読売朝刊連載の「時代の証言者」、大好きで昔からずっと読んでます。
年明け1月半ば開始の、昭和史研究者・保阪正康氏のシリーズが、終了間近となリました。
おそらく保坂氏は満を持して、筆を執られたのだと思います。昨日の第29回から「カミソリ」と謳われた後藤田正晴氏の評伝執筆エピソードがとても熱い息吹で語られています。


後藤田正晴という人は、昭和57年前後から時の中曽根内閣を官房長官、副総理として支えた官僚出身の政治家です。
この時期の日本の政治は、臨調とか国鉄民営化、電電公社民営化へ向けての動きが始まり、とても大きく揺れ動いていました。
僕は都内の私立に通う大学生でした。

僕は、一時期官僚組織の最下層にいた人間なので、後藤田氏を思う時、同じ「役人」とは見なせません。役人は、階級序列及び採用年度、採用時の成績によるキャリアコースの峻別が徹底しており、その意味からすると、僕と後藤田氏との距離は天地の隔たりがあります。
後藤田氏は東大出身で、戦前戦後を通じて官僚組織の中で超エリートコースを歩んだ人です。
キャリア集団のトップを走る人たちは、正直、とっても冷徹です。良くも、そして厳しくも。南極の環境よりもクールかも知れない。
でも、なぜか、後藤田正晴というヒトの人間的な厚みと懐の深さは、群を抜いているな、と昔から感じていました。
切れ者との報道内容に反して、記者会見上で見せる明瞭な口調とあの何とも言えない困ったげな笑みです。徳川政権なら老中、三國志なら諸葛亮孔明の立場にして、あの破顔一笑。
阿弥陀様のような神々しさを感じずにはおれなかったものです。
連合赤軍あさま山荘事件で、警察組織のトップに立って指揮した人物で、確か映画(「突入せよ」)では藤田まこと氏が後藤田さん役をいい味で演じてましたね。
カミソリ、と評されていても、時々魅せる柔和な笑顔には、思わず引き込まれます。
笑顔のチャーミングな人って、男女によらず、不思議なカリスマがありますね。
そう思いませんか?
僕は、そんな人に弱い。
物事を縁下から支える実力者って、きっとみんなを笑顔で包み込んで、楽しく前向きに仕事をさせてくれるムードメーカーなんじゃないかな…………

僕は、保阪正康氏がラジオやテレビに出演して、昭和史を語る時には姿勢を正して聴くようにしています。同じことは、先に亡くなられた半藤一利氏がマスコミに出られた時も同じでした。
勝手な思い込みでしょうが、「この人の言ってることは間違っていない」と、ピーンッて感じるんです。
いろんな評論家や作家がいます。正確さにおいては、両氏を越える情報量のデータ分析家がたくさんいます。
でも、僕は、保坂さんと半藤さんが好きです。
長年の地道な作家活動で培われた信用がそうさせるのでしょうが、またそれとは一味違う「何か」を両氏に感じずにはおれません。
後藤田正晴氏に感じた直感的なものと同じ心理的バイブレーションでしょうか。
スマイル😁の素敵な、縁の下の力持ち。
憧れます。
その意味じゃ、僕もかなりスピリチュアルに傾斜してるよな、と自省してしまいます。
半藤さんは既に冥界に旅立たれました。
保坂さんには、まだまだウ~ンと頑張って作家活動を続けて欲しい、そう願っております。

左側が半藤一利氏、右側が保阪正康氏です。
実に、いいスマイルしてらっしゃいます。

★ネットオープン写真及び読売朝刊記事の一部を転載させて頂きました。