手塚治虫・傑作選集13 空気の底  手塚治虫  | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

ウイリー・オハラ大尉が、ハーレムに戦死した黒人兵:ジョー・ロビンスの家を訪ねたのには、ある目的があった。戦場で負傷したオハラ大尉は、ジョーからの臓器移植で生き残った。手紙には、そのことが記されており、南部の名家出身の白人であるオハラにとって、それは屈辱以外のなにものでもなかった。老いた母親は、移植された心臓の音を聞かせてくれと頼むが拒否され、手紙を燃やされてしまう。

第2話 ジョーを訪ねた男

 

人種差別の権化のようなオハラ大尉です。

しかし、黒人が売った血液が、白人の輸血用に使われていることを聞かされるに及び改心し、母親の元を再訪するのですが……。

 

改心は、間に合わなかった。

ラストの天に唾する自業自得の結末は予想通り。泣くうさぎ

それでも、過ちをあらたむるにしくはなし。

だから、ちょっと悲しい。

 

 

 

毎週日曜日の新聞で、子ども向け紙面の「手塚塾」と称するコーナーで、手塚マンガが紹介されています。

そこで、上記の「ジョーを訪ねた男」も紹介されていました。

気になってネットで読んだものの、収録されている巻を図書館予約しました。

 

この巻には、昭和43年から45年にかけて、「プレイコミック」誌に掲載された大人向けの短編が16話収められています。

 

戦争や公害や人体実験や近親相姦などを扱ったダークな内容のものが多くて、お子たちには、ちょっとどうかなーと思いました。

 

 

 

鉄砲玉のチンピラヤクザが逃走中に、飛行機事故で遭難した客を助ける羽目に。警察から表彰され一躍有名人となり、講演会、インタビュー、座談会と引っ張りだこに。しかし、追われる身としては迷惑な話で、命の恩人であることを利用し、遭難者の所持する小型飛行機に乗せてもらうことに……。

第8話 そこに穴があった

 

これまた天に唾するものはで、偶然の人助けくらいで、犯した罪は贖えなく、偶然の罰を受けるってことですね。

さしずめ、天網恢恢疎にして漏らさずですか。

 

 

 

嵐の夜、助けた男:チャドが来るまでは、ジュリは、姉:ロザと父親の三人で暮らしていた。宇宙移民のテストのため、ここアリゾナ州スカイピークの宇宙基地の近くの谷間で、何代にもわたり隔離され家族だけで生活していた。ほどなく、ロザと恋仲になったチャド。しかし、チャドが病気であることが判明し、感染を恐れた父は彼を殺そうとした。父から逃げるためチャドと共に谷の上に出たロゼが見たものは……。

第9話 わが谷は未知なりき

 

これまた、ゾクッとするゲッソリ結末。

「火の鳥」とかでも、なかったかなぁ、こういうの。

 

 

 

南伊豆へ休暇がてらスケッチ旅行にでかけたぼくは、大学時代の悪友:小栗を訪ねた。小栗はロバンナという一頭のロバを室内で飼っていた。急な雷雨で一晩泊めてもらうことにしたぼくは、夜中に病気で臥せっていると聞いていた小栗夫人が、ロバンナに襲いかかるのを見た。そして、入室を禁じられていた地下室には……。

第15話 ロバンナよ

 

映画映画『ザ・フライ』のロババージョンでした。

ロバの目に浮かぶ涙に、涙です。泣くうさぎ

 

 

 

一九××年、二、三の大国による戦闘で、多発性核ミサイルが、世界中に致死量のプルトニウム灰をばらまいた。日本の空も同様だった。しかし、宇宙旅行用ユニット・カプセルで、二人の赤ん坊:みどりとジョウが育てられていた。彼らはビデオで学習し、恋に落ちた。ある日見たビデオで、愛し合うふたりのため、万国博では結婚式をあげることができると知り、ふたりはコトブキパビリオンを目指し、外の世界へと脱出した。

第16話 ふたりは空気の底に

 

背景には、太陽の塔が描かれていたりします。

ということは、一九七〇年?

取り敢えず、そーゆーことになっていない現在に感謝?かな。

でも、いまなったら即アウト昇天やけど。

だって、宇宙旅行用ユニット・カプセルなんて、まだないもん。

いや、どっかに、もうあるんかな。

 

今、宇宙ステーションに滞在している人はどうなるんやろ。

などと考えると、これまたゾクッネガティブが止まりません。

 

 

 

 スター

 

本

ぼくたちが

こんど生まれるなら

……こんなにごった

空気の底じゃなくて

あのひろい星の

世界のどこかに

住みたいねえ

ふたご座