■日本のLCC(Low Cost Carrier)元年
7月に入りました。日本(の多く)では未だ梅雨は明けていないようですが、そろそろ「夏休み」の旅行計画なども話題にのぼっている今日この頃ではないでしょうか?
さて、そういった中、「3月に運行を開始した全日本空輸系のピーチ・アビエーション(関西空港ハブ)に続き、日本航空などが出資する、成田空港ハブの格安航空会社(LCC)、ジェットスター・ジャパンが7月3日、成田-新千歳など国内線の運航を開始し、首都圏からもLCCを使った国内旅行が楽しめるようになった。」という類の記事が先日、日本のメディアで踊っていました。
8月に運行開始予定の全日本空輸系のエアアジア・ジャパン(成田空港ハブ)が就航すれば、日系3社が出そろうことになり、なんでも、今年は「日本におけるLCC元年」ということらしいです。
尤も、国際線では既に外国のLCC十社程が日本発着の定期便やチャーター便を運航していましたので、遅ればせながら漸くあの「異常にバカ高」い国内線運賃が価格競争時代に突入したということでしょうか。
利用者側からするとCarrier選択にあたりサービス対価選択肢が増えていい事ではあるのですが、しかしそれにしても「遅すぎる!」というのが率直な感想です。
欧米は当然ながら、ここ東南アジアでもLCCサービスはもはや「普通の存在」で日常の足(翼?)となっている(注)のに対し、日本だけが相変わらずの鎖国状態で国内Carrier保護の「異常にバカ高」い価格体系を官民既得権益者が今日まで堅持してきただけの話です。
因みに、日本航空(JAL)というと1兆円近い債務超過に陥り、2010年1月に経営破綻した企業ですが、5200億円の債権放棄と、7000億円近い公的資金による救済を受け、経営再建に取り組んだ結果、5月14日に発表された2012年3月期の連結決算は営業損益が2049億円の黒字となり前年同期の1884億円を上回って2年連続で過去最高益を更新しています。
リストラ効果の結果の業績とはいえ、まあどう考えても「とってもおいしい料金体系」があったからこそ、とも言えるのではないでしょうか。
又、JALは純損益も1866億円の黒字で過去最高だったのですが、同社はこれだけの利益を出しながら、会社更生法適用会社として繰越欠損金の損金算入により、2010年以降9年間、法人税が免除されています。(9年間で4000億円ないし6000億円の法人税が免除される)
自力で再建した企業が繰越欠損金の損金算入により法人税を免除されるのはルール通りですが、7000億円の公的資金の投入を受けて再建したJALにもこの制度が適用され、法人税が免除されるのはいかがなものでしょうか。公的資金を受けた企業(JAL)が一気に有利子負債を減らしおまけに法人税免除も受け、市場の中で自力で競争している企業(ANA)と比べて有利になったようにも見受けられます。
そういった中、先般7月3日に全日本空輸は、公募増資で最大2110.5億円を調達すると発表しました。
調達した資金は、米ボーイングの中型旅客機「787」など最新鋭旅客機の購入に充てるほか、アジアの航空会社への出資なども想定しているとのことです。 (全日空が公募増資を行うのは2009年7月以来3年ぶり。7月中に需要動向によって実施する第三者割当増資を含めて最大で計10億株を新たに発行する予定)
一方、日本航空は9月に東京証券取引所へ株式の再上場を予定しており、ここにきて漸く日本の航空業界も真当な?競争時代に入ってきているのでしょうか?
(注)
シンガポール・チャンギ国際空港には現在、ターミナル1~3とLCC専用の「バジェットターミナル」の計4つのターミナルがあるのですが、2006年3月に開設されて未だ6年しか経過していないこのバジェットターミナルが9月25日に閉鎖されます。
理由は利用者が少ないからではなく、逆に急速に増加し続けている為に、よりキャパシティーの大きい新ターミナルを建設することになったからです。
新ターミナルは「ターミナル4」となり、バジェットターミナルの利用者が2011年現在で460万人であったのに対し、最大で年間1600万人の利用を受け入れられるようになります。
現在のチャンギ空港のキャパシティは、バジェットターミナルを含めて年間7000万人以上で、2011年の総利用者数4650万人と比較するとまだ余裕があるものの、過去10年間の利用者数の年平均成長率は5.2%増で、特に2010年は+12.9%、2011年は+10.7%と急速に伸びています。ターミナル4は2013年に建設を開始し、2017年に完成予定。現在よりも効率的な旅客対応や素早い航空機のターンアラウンドを可能とするほか、飲食店や小売店など既存のバジェットターミナルには少ない施設も充実する計画となっています。
■夏の海外旅行、過去最高に
6月30日の日経新聞にこのような見出しの記事がありました。記事によりますと、円高や、震災で自粛した昨年の反動もあり7月~8月の日本人出国者数は昨年同期を1割上回り過去最高の350万人超の見込みとの事です。
牽引役はアジアでJTBは前年比5割弱増え、阪急交通社はシンガポールが2.1倍、香港が4割増えているそうです。
1~5月の出国者数も過去最高の2000年を超える勢いで推移しており、年間でも過去最高の1900万人に達する見込みとしています。
国際線の就航便数が週2020便(11年夏時点)と00年の1.7倍に増えたことに加えLCCの就航も旅行者の背中を押すと記事は結んでいます。
ということで、さっそく法務省の出入国管理統計を調べてみました。http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_nyukan.html
2000年以降の日本人出国者数を示したのが以下のグラフです。
確かに、2000年の1782万人がピークであり、01年の米同時テロ、03年のイラク戦争・SARS流行、09年の新型インフルエンザ等もあり、年によって浮き沈みがあります。意外なことは昨年は震災の「自粛」で日本人出国者数は減少したかと思っていたのですが、実際は逆に若干増加(10年の1664万人から11年は1699万人)していることです。
■「出て行く」vs「来て頂く」
さて、上記の記事は「出て行く」数字の記事ですが「来て頂いている」数字の2000年以降の推移(外国人入国者数、及び日本人出国者数から外国人入国者数を差し引いた数字)を示したのが以下のグラフです。
日本政府はもう何十年も昔から外国人入国者数年間10百万人を目標に掲げているようですが、未だかつて達成できておらず、又それほど話題にもなっていない?ようです。
日本における「国際化」議論でいつも違和感を覚えるのが、この相変わらずの「出て行く」優先的な雰囲気でしょうか。
本来「国際化」という場合は、むしろ「来て頂く」事に重きが置かれて然るべきと思うのですが、何故か日本では話題にならないのが不思議です。
2000年の527万人からピークの2010年には944万人に増えたものの、昨年は714万人と大幅に落ち込み、出入国者数ギャップは10百万人に拡大しています。
原発事故が日本の観光資源価値に決定的なダメージを与え、余りにも大きなハンディを背負ってしまったのは事実なのですが、こういった状況だからこそ尚更、今「抜本的な」インバウンド策が、求められているのではないでしょうか。
因みに、当地シンガポールですが、昨年の外国人入国者数は1320万人と過去最高を記録しています。
2000年の800万人から03年のSARS流行時には600万人にまで落ち込んだものの、その後は一貫して増加し昨年はボトム対比2倍以上になったわけです。
(尚、昨年のインバウンド外国人上位5カ国はインドネシア259万人(20%)、中国158万人(12%)、マレーシア114万人(9%)、豪州96万人(7%)、インド87万人(6%)となっています。)
国土面積で日本の0.2%以下、居住人口でも日本の4%未満のこの小国が、日本の倍近い集客をしているという事実には愕然とさせられます。

