレーや炒めものに唐辛子を1本余分に入れて、食べながら汗をたっぷりかきましょう。
体を余り動かさず、汗をかかない人が冷たい水を飲むと、腎臓が冷えて排尿がうまくできずにむくんで、水太りになり、漢方でいう水毒の症状になりやすいです。
水分を摂るときは、体を温めて利尿作用がある飲み物を摂るのがポイントです。
一番簡単なのは紅茶です。生姜紅茶にすると、さらに利尿作用が高まります。
また、夏は冷えたビールを飲む機会も増えますが、ビールの飲み方にちょっとした工夫をしましょう。
1…健康のためには、運動をしたあととか、入浴でひと汗かいたあとに飲む
2…枝豆や塩辛、漬物、ポテトチップス、など塩の効いた体を温めるものを一緒に食べる。
塩辛いものは体を温めるので、ビールの欠点を補います。
3…たくさん飲みたい人は、黒ビールにしたら良いでしょう。黒色の食べ物は体を冷やさないからです。
★おすすめ夏の食材
・緑黄色野菜…にんじん、グリーンアスパラガス、絹さや
・香味野菜…シソの葉、みょうが
・辛味野菜…唐辛子、しし唐辛子
・ハーブ類…タイム、ローズマリー、セージ、ミントなど
■体を温める秋の食べ物 |
夏には一日中ずっと冷房の部屋の中にいたために、体が冷えています。
加えて暑かったので、ついつい水分を摂りすぎています。
私たちの体は夏はもとも基礎代謝を下げて、体温が上がり過ぎないないようにするシステムや、メカニズムがあります。
そういうところに水分を摂りすぎたり、冷房に長く当たったりするので、必要以上に体温が下がってしまいます。
秋口になると、そんな体温低下、水分過剰からくるいろいろな症状があらわれてきます。
下痢、便秘、むくみ、体のダルさ、肩こり、頭痛、目まい、耳鳴など不定愁訴に近い症状が種々雑多に出てきます。
また夏から冬に気候が変わるとき、自律神経は、「リラックスの神経」といわれる副交感神経がよくはたらく夏型から「緊張の神経」といわれる交感神経がよくはたらく冬型に変わっていきます。
秋というのはこの体の働きの切り替え時期でもあります。そのため自律神経のバランスの乱れが起き易くなります。
したがって体を早く冬型に持っていくことが必要です。それには交感神経を緊張させることが大切です。
例えばお風呂はぬるめよりも、熱めのお湯で短時間入る。
運動をする際、少しからだに負担をかける運動をする。
食べ物の工夫としては、少し体内に刺激を与えることが交感神経を緊張させるので、生姜紅茶など生姜を活用したり、ワサビや七味唐辛子などの薬味を多く活用する。
ピリッと刺激を与えてくれるネギ、ニラ、ニンニク、タマネギ、大根などの利用もお勧めです。
★おすすめ秋の食材
昔から漢方には「薬食同源」という言葉があります。
秋の食べ物には「薬食同源」の効果がはっきり分かるほどの効能が含まれています。
秋に収穫される、いも類、豆、そば、栗は体を温めます。くるみやぎんなんも栄養価が高く、代謝を上げる食材です。
1…イモ類:さつまいも、じねんじょ、さといも
2…キノコ類:椎茸、まいたけ、しめじ、マッシュルームなど
(漢方では気を増し、風邪を治し、血液を浄化するといわれています)
3…木の実:ぎんなん、くるみ、栗(良質で吸収率の高い脂肪やタンパク質の宝庫です)
4…豆類:小豆(小豆はタンパク質やビタミンB1が豊富。糖質や脂肪の代謝を促し、利尿作用も大きい)
5…かぶ:体を温める食材なので寒い時期にとくによく食べたいものです。
6…そば:そばのタンパク質は8種類の必須アミノ酸をすべて含んでいます。
7…果物:果物はリンゴ。リンゴには整腸作用のあるペクチン、炎症を抑えるリンゴ酸が含まれ、またカリウムが多く含まれています。
8…魚類:サンマ、サケ。サンマは血栓を溶かし、脳のはたらきを良くする成分、EPA,DHAを含んでいます。また、サンマにはビタミンA、B、DやB12も含まれているので、肌をきれいにする、骨を強くする、老化予防、造血作用を促す力もあります。サケはサケ特有のアスタキサンチンという赤い色素を含み、これは体を温める作用があります。またサケは脂肪が非常に少なく、たんぱく質が多いので、ダイエット食品として効果的です。冬に向けての食材としてサケは最適です。
■体を温める冬の食べ物 |
冬においしい野菜や魚介をつかった温かい鍋物やスープなどで体を温め、風をひかないように注意しましょう。
この時期に体力の消耗を防ぐには、地下でエネルギーを蓄えた根菜類を積極的に食べることです。
根菜類すべてが体を温める性質というわけではありませんが、加熱することで体を温める食材になります。
特に地下深く根をはる山いもは滋養効果が高く、体を温めます。
かぼちゃは、他の野菜にくらべてもβ-カロチンが多量に含まれています。
βーカロチンは体内で消化されて3分の1がビタミンAに変身します。体内に入ったビタミンAは体の粘膜を強め、抵抗力をつけて風などを予防する働きがあります。
寒い時期に冷え性体質の人がかぼちゃを食べるのは非常に効果的です。冬至にはかぼちゃを食べ、ゆず湯に入るという習慣がありますが、これは昔の人が考えた「冬に体を温める」という養生の風習です。
★おすすめ冬の食材
1…根菜類:れんこん、ごぼうう、れんこん、ゆり根、くわい、大根
2…冬の青菜:ほうれんそう、春菊、ブロッコリー
(注)大根は体を冷やしますが加熱することで緩和されます。、
3…黒豆
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