昨日は、のっこみのチヌ狙いで沖磯に行ってきました。
瀬戸内や大阪湾に比べてチヌの魚影は圧倒的に薄いわが地元。地磯からのフカセでもボウズが当たり前なのですが、今回の磯に限っては例外だそうで、チヌの魚影がすこぶる濃い超一級磯なのです。
しかし、現在渡船が休業中で、普通の人は乗ることが出来ず、私は仕事の関係のつながりがあって、今回特別に2回目の渡礁をさせてもらいました。
「2回目って、このブログでそんなの読んだことないぞ」と思われた方…そうなのです。前回(2週間前)は、この超一級磯でまさかのボウズ(それでも5人で4枚釣れた)。ブログ記事にならなかったのです…
他人の釣果をうらやましく眺めて終わった前回…
今回はリベンジに燃え、イメージを重ねて渡礁。
しかし、釣りを開始すると、前回と潮の流れが全く違い、早くもイメージ通りには行きません。
同行の皆さんはこの磯に通い続けるベテラン勢。開始30分ほどでその中の一人、上司のSさんが一枚目のチヌを釣ると、皆さん続けて竿を曲げ、私を残す3人全員が40㎝級のチヌをゲット。山陰の普通の釣り場ではまずありえないことですが、これが超一級磯たる所以なのでしょう。
しかし、私にはまったくチヌのアタリがありません。
手を変え品を変え…私の釣り座も決して悪くはないはずなのですが、Sさんが4枚目のチヌを取り込んでも尚私はボウズ。
焦りも募りだしたころ、エサが数投連続で残り、雰囲気があるな…と思った途端にアタリ!
しかし、アワセた途端、竿がのされ、手前の根に走られて一瞬でハリスを切られました。
この磯では尾長も出るとのことで、チヌ狙いにはかなりの大仕掛け、竿1.5号、道糸2.5号、ハリス2号を使っていたのですが、勝負になりませんでした。
竿を叩いていたのでチヌのような気がしたのですが、あの引きなら間違いなく50㎝オーバーだったはず…
「この磯にはバケモンがおるっちゅうたじゃろ。ここにおる人全員、これを経験しとるから太仕掛けを使っとるんよ」。
ハリス3号を使うSさん。
悔しさから立ち直れないまま釣りを再開。潮の流れが変わって釣り座を移動。
この釣り座は足場が高く、根の位置や海の中がよく見えます。
ここで、マキエを打つと、足元にマキエを拾うチヌが見えました。
見える魚は釣れないといいますが、Sさんが見えチヌが居た付近で5枚目を釣ったので、喰うんじゃないか…と私も狙ってみます。
先のハリス切れの後、ハリスを太くしたのですが、見えチヌ狙いのためまたハリスを落として投入。
足元狙いの一投目。さっそくウキがモヤモヤとシモリました。
「おっ、ホントに喰った!」先ほどの見えチヌだと確信してアワセ。
…動かない。「なんだ…根掛り??」
が、次の瞬間グングンと地を這うように動きだしました。
かなりの力で、竿はのされ、糸は引き出されっぱなし…
そして、一気に加速し沖に走り出しました。重戦車のごとき怪力。
引きからも、チヌではないのはあきらか。
この感触、もう相手の正体は分かりました。コブダイに違いありません。
瀬戸内と違い山陰はコブダイの魚影も濃くないのですが、この島の周りには大きなコブがたくさんいるとは素潜り漁師の談。
「コブが喰っちゃいましたよ~。獲り込めませんね。」
瀬戸内の方ならコブを掛けたことのある方は多いと思いますが、かなりの怪力の持ち主。根だらけの磯で、竿1.5号、ハリス1.7号で勝負になるような相手ではないことは直感で分かりました。
しかし…「獲れんじゃない!バラすまでは、どんな大きな相手でも絶対獲り込むつもりでやり取りしろ!」と、Sさんの檄が飛びます。
「足元の根に入らず沖に走るなんてラッキーはめったにないぞ!これは死ぬ気で撮りに行け!」
しかし、まったく魚を止められず、ひたすら糸を引き出され、30m走ったところで魚は根に入って動かなくなりました。
5分ほど魚が出るのを待ってみるも出ない…諦めて切ろうとしたとき、魚が動く感触が…
まだ魚はついてる…出せるかもしれない…
5分…
10分…
再び魚が動きました!
一か八か、ここで勝負をかけると、魚は根から離れました!
そして、この根競べで、明らかに相手が弱っているのが分かります。
Sさんの言葉を信じ、ここからは「絶対獲ってやる」と自分に言い聞かせて、必死に格闘。
極限まで曲がる1.5号の竿。おそらく根ずれでさらに強度低下している1.7号ハリスがどこまで持ってくれるのか…
しかし、また相手に主導権を渡せば、こんどこそ獲れません。
道具を信じ、糸を信じ、魚を浮かせます…
ウキが水面に出ました。相手は手前の根につっこむ力を残しているかもしれない…その前に浮かせないと…
すでにこちらの腕もしびれかけています。
「ほら!見えたぞ!でかいコブじゃ!」とSさん。私も魚体を確認…デカい…
Sさんの差し出すタモに怪物が収まったとき、思わず歓喜の絶叫があふれ出ました!
「獲った!俺の勝ちじゃ!!」
「ほら、獲れたろう。ここでフカセの道具でそのサイズのコブを獲ったんはお前が初めてじゃ。普通は手前の根で瞬殺されて、今回みたいに沖に走ってくれることなんてまずないんじゃ。それを見て絶対獲れると思うた。」とSさん。
磯に横たわった巨体を見て、あらためてこの道具で獲れたのが信じられない…
ちなみに、このサイズのコブにしては珍しいメス(コブは雌から雄に性転換する)で、大きさのわりにコブは小さかった。
怪物との死闘に疲労困憊し、ヘナヘナと座り込んで、しばらく釣りを再開できませんでしたが、Sさんがその横でチヌを釣ったのを見て思い出す。
「あっ、そういえば俺、きょう本命のチヌまだ釣ってない。」
すでに納竿の時間は近いですが、最後に本命も釣りたいところ。
タイムアップギリギリで…
なんとかチヌをゲット!
コブの後だと、とても楽に上がってきました(笑)
これで、思い残すことなく納竿。迎えの船を待って帰港。
チヌも45㎝とそこそこ良型なのですが、コブと比べるとこの有り様^^;
港の秤で計測してみます。
6.3㎏! 長さは72㎝でした。
計測して改めて、普通は磯から1.7号のハリスで獲れる魚ではありません。
走った方向、根から出たこと、針が掛かった場所…すべてがラッキーに作用して奇跡的に獲れた魚です。
しかし、普通は獲れないと思うような相手でも、このように獲れることがある…
「バラすまでは、どんな大きな相手でも絶対獲り込むつもりでやり取りしろ!」
Sさんの言葉がなければ、絶対に弱気でやり取りしてしまい、獲れなかったと思います。
この怪物は、その魚体の大きさの他にも、大きなことを教えてくれた一匹でした。
ありがとう!敬意を表して。
使用タックル
竿:シマノ ラディックス磯1.5-53
リール:シマノ BB-Xテクニウム3000
道糸:山豊テグス トラスト2.5号
ハリス:東レ ハイパーガイアXX1.7号
針:オーナー 速攻グレX7号