"Enhanced regulatory regime for fund management companies in Singapore”
去る8月6日に、当地シンガポールにおける投資運用会社(FMCs=Fund Management Companies)に対する新規制が監督官庁であるMAS(Monetary Authority Of Singapore)により発表され、翌8月7日よりの施行となりました。
従来、シンガポールにおける投資運用業者規制の枠組みは、
「シンガポールで投資運用業を行うものはCMS(Capital Markets Services)ライセンスをMASより取得しなさい。」
というのが基本原則であるものの、
「但し<一定の制約条件>内で当該サービスを提供する場合は、CMSライセンス取得義務は免除(Exempt)され、Exempt Fund Manager(EFM)としての通知をMASに行う事で足る。」
というExempt制度があったところに特色がありました。
この<一定の制約条件>の定義ですが、種々変遷(注1)があったものの8月6日の時点では、当該投資運用サービス対象顧客の①属性と②数に以下の様な制限を課したものでした。
①属性:Qualified Investorsとして定義されるファンド、富裕個人、自己資本S$10百万以上の企業、金融機関等々。
②数:顧客数合計30以下
(丁度日本の私募投信でいうところの、プロ私募と少人数私募の概念を合わせたようなものと考えると分かりやすいでしょうか?)
もっとも、②の数ですが、投資運用サービス契約の対象顧客が、所謂「ファンド」(CIS=Collective Investment Scheme)の場合は当該CISの全投資家の属性が①を満たしていることが必要であり、その場合CISの投資家が何人いようが、顧客数はCISに対する1のみのカウントになります。
(注1)かつては、顧客対象にシンガポール人(Entity)を一切含まない事とかいう制限があったり、それが一定比率まではOKとなったりした上で、徐々にシンガポール人(Entity)がいるかどうかの区分が取り払われていったという経緯があります。
さて、本日(8月17日)現在、MASにEFMとして通知されている投資運用業者数はその会社規模の大小を問わず582社(注2)にのぼります。
シンガポールに拠点を構え、いわゆるヘッジファンド運用をしている会社の大半は従来この「EFM」という1つのカテゴリー内にあったのですが、今回の新規制により、
・契約運用資産額がS$250百万(円換算約160億円)を超える場合はCMSライセンス取得が義務付けられ、Licensed FMCs(LFMCs)と呼ばれることになります。
・一方、契約運用資産額がS$250百万以下の場合はCMSライセンス取得義務は免除されるもののMASに登録される必要があり、Registered FMCs(RFMCs)と呼ばれることになります。
(余談ですが、今回の新規制に至る最初のConsultation PaperがMASより出された2010年4月の時点では当該カテゴリー名称についてはNotified FMCs(NFMCs)とされていたものが、昨年9月に出された二回目のConsultation PaperにおいてNotified(通知)からRegistered(登録)へと名称が変更されたといういきさつがあります)
更に、Licensed FMCsは、
・Qualified Investors以外も顧客対象とするRetail Licensed FMCs(Retail FMCs)と、
・Qualified Investorsのみを顧客対象とするAccredited/Institutional Licensed FMCs(A/I LFMCs)
の2つにわかれ、前者が従来のCMSライセンスに相当し、後者が今回新設されたライセンスカテゴリーということになります。
Registered FMCsの場合は、従来のEFM同様に対象顧客はQualified Investorsのみに限定され顧客数も30以下(且、CISを契約対象とする場合、その数は15まで)ですが、A/I LFMCsの場合は顧客数の制限が撤廃されます。
さて、MASによりますと、Registered FMCsが従来のEFMというRegimeに取って代わるものであるとしているのですが、さすがに、「Enhanced regulatory regime for fund management companies」と自ら謳っているように、登録にあたっての必要要件ハードルは上がっています。
又、当然ながらLicensed FMCsになるにあたっての必要要件はそれ以上のものになっています。
具体的な必要要件の詳細については上記のガイドラインを参照願いたいのですが、基本コンセプトは2010年4月に出された最初のConsultation Paperからそれほど外れていないかと思います。
即ち、
・「Competency」という専門性を問う切り口:Directors、CEO、Professionals、Representativesに対する人数、専門性、経験、居住条件等の要件
・「Business Conduct」という基本的な業務遂行の仕組みのあり方を問う切り口:Risk Management Framework、Compliance Arrangement、Internal Audit、Independent Annual Audit、Professional Indemnity Insurance、Disclosures等の要件
・「Capital」という運用会社の安定性を問う切り口:Base Capital、Risk-based Capital等の要件
に焦点を当てたAdmission Criteriaとなっています。
尚、今般の新規制は上述のごとく8月7日より発効となっていますが、既存のEFM及びCMSにつきましては6ヶ月間の移行期間が設定されており、2013年2月6日までにRegistration申請/License申請を行うことになっています。又審査所要期間は約12週間とされています。
今般の新規制法の全体観としましては、現在少人数で投資運用業を行なっているEFMの方々や、新規にVenture的に立ち上げようとしてる方にとってはちょっと重たいのかなという印象はありますが、大体どの必要要件も投資運用業のNatureからしますと極めて真当なものという印象です。
更に言いますと、今回の新規制で求められているものは、「規制」があろうがなかろうが、投資運用業者としての「ビジネス」を行う者にとっては、当然のものとして具備していて然るべきものかと思います。
(注2)
MASのHP内にFinantial Institutions Directory(https://secure.mas.gov.sg/fid
)というのがあり、その中のEFMカテゴリーを時々チェックするのですが、新規制移行への最初のConsultation Paperが出た2010年4月27日時点での会社数は499社でした。つまり過去2年半足らずの間に100社近く増えたことになります。
尤も当社がシンガポールに運用拠点を構えました2004年11月時点でのEFMの数は確か100社前後であったかに記憶していますので、この8年足らずの間で約6倍に増えたわけです。まさに隔世の感があります。
因みに日本はどうかといいますと、平成24年3月末時点で投資運用業登録されている会社数は321社となっています。