さダビンチによる経口的ロボット支援術(TORS)を終え、切除した病変の病理検査結果がでました。

 

 

 

 

結果は、

 

 

 

 

 

断端陽性えーん

 

 

 

 

切除片の断端(端っこの断面)に、がん細胞が存在しており、体の断端にも同様にがん細胞が残っている可能性が高いことを意味しています。

 

断端陰性イメージ

切除した断面に癌細胞が存在せず、体に癌細胞が残っている可能性は低い。

 

 

 

断端陽性イメージ

切除した断面に癌細胞が存在し、体にも癌細胞が残っている可能性が高い。

 

 

この画像は断端陽性を分かりやすく説明する為に、

 

病巣の端を切除ラインが横切っているかのように書いていますが、

 

明らかな病巣は画像検査(CTやMRI)や目視(又は映像)

 

で見える事が大半で、画像のように明らかな病変を

 

残すことはまず無いと思われます。

 

 

 

断端に残っている癌細胞は、

 

画像検査や目視では発見する事が困難な、

 

顕微鏡で検査しないと分からない細胞と思われます。

 

 

 

 

 

体に癌細胞が残っている可能性が高いということは、

当然再発の可能性が高いので、このまま治療終了とはいきません。

 

 

私の半年に渡る中咽頭がん治療の中で最もショックだったのは、

断端陽性の報告を受けたこの時です。

 

 

断端陽性が起きると、基本的に追加治療が必要で、p16(+)中咽頭がんの場合、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)による”術後照射”が一般的な治療になります。

 

 

IMRT

 

IMRTとは、放射線の強さを調節し、正常な組織への影響を抑えつつ、がんの複雑な形に合わせて病変部のみに放射線を照射する画期的な治療法です。

 

引用:高松赤十字病院

 

 

近年はVMATと呼ばれる回転原体照射に強度変調機能を加え、強度変調回転照射法により、更に体への負荷を低減した治療との事です。

 

 

が、

 

 

中咽頭がんの治療においてIMRTを受けた結果、後遺症である味覚障害や唾液障害に苦しんでいる人が大勢居られる事も事実です。

 

 

ある医師は、これら後遺症はほとんど治ると言い、また別の医師は、治る人もいれば治らない人もいると言います。

 

 

「治る」の定義は曖昧ではありますが、仮に味覚と唾液共に80%以上の回復をもって「治った」としても、Xやアメブロを見る限り、治った人の方が圧倒的に少ない気がします(2023年11月~2024年6月自分調査)

 

 

 

私が中咽頭がんの治療に手術(TORS)を選択したのは、IMRTによる治療を受けたくない(正確には副作用や後遺症を避けたい)が為でした。

 

なのに、断端陽性で、医師からはIMRTによる術後照射を推奨され、途方に暮れてしまいました。

 

 

 

 

しかし、ここで立ち止まってはいけません。

 

 

 

ここに至るまで、100時間以上治療方法を検索し、受験の数倍の熱量で論文を読みあさって来たのは何の為だったか。

 

 

そう、全ては

 

低侵襲な治療により、

 

可能な限り後遺症が少ない状態で

 

治療を完了し、日常に帰る為です。

 

 

治療の完了とは当然ながら、中咽頭がんの「完治」「根治」「寛解」に到達することです。

 

 

 

この思いは断端陽性が判明しても何ら変わりません。

 

 

 

TORSを受けることが決定する前は、IMRTを避ける為にTORSと共に陽子線治療も検討し、一度は陽子線施設にセカンドオピニオンの書類を送ってもらった程です。

 

 

 

 

陽子線とは

 

では、陽子線とは何か。

 

陽子とは、水素の原子核のことで、プラスの電気を帯びた粒子です。陽子は、水素ガスを材料として高温のプラズマ状態の水素原子から電子を引き離してつくります。そして特別な装置を用いてたくさんの陽子を真空中でいっきに加速すると、体のなかへの透過力が大きくがん細胞を破壊する力をもつ“陽子線”となります。このとき用いる装置を加速器とよび、陽子のスピードは光速の70%近くになります。

 

放射線治療は、放射線をがんの病巣に照射し、がん細胞にダメージを与え、増殖能力を奪います。しかし同時に周辺の正常な細胞に対しても放射線はダメージを与えるため、その結果として臓器の障害を引き起こしてしまう可能性が生じます。がんの病巣に集中して放射線を当てつつ、正常な組織への影響は最小限に抑えることが、良い放射線治療につながります。

そこで陽子線の「止まる」という性質が活きてきます。陽子線は一般的に診療で用いられる放射線であるX線と比べ、「止まる深さ」で「細胞へのダメージ」が最大になり、その後方へはほとんど影響しません。さらに陽子線のエネルギーによって「止まる深さ」が決まります。「止まる深さ」をコントロールすることで、がんに集中して放射線を当てることが可能になります。

当院では人体内の深さ25センチメートルまで陽子線を到達させるため、235メガ電子ボルトという数値の陽子線を生成可能です。これは速度で表すと光速の約60%、1秒で地球4周半に相当します。巨大な装置を用いてこのような高エネルギーの陽子線を扱っています。

 

出展:がん研東病院

 

 

分かりやすく言うと、「癌細胞以外の、健康な細胞へ与えるダメージを大幅に抑えた放射線治療の一種」といったところ。

 

放射線(X線)と陽子線の比較

X線は病変にビームが届く前からエネルギーが大きく、病変の手前に大きなダメージが残る。

また、病変を通過後、その先にもビームが届いてしまうので病変の先にもダメージが起きる。

 

 

陽子線のビームでは

緑色に塗った部分のエネルギーがカットされるので、

体へのダメージが少なくて済みます。

 

 

ポイントは、病変の手前ではエネルギーが小さく、

病変で最大化し、病変を過ぎるとエネルギーは有りません。

 

 

 こんな感じで、陽子線治療は癌細胞以外の正常細胞になるべくダメージをかけずに治療ができるので低侵襲なんですが、大きな問題があります。

 

 

まず、私が罹患している中咽頭がん(扁平上皮癌)は、保険適用ではないため、治療が受けられるとしても高額な医療費が必要な「先進医療」になります。

 

 

そして、陽子線治療を受けることが出来る施設は、日本全土で19施設しかありません。(20234年1月時点)

 

 

その19施設の中で、中咽頭がんの治療、それも術後照射をしてくれる施設があるのか。

 

 

大きな課題が出てまいりました。

 

 

施設ごとの治療実績を見ていると、圧倒的に多いのは「前立腺がん」です。

そして、小児がんの実績も多くあります。

 

これは、2016年から小児がんが、2018年には前立腺がんへの陽子線治療が保険適用になった為だと思われます。

 

繰り返しになりますが、中咽頭がんに関しては「扁平上皮癌を除く頭頚部腫瘍」が保険適用となっており、残念ながら私の中咽頭がんは保険適用ではなく、高額な治療費が必要な「先進医療」です。

 

 がん保険で先進医療特約を付けている場合は問題ありませんが、この特約に入っていない為に陽子線治療を諦めてIMRTで治療を受けた人も多いと思います。

 

そんな理由もあってか、日本の陽子線治療施設では、頭頸部がん治療実績はまだまだ少なく、私のようなp16(+)中咽頭がんに限定すると非常に少ないことが分かりました。

 

実績が少ないということは、ノウハウの積み上げも少ないということで、様々なトラブル事例への対応も未知ということになります。

 

そして、私はメインの治療ではなく、術後照射です。術後照射でも陽子線治療が可能なのか、それも気になります。

 

 

 

 

 

話が長くなりすぎてきたので、今日はこの辺で。

 

 

続く