「終電のゼントルマン」中入り後、「けだるい雰囲気の学習院大卒・柳家喜多八」師匠が高座に。

 『粗忽の釘』・・・引越し準備に大童の女将さん、一方では亭主が手伝いもせず煙草を呑んでいる。

 愚痴を言われた亭主が風呂敷を用意させ「箪笥」を担ぐと言い出す。

 ついでに「火鉢」「裁縫箱」「瓢箪」を重ね、立ち上がろうとするが立てない。

「瓢箪」「裁縫箱」「火鉢」の順に降ろし「箪笥」を担いでフラフラと亭主は出て行く。

 女将さんが引っ越し先に着き、片付け終わってからも亭主は戻ってこない。

そこに道を尋ねながら亭主が到着する、慌て者の亭主は「引っ越し先が良く判っていなかった」

 一服点けようとする亭主に女将さんが箒を掛けるために、柱に釘を打つように頼む。

ふて腐れた亭主は、女将さんが止めるのも聞かず、八寸の瓦釘を壁に全部打ち込み、箒を掛ける事も出来ない。

薄い壁に打ち込んだ御詫びがてら近所に引越し挨拶に向かう。

 隣家に行くべきを勘違いして筋向いに行き「慌て者」と呆れられ、今度は間違いなく釘を打ち込んだ隣家を訪ねる。

落ち着こう落ち着けば俺も一人前と呟きながら、隣家の煙草を借り、徐に火をつける。

隣の夫婦の馴れ初めを聞き、自分と女将さんとの「惚気話」も始めて気味悪がられる。

訪ねてきた理由を聞かれてやっと釘の事を思い出す。

調べてみると仏壇の中の阿弥陀様の股間に釘が飛び出している・・・なんと元気な阿弥陀様!
 
大変に賑やかな「粗忽の釘」で有りました。


 本日のトリが「滝川鯉昇」師匠の『味噌蔵』

 味噌問屋「しわい屋けち兵衛」は「女房を貰って子供が出来ると物入り」と独身で過ごしている。

周りから、独り身を続けるようでは付合わないと諭され嫁を迎えるが、一つ布団にはならなかった。

冬の夜、薄い布団の寒さに耐え切れずに同衾し、それが続く。

女房が酸っぱいものが食べたいと言い出す・・・梅干を勧めるが、違うと言われ気が付く・・・快楽に漬かり過ぎた!

出産費用を節約しようと番頭に知恵を借りて里方に帰し、十月十日過ぎ男の子が生まれる、今度は養育費の心配。

一度顔を見に里方に向かおうとして、番頭に「火の用心が肝要。イザと言う時は商売物の味噌で蔵の目盛りを

するように、目盛りで焼けた味噌は、それはそれで『焼き味噌」で売れるから」と説明する。

 さて旦那の居なくなったあと、店では番頭が中心になって酒盛り宴会が始まり、豆腐屋に「田楽」を注文する。

酒を飲む人も居るし、飯を食う人も居るから、焼けたところから二、三丁ずつ持ってくるように手配する。

 そこに、泊まってくるはずの旦那が、遅くまで働く豆腐屋の前を通って戻ってくる。

大騒ぎを見つけ、カンカンに怒っている最中に豆腐屋が「田楽」を届けに来る。

   豆腐屋:お頼み申します。

   ケチ兵衛:お買い物は明朝に願います。

   豆腐屋:焼けてきました。焼けてきたんですが。

   ケチ兵衛:焼けてきた?(スッカリ火事と思い込み)どこら辺から?
 
   豆腐屋:横丁の豆腐屋から。

   ケチ兵衛:火元は近いね。で、どのくらい。

   豆腐屋:今のところ二、三丁で。

   ケチ兵衛:そんなに!足が速いね。

   豆腐屋:後からドンドン焼けてきます。

   ケチ兵衛:大変だ!と、戸を開ける・・・田楽の香りがプーンと来た。

             いけない!家の味噌蔵に火が回った!