前回のシンガポール通信では、「生活実感としてのシンガポールの環境変化」として、まずは何と言っても「人が増えた!」ということをあげてシンガポールの人口動態変化について触れたのですが、人が増えたことと同様に最近つくづく実感するものとして、「車が増えた!」ということがあげられます。
勿論、東南アジアの都市部、例えばジャカルタやバンコク、マニラのような「超」がつくほど異常な「交通渋滞都市」に比べれば、未だ全く比較にならないくらいスムースな都市交通状況と言えるのでしょうが、「以前の」シンガポールに比べると明らかに悪化しています。
ということで、シンガポールの登録車両数の変遷を調べてみましたら以下の通りでした。
2001年708千台、2006年799千台、2011年957千台、2012年11月現在969千台。
<LTA(Land Transport Authority)http://www.lta.gov.sg/content/ltaweb/en/publications-and-research.html>
つまり、この淡路島程度の国土(710平方キロで日本の0.2%以下)に現在約100万台の車両があり、この10年余りの間で4割近く増えたということです。
(加えて、陸続きのお隣マレーシアからの日常的に流入している車両が5~10%あるそうです)
尤も、日本には約80百万台の車両があり(http://www.airia.or.jp/number/index.html)人口(128百万人)比では、日本は1.6人当たり一台であるのに対し、シンガポールの居住人口は5.2百万人ですから、5.2人当たり一台という計算になります。
*閑話休題
現在世界中にはばくっと10億台ほどの車両があるそうで、米国(人口3.1億人)の車両数が約2億5千万台、日本の車両数が約8千万台弱で、この2カ国だけで全世界の3割を占めていますが、中国、インド、インドネシア、ブラジル(この4カ国だけで総人口は30億人!)といった新興大国の経済成長に伴い世界の中間層人口は爆発的に増えるのでしょうから、ほっておきますと、世界の車両数はとんでもなく増えていってしまいそうです。
多くの新興国においては、大量高速輸送の公共交通機関(Mass Rapid Transit)が未発達の為、畢竟人は自らの輸送手段として二輪車、四輪車の購入に走る(走らざるをえない?)のですが、その増加数に道路という基幹インフラの整備が追いつかず、例えばジャカルタなんかでは「二輪車・乗用車の道路占有面積が、道路の総面積を超える」という悲劇的(喜劇的?)な状況になっています。
一方、シンガポールは地下鉄、バス、タクシーといった公共交通網の充実度は間違いなく世界のトップクラスであり、この狭い都市国家の中で自ら車両を所有する必要性自体が甚だ低いのですが、それでも人の「欲」なのでしょうか、どうしても自分の車が欲しいという人は未だ結構いるようです。
では、シンガポールの車両数は今後も現在の100万台から150万台、200万台とどんどん増えていくのかというと、実はそういうことにはなりません。
シンガポールは、その小さな国土面積の為、自ずと物理的に許容可能な車両数に限界があります。1965年の独立後、かなり早い段階から、いかにして車の台数自体を経済成長との兼ね合いの中でコントロールするかに苦心し、72年に輸入税を40%まで引き上げ、74年には追加登録料を55%まで引上げました。
追加登録料はその後も段階的に上昇、80年には150%まで上がりましたが、それでも自動車の需要が強く、交通渋滞の懸念から1990年よりCOE (Certificate Of Entitlement) と言われる車両取得権利制度を設けました(COEの有効期限は10年とし、車両の登録抹消台数と、いつ何台満期が来るかを把握できるようになりました)。政府はCOEの発行部数をコントロールする事で登録台数の制御を図ることになったわけです。
つまり、シンガポールにて車を所有する(登録する)にはまずはCOEを取得する必要があるわけです。
で、そのCOEは現在、月二回の電子入札制度の元で落札されており、一方、毎期のCOE発行数自体は、登録抹消台数と、車両台数の許容増加率を基に陸運庁(LTA)が決めています。
その結果、毎回の入札で需給に応じて落札価格が変動するのですが、先月はこういう新聞記事がありました。
~「小型車のCOE価格が8万Sドルを超える史上最高値」2012年12月20日~
12月第二回目のCOE(新車購入権)入札の結果が12月19日に発表され、排気量1600ccまでの小型車のCOEは8万1,889Sドル(約600万円弱)となり、史上最高となったということです。
言っておきますが、これは車の価格ではなく、車を10年間所有する権利だけの価格ですよ。
いわば駐車場代のようなもの(?)が年間60万円(月5万円)。。。。まあ、バブル期の東京都心での駐車場代もその位したかと思うと妙に納得する人もいるかもしれませんが、少なくとも筆者には全く理解できません。
車所有欲がある人達が払う価格ですので、筆者には関係ないのですが、COE価格にしても常に高騰を続けるものではなく、結構価格変動を繰り返してきたものであり、又時に「暴落」という事態もありました。
例えば、
アジア通貨危機の年、1997年12月:
大型車向けCOE(カテゴリーB)価格が前月の$64,100から$50まで暴落。
ドットコムバブル崩壊の翌年、 2001年6月:
小型車向けCOE(カテゴリーA)価格が前月の$32,100から$120まで暴落。
リーマン・ショックの年、 2008年11月:
小型車向けCOE(カテゴリーA)価格が前月の$10,455から$2まで暴落。
まあ、人の欲が絡むものはどんなものも、ブーム&バーストからは逃れられないということでしょうか?