コロナ黙示録  海堂尊 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

久々に呼び出され、旧病院長室(現学長室)に向かった俺:田口公平は、高階学長から「作家になってみませんか?」と打診を受けた。辞退を試みる俺の前で、隅に置かれた回転椅子がぐるりと回ると、疫病神の厚労省技官:白鳥圭輔が現れた。もとをただせば、それは、「火喰い鳥」こと白鳥からの依頼だった。かくして俺は、『帝国経済新聞』系列ウェブの健康サイトで『イケメン内科医の健康万歳』という新連載のエッセイを書くことに。。。

 

 

 

 

おもしろかったぁ。

「桜宮サーガ」は、もう書かれないのものと思っていたから、ニコニコ嬉しくて照れ嬉しくて。爆  笑

おまけに、オールスター総登場のキラキラ超豪華版デス。

 

 

ストーリィは、二〇一九年十一月から二〇二〇年五月までのコロナ禍のリアル日本に、架空の街:桜宮や北海道の雪見市を絡ませて進みます。

雪見市、そう、北の将軍:速水先生ハートも登場です。

 

 

リアル日本ですからね、首相は安保(あぼ)宰三。

”安保一強”ならぬ”安保一狂”と揶揄されています。

「令和おじさん」の酸ヶ湯官房長官とか、大泉元首相とか、「海山会事件」の会澤次郎とか、ちょこっと名前を変えた実在の人物を彷彿とさせる人々が繰り広げる愚行と「桜宮サーガ」の登場人物が交差して、めっちゃおもしろいです。

 

 

「有朋学園事件」、「満開の桜を愛でる会」と、<たとえ『フェイク』であったとしても、人々が受け入れたら『ファクト』となる>と宰三のラブラブ愛妻:アッキーナこと明菜の天真爛漫すぎる(なにごとも過ぎたるは猶及ばざるが如しでございますよ)アドバイスに、嬉々として従い、「お友だち」を優遇大切にする宰三って。。。

 

げっ、こんなん書いてええのぉ。

まんまやん。びっくり

ヤバくない?

しかし、ここまで虚仮にすると、読んでる方も、めっちゃスカッとします。グラサン拍手

まぁ、この国の為政者がこれかと思うと、一瞬後には、うすら寒くなるのですが。

 

桜宮サイドでは、病院雪見市救命救急センターの研修医:仕事の遅い遅太郎こと大曾根富雄がコロナに罹り、速水先生も自主隔離。

内科患者を世良先生の極北市民病院に転院させ、雪見市救命救急センターは外科に特化します。

 

一方、東城大では、横浜港に寄港した豪華クルーズ船:ダイヤモンド・ダスト号船で発生したコロナ軽症患者を受け入れることに。

例によって例のごとく、丸投げを当然のように受け容れる所作も板についた田口先生が、「新型コロナウイルス対策本部」略して『シンコロ』本部長に就任して、オレンジ新棟復活!!とばかりに、速水先生にラブコール恋の矢協力要請をおくります。

 

 

白鳥の部下である氷姫こと姫宮もやってきて、みんなの前で防護服の着脱方法を披露したり、感染症関連学会の異端児:名村教授からは、ゾーニングの講義を受けたりと、とってもお勉強になります。

 

ただし、笑いを忘れない作家ですからね。

「レッド丸レッドとグリーン四角グリーンは混ぜるな危険」とか、「赤と緑を混ぜたら黒、ダークゾーンに落ちてしまう、ルーク、フォースを使え!」には、クスクス、ニヤリ。

フォースが使えたら、苦労しませんがな。ドクロ

バカバカしいけど、楽しい音譜です。

 

 

この名村教授は、今回初登場キャラなのですが大活躍です。

ダイヤモンド・ダスト号船に乗り込んで、マズい対応を指摘したため追い出されてしまいます。

しかし、『マズい対応がバレるとマズい』とばかりに行われた隠蔽を暴き、ミスは悪くないけれど、ミスをごまかしたらマズいんじゃない?と動画を公開するなど、「掟破りのナパーム弾」というあだ名(このシリーズの登場人物って二つ名多いですね。)どおりの行動で、周囲を驚かせてくれます。

 

あー、こんなこと、あったよなー。

巻末の<参考文献>見て、モデル借用に納得。

 

 

そして、ダイヤモンド・ダスト号船からやってきた軽症患者の中には、雪見市救命救急センター病院の看護師:保坂美貴がクルーズ旅行をプレゼントした彼女の祖母:貴美子がいました。

 

容体が急変した遅太郎をECMOに載せるため、無症候感染者叫びの速水先生と美貴が、雪見市からドクターヘリならぬドクタージェットで、東城大へ。

 

きゃっラブ、オレンジ新棟にジェネラルルージュ降臨。ルンルン

 

しかし、そこで待っていたのは、いのちの選択。ガーン

25歳、医師と、73歳、無職の女性。

患者二人に、使えるECMOは、一台だけ。

どうするどうする、田口センセ。

やっぱり、ここが見どころかなぁ。

 

でも、結果は、だいぶ都合よすぎやなぁ。

星見ルーム星のプラネタリウムは、これまた嬉しいハート遭遇やけど。

どーなったかは、ネタバレになるので、速水先生のお言葉だけ記しておきます。

 

本「だがもし、祈ることで患者を救えるのなら、俺はいくらでも祈ってやるよ」

 

 

他にも、「アホなマスク」ゲホゲホや「公文書改竄」に、「賭けマージャンスキャンダル」、「公私混同不倫視察旅行」など、『新春砲』で派手にスクープされた事件と絡んでたり、村雨元浪速府知事率いる政治集団:梁山泊の「天下三分の計」やら、当然のこと、AI 診断も、もう本当にこぼれ落ちんばかりに盛って盛って、これ以上ないほどのデカ盛り。

 

その上、時風新報メモの別宮葉子(今や副編集長におなりです)や、特別顧問になってる猫田さんに、スカラムーシュ:彦根新吾とか、ちょっとベージを繰るだけで、あちらこちらで有名人に遭遇します。

これも嬉しいなぁ。照れ

 

 

とにかく読みどころ満載の一冊でした。

この後も気になるなぁ。

ぜひぜひ、この続篇、書いて頂きたいラブラブです。

 

 

ただね、ラストの梁山泊には、ちょっと拍子抜けしました。

でも、これって、人に頼るなってこと かな。

精鋭たちに全部押しつけて、漁夫の利を得ようとするんじゃなくて、自分たちも動けよって言われたようでもあり。。。ドクロ汗

 

 

ということで、名村教授から、田口へのメッセージを、しっかり胸に刻みたいと思います。

安心して、止まったらアウトやねん。

転がる医師石に苔は生えない。

 

 

本 「田口氏、私の言うことをシャカリキになって守ろうとしてはいけません。相手は未知のウイルスですから、私だって間違えます。だからどんどんルールや教えを変えてください。でないと自分たちが作り上げた規則を絶対だと思い込み全てが後手後手で感染を拡大することになった、厚労省と同じになってしまいますからね」

 

 

 

 

 

【おまけ】

病原菌の命名と「スティグマ タイゼーション」

 

①地理的な位置

②人名

③動物や食品名

④特定の文化や産業

以上四項目をウイルスの名前に含んではいけないというガイドラインをWHOは策定しています。

 

だからトランペットアメリカ米大統領が『武漢ウイルス』と呼んでいたのはアウト!

「インフルエンザ・キャメル」騒動の検疫官だった喜国さん、今は蝦夷大学の准教授になっておられ、速水先生たちにレクチャしてました。

ちなみに、彼はこの巻で『八割パパ』と呼ばれています。

 

現在、WHOは、コロナ変異種にギリシャ文字を当てていますが、覚えにくいことこの上なく、個人的には、レクチャを受けた彼らと同じように ん?なのですが、一部の人に汚名を着せることになる命名は、やはり避けるべきなんやろなと思います。

 

そして、キャメルの第一号患者になった少年の家族みたいに、不利益被る人をがでないようにと望むばかりです。

ブルーハートブルーハーツ