桜の森の満開の下  坂口安吾+しきみ | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 


 

鈴鹿峠の桜の森の花の下を通ると、旅人は皆気が変になり、やがて、誰もがその道を避けるようになった。その後、山には一人の山賊が住みついた。しかし、山賊とて例外ではなく、狂気から逃れるすべはなかったものの、花の季節が過ぎると、その恐ろしさを忘れてしまい、女をさらってきては女房にしていた。八人目の女をさらったとき、その女は、先の六人の女房たちを殺すよう男に命じた。

 

 

 

 

怖いですねぇ。

これは、忘れっぽい私も、しっかり覚えております。

 

でも、「乙女の本棚」シリーズ大好きなので再読しました。桜

 

 

 

短編ですが、同シリーズの今まで読んだものと比べると文字が多いためか、絵少な目です。

しかし、その分、文字だけのページにも、数行で1ページを使ったり、背景と文字の色をそれぞれのシーンに合わせて変えたりと、細かな工夫が施されています。

 

 

 

 

一枚目の桜だけの絵が、めちゃめちゃ綺麗。

美しいです。

心がざわつくほどに。桜

 

 

しかし、女と山賊は、ちょっとイメージ違ってハートブレイクました。

 

私の希望としては、女はもっと妖艶であって欲しかったし、山賊は、イケメン風(顔は髪でかくれてて見えないけど)でシュッとし過ぎてる気がします。

もっとワイルド前面出しマッチョ筋肉で、お願いしたかったです。

 

 

だって、この女、かなりな性悪。

この先、山賊をそそのかして、都へ引っ越し、夜毎、男にねだるのは、首、首、首。

生首なのですよ。 ドクロドクロドクロ

 

さすがに、描写のグロい画は、描かれてはいませんが。

 

 

まぁ、感じ方は人それぞれですがね。

今時は、こんなイメージなんでしょか。汗うさぎ

 

 

 

山賊が女をオブって、初めてわが家へと向かう絵と、後に都からわが家へ戻る絵が、まったく同じ構図で描かれています。

これは、面白いなぁ。

 

しかし、背景の木の茂り具合とか、手前にあしらわれた草花、そして、注目すべきは、二人の表情が違うのです。

芸が細かい。グラサン

 

 

驚いたのは、その後、背中に負われた女が鬼化するのですが、なんと、上弦の肆:半天狗そっくりではないですか。びっくり

って、鬼は、みんなこんな顔やけど。てへぺろ

 

 

 

はてさて、女は鬼だったのか。

はたまた、男の幻だったのか。

いやいや、男さえも、存在していたのかどうか、妖しいことこの上ありません。

 

桜ゆえに、綺麗で妖しい物語。     桜

 

 

 

 

 

 

本

頭上に花がありました。その下にひっそりと無限の虚空がみちていました。ひそひそと花が降ります。それだけのことです。外には何の秘密もないのでした。

桜