さつばつとした人の世です。
悲しい事件が果てなく続きます。
今に限ったことではありません。
聖書の時代から、なんにも変わってないんです。
賢い先人たちが、智慧を尽くして正しい道を説いてきました。
でも、どうでしょう。
僕らの学んだ世界史は、人類の愚かさを証明する未来への伝言でしかない。
絶望に屈服させられそうになります。

聖書の言葉に、今夜も耳を傾けたい。
静かに………


……しかし、私はあなた方に言う。

敵を愛し、迫害する者のために祈れ。 

中略)

あなた方が自分を愛する者を愛したからとて、何の報いがあろうか………

 兄弟だけに挨拶をしたからとて、

何のすぐれた事をしているだろうか…………




作家の三浦綾子さんが【氷点】執筆のモチーフにしたのが、マタイ福音書のこの言葉と言われています。
妻の不倫の最中に、実娘を殺害された医師が、犯人の一人娘を養女として育てる話でした。
妻には養女の素性を伝えず、ある意味、妻に対する復讐での縁組みでした。
最も憎むべき相手の肉親を、最も愛情を注ぐべき我が子として自分の家族に迎え入れる。
妻との消えることのない内面的な確執は、養女・陽子の健全な発育と対照をなしていきます。
キリスト者であり医師という【聖書の実践者】としての自分と、再愛娘を殺害されて骨髄にまで滲み込む恨みを抱く【生身の人間】として、彼は身を引き裂かれます。
物語は、この先更にドラマチックに展開します。
現代版のキリシタンの踏み絵を想起させるような重い小説でしたね。



陽の出の宙に身を浸すこともなく、
母なる海の深さに想いを馳せず、
高き峰を這う雲の荘厳も知らぬままに
君は前だけを見詰める。

季節の移ろいにも気づかず、
路傍にツバを吐き捨てて、
前を立つ老いた者には席を譲らず、
ひたすら君は前を見詰める。

赤児を観ても微笑みかけず、
まごつくレジのバイトに噛み付き、
激しい怒りで世界を時代を呪い、
頭の隅でマイホームを想う。

灰色のいくさ場の中で心を閉ざし、
支配と屈辱と欺瞞の渦に巻かれ、
一遍の詩に涙するあの日の君は、
もういない。

世界のすべてを敵にして、
悔恨と慚愧と共に終わる今日1日を
獣のような眠りの中で、
君はいったいどんな夢を見る……………

 

ここまでお付き合い頂いたアナタ様。
最後は、陰鬱な詩でごめんなさい。
暖かくして、ゆっくり、おやすみください。

明日も、アナタに神様からの祝福が、
    たくさんありますように。 🌈🌈🌈
そして、1日も早く世界の人が皆、
       和解できますことを…………