さあ、いよいよ、

 

 

手術支援ロボット「ダヴィンチ」による中咽頭がん原発切除手術です。

 

 

正確には、経口的ロボット支援手術と呼ばれています。

 

 

英語では、Trans oral robotic surgery:TORS

 

トーズ?

トアズ?

まさかのトアス?

何て言うのかな。。。

 

 

 

では、改めて

 

TORSとは

 

 

東京医大のHPには以下の記載があります。

 

咽喉頭がんに対する「ダヴィンチ」手術は経口的ロボット支援手術(Trans oral robotic surgery; TORS)と言われています。

TORSの対象は中咽頭がん、下咽頭がん、声門上がん(喉頭がんの一部)であります。口の中から摘出するために比較的小さいがん(4cm未満)が対象となります。

頸部リンパ節転移の有無については問いませんが、リンパ節転移の状況により適応とならない場合がございます。

当院では2011年8月より「ダヴィンチ」手術に取り組み、臨床研究を重ねてきました。その治療実績が認められ、京都大学、鳥取大学、東京医科大学の3施設で先進医療を行いました。2018年8月頭頸部への適応拡大となりましたが、まだ保険適応ではありません。

現在、保険適応になる申請を行いつつ、臨床実績を重ねております。2019年4月より日本でトレーニングプログラムが始動しました。プログラムの中で当院は中心的な役割を担い、普及活動を続けております。

 

東京医大、鳥取大学、京都大学の3拠点で先進医療を進め、2022年4月に保険適用になったばかりの治療法です。

 

 

特徴は何といっても、

 

放射線治療を回避し、

 

喉の原発を切除できる こと。

 

 

 

 

これだけを聞くと内視鏡手術と同じですが、内視鏡手術から大きく進化した点があります。

 

 

それは、

出展:東京医大HP

 

 

 

 

15倍ズーム3D画像を見ながら、手ブレが制御された3本のアーム

 

 

それも2回転以上回り、自身の手指のような操作感ということです。

 

 

以前にも書きましたが、経験豊富な頭頚部がんの専門医が、

 

 

内視鏡 手術の操作感は、UFOキャッチャー、

 

 

ダビンチは素手でぬいぐるみ

 

 

を掴むイメージとの事でしたので、信頼感は高いです。

 

 

 

 

そして、TORSの全生存率は

 

非ロボット手術よりも高い。

 

 

 

これは大変耳寄りな情報です!

 

 

出展:頭頸部外科におけるロボット支援手術の現状と展望 楯谷一郎

https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/64/3/64_134/_pdf/-char/ja

 

 

 

 

 

 

Why TORS?

なぜTORSを選んだか?

 

 

この治療法を選択するにあたって最大かつ唯一である目的は、

 

 

放射線治療を回避すること

 

 

 

具体的には、放射線治療による

 

 

味覚障害、

 

 

唾液障害、

 

 

生涯続く骨髄炎リスクや、

 

二次がん発症リスクを回避することです。

 

 

 

 

最初の病院の主治医は言いました。

「味覚は85%回復する」

「唾液不足は薬があるので大丈夫」

 

 

 

しかし、Xやアメブロで少し検索しただけで、

 

 

これら2つの後遺症で苦しんでいる人が

 

 

本当に大勢居られる事を知りました。

 

 

 

自分自身も2年前に新型コロナに罹患した際、

 

 

わずか2日間だけでしたが味覚障害を発症し、

 

 

とても焦ったこと、辛かった事が忘れられません。

 

 

 

そして、それだけではなく、

 

 

嚥下障害、顎骨壊死のリスク、二次がんのリスク等

 

 

を考えると、手術で済むなら手術したいとの結論に到達したのです。

 

 

 

 

もちろん、手術のリスクもそれなりで、大なり小なり後遺障害が残ります。

 

 

それぞれの治療にもメリットとデメリットがありますので、

 

 

化学放射線治療のメリットとデメリット、手術のメリットとデメリット

 

 

を調べ尽くし(大げさ)、手術、それもTORSを選択しました。

 

 

何が正解なのか、それは神のみぞ知ることなんだと思います。

 

 

もしかすると、正解は1つではないかもしれませんし、正解が存在しない場合もあるかも知れません。

 

 

 

自分の中での正解は、まずは「生き残る」ことです。

 

 

しかし、単純にこれだけを追求すれば良いわけではありません。

 

 

 

極端に言うと、まず導入療法で抗がん剤、その後頸部郭清術で両リンパ節、喉を切開して原発周辺をごっそり摘出、更に術後照射で抗がん剤を併用した術後照射を75Gy実施したとすると、P16陽性中咽頭がんステージ1患者の治療成績(5年生存率)は現在よりも向上する可能性があります。

 

 

 

このパターンが正解ということも有ると思いますし、最大級のハズレにはならないように思います。

事実、進行がんの場合はこの治療になる可能性はあります。

 

 

ですが、やはり、QOL(Quality of life)

 

クオリティ オブ ライフ「生活の質」

 

 

を意識します。

 

 

 

 

 

 

P16陽性中咽頭がんステージ1で「QOLを意識した治療」を念頭に、

 

 

各治療を受けた後で発症する可能性がある代表的な後遺症を比較すると、

 

 

①化学放射線治療の後遺症と発症可能性
味覚障害 大きい
唾液障害 大きい

耳鳴り 大きい
リンパ浮腫 大きい

嚥下障害 未知数

顎骨壊死や二次がんのリスク 小さい?
喉の痛み、皮膚炎は一過性なので後遺症とはしていません。
 

②頸部郭清術の後遺症
腕の運動障害 大きい
耳から頬、頸部の痺れ、麻痺 大きい

顔面神経麻痺 小さい

ファーストバイト症候群 小さい

 

③ダビンチ手術の後遺症

嚥下障害 小さい

発声障害 小さい

舌の可動域への影響 未知数


 

 

こう書いてみると、それぞれの治療にそれぞれの後遺症がありますね。

 

 

当然、これら以外にも細かな症状は沢山あると思います。

 

 

私は、「私がこの病院で○○○(治療法)で治療した場合、想定できる副作用と後遺症を教えてください」

 

 

と言って、詳細に教えて頂きました。

 

 

私の頸部郭清術の執刀医はベテランで、腕前はおそらくトップレベルです。

 

 

術前の回答と、術後の後遺症の症状はほぼ同じでした。

 

 

少しビビらされたところもありましたがw、

 

 

ベテラン医師であれば、病変の大きさ、広がり等を見極め、自らの経験即によりある程度の予測はできるのかも知れません。

 

 

 

これら後遺症の予測、副作用、治療に要する日数等をトータルで考え、

 

 

 

 

私は、

 

 

頸部郭清術+ダビンチによる

 

 

経口的ロボット支援手術(TORS)を

 

 

選びました。

 

 

 

 

実際の手術のこと、術後の経過は次回に

 

 

 

続く