今日の水産海洋概論は、海洋資源の持続的安定的再生産がテーマ。担当は、秀才・北門俊英教授。
数理統計学を用いて、「どうすれば未来に向かって、魚を減らさずに最大限漁獲量を確保し続けられるか」の研究だ。今や輸入への依存度を極めた観の日本だが、海洋立国のプライドにかけても、自前の食糧資源確保は、安全保障上の大切な問題である。
いかにも海洋大らしい、時宜を得た本流ド真ん中の研究である。
海洋大に入った僕の自負心がくすぐられてくる。
出典)北門教授・授業Powerpointより抜粋

講義の質は、レベルが高い。
さすがに、大学の海洋学だけあって、その緻密な数理分析には舌を巻く。
感情論で海洋資源の枯渇を訴えるのでなく、厳密な数学の知識を用い、多様な公式データを縦横無尽に駆使して、海洋資源を最大限に利用しつつ枯渇を避ける最適解が、見事にキレイに解き明かされるのだ。

出典)北門教授・授業Powerpointより抜粋

👆️のシェーファー型余剰生産モデルが、講義の白眉。単純な差分方程式に見えて、なかなかに味わい深く、beautifulな数式ではないか。
最も単純な数式ほど美しい、とはアインシュタインの残した言葉。

僕は、浅学でしかない。この研究も、今日この講義で初めて存在を知ることとなる。
誤解を恐れずに今日の講義を最も簡単かつイージーにまとめるならば、

地球の海に生息する食用魚類の総量(総資源量)は、漁獲量と操業頻度(努力量)の積により、統計学的に有効な近似が可能
であり、
魚が群れとしての生息上、息苦しくないよう適切に間引き(個体量管理)しながら、持続的に最も効率的に最大の漁獲量を確保させるかについて、シェーファー型余剰生産モデルが最適解に我々を導いてくれる」
と来て、
「KOBEプロットなる箱型グラフを用いて、安定状態から危険ゾーンの幅をビジュアルで示せる。それにより、現状の課題が浮き彫りにされる。」
て、ことなんだな。
わかったような、わかってないような……😢

出典)北門教授・授業Powerpointより抜粋

海洋大に入って、生物学1もいきなりタフな内容の講義だったが、今日の北門教授の講義もなかなか数理統計学のハードさを思い知らされた厳しいものだった。

北門教授は、口調は優しく、丁寧な説明を明朗なスマイルで、学生に語りかける。いわゆるイケメンってタイプ。学生人気が高いのもわかる。
講義の締めくくりに、北門教授は、こう学生に諭した。

「諸君、8割理解できた、と自分で思うのは、傲慢不遜な認識だ。
10割できて本当に理解したと言える。
白紙に、何も見ないで今日の講義内容を全部書いて示せるようになってこそが、本当の理解だ。」

「大学の行き帰りの電車の中で居眠りしてないで、チャンと勉強しなさい。僕は院生になり、コトの重大性を思うようになり、そうしてたよ。
ましてキミら、僕の講義に出て居眠りなんかしてたら、どれほどの経済損失なのか、1度計算してご覧?
授業料を講義数で割ると、1講座1000円だ。
毎回これだけ払って来てるんだろ?
無駄にするなよ、もったいないから……」


👆️ 出典)北門教授・授業Powerpointより抜粋

講義が済んだらドンドン自分のところに来て、自分(北門)を質問攻めに遭わせろ。
自分を、キミらの学問のために使い倒せ………。

こんなことを言うんだ。
実にあっ晴れな教育者魂ではないか。
僕は、北門教授を畏敬の目で見つめた。

久しぶりに、ピリリとスパイスの効いた、とても中身の濃い105分の講義だった。