サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-AAAマーク サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-パンフ

 セットリストはsas-fan.netで見てもらうとして、ちょっと違った切り口で。年号を「昭和」で表記したということは、「古き良き日の大晦日」をひとりで再現しようという趣旨なのだろう(もちろん「平成」に入ってからの歌もあったが)。歌手別に見ると、ザ・ピーナッツやクレイジー・キャッツなどは複数曲歌っているが、大体1歌手1曲で様々な歌手の歌を歌っている。
 そこで暇だったので、歌手別ではなく、「作詞・作曲家別」で選曲を捉えてみた。やっぱりというか偏った傾向が見られる。まずは「作詞者」登場曲数ベスト5。

阿久悠(7曲)
岩谷時子(6曲)
橋本淳
浜口庫之助
青島幸男(以上、3曲)

阿久悠氏は「やっぱり」の一言だろう。このリストから読み取れるキーワードは、「GS」「加山雄三」「クレイジー・キャッツ」といったところか。続いて「作曲者」登場曲数ベスト5。

筒美京平(4曲)
浜口庫之助
萩原哲晶
都倉俊一
すぎやまこういち(以上、3曲)

こちらでも「クレイジー・キャッツ」や、「フォーク」あたりが象徴的に思える。

 ところで両方に最多登場している組み合わせ「阿久悠作詞・筒美京平作曲」というベストと思われる組み合わせはたった1曲だけ選曲されている。それが尾崎紀世彦の『また逢う日まで』である。ハマクラ先生は作詞・作曲の両方に登場するわけだが、「キャッチーな歌謡曲」と「聴かせる(泣かせる)歌謡曲」。ソロ活動の指標はこんなところに表れてる気がする。まあ、ずっと桑田佳祐の音楽を聴き続けている人にとっては「何をいまさら」なのだが、これから桑田佳祐の音楽的な傾向をそっちの方向により偏っていくような気がする。唯一自作曲で選曲された『現代東京奇譚』は後者の「聴かせる歌謡曲」であり、この曲がカップリングで収録された(一応)最新のソロシングルCDの表題曲『ダーリン』は、『また逢う日まで』の流れを踏襲(「ふしゅう」ではない・笑)した「キャッチーな楽曲」である。

 他人の曲をカバーすることにおいて、桑田佳祐に比肩し得る歌手は日本に他にはいないだろう。しかもコピーではなく「自分の歌」にしてしまう。歌手として人を楽しませるという点だけでは、明らかに美空ひばりを超えたと言っても決して過言ではないと思う。そんな感想を持った今年のAAAだった。

サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-1 サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-2 サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-3 サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-4 サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-内田山 サザンオールスターズというバンド名は風呂の中で考えられた-魅せられて

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サザンオールスターズ
「真夏の大感謝祭」
30周年記念LIVE
supported by WOWOW

2008年 8月16日(土)/17日(日)/23日(土)/24日(日)
会場:日産スタジアム 開場:15:30 開演:18:00


 行ったのは8月17日(日)だった。幸運にもアリーナのGブロック(後ろの方)の席だったが、この日も雨は降ったり、止んだり、ラジバンダリー(笑)、な感じだった。「雨バンド」の本領発揮である。今まで野外ライブの時は、なんだかんだ雨には当たらなかったのだが、最後の最後で大当たりとは。カッパを着る人が多かったが、もったいない話である。雨に濡れる時の皮膚の感覚や風の冷たさ、空気の湿り具合など、その場の「感触」すべてを体感することが野外ライブの醍醐味なのに。雨よけはタオルだけでカッパを着ないわけだから、途中シャツを脱いで絞ったり、ラジバンダリー(しつこい!)だった。そんな状況でも寒く感じることがなかったのは、なんだかんだ言っても身体が「熱く」なっていたのだろう。


 「思い出はいつの日も・・・雨」


この日だけはハマってました。


 小林克也のMCとマーチング・バンドの演奏の後、メンバーが登場。桑田が今まで見たことがない GUILD のアコースティック・ギターを抱えてライブ開始である


M1 YOU (38位)
M2 ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY) (20位)
M3 LOVE AFFAIR ~秘密のデート~ (4位)


 比較的ライブでは定番と言える人気の高い3曲で始まった。そういえば『ミス・ブランニュー・デイ』を初めて聴いた時は、ビックリしたなあ、などと懐古的な気分になっただけで、桑田も言っていた「いつものサザン」であることに変わりない。


 MCをはさみ、「青山通りからkamakuraまで」と題されたメドレーへ。青山通りは青山学院大学が面している通りのことで、鎌倉は地名ではなくアルバム『kamakura』のことである。アルバム『熱い胸さわぎ』に収録されている曲でデビューしてから作曲したのは『恋はお熱く』のみであり、それ以外は学生時代を含めたアマチュア時代に作られている。その中でも『茅ヶ崎に背を向けて』は、公式に発表されている桑田の楽曲では最も古く作曲されたものである、などと薀蓄のひとつでもタレてみたくなった。『kamakura』は最初に活動休止をした直前に発売されたアルバムである。私は以前にもこのブログで「ここまでで一区切り」と書いたが、桑田自身もその意識が高いことが窺えるメドレー構成であると言える。


(アルバム『熱い胸さわぎ』より)
M4 女呼んでブギ (15位)
M5 いとしのフィート (198位)

(アルバム『10ナンバーズ・からっと』より)
M6 お願いD.J. (80位)
M7 奥歯を食いしばれ (140位)
M8 ラチエン通りのシスター (58位)

(アルバム『タイニイ・バブルス』より)
M9 TO YOU (123位)
M10 C調言葉に御用心 (56位)
M11 働けロック・バンド (Workin' for T.V.) (71位)
M12 松田の子守唄 (72位)

(アルバム『ステレオ太陽族』より)
M13 Hello My Love (64位)
M14 朝方ムーンライト (76位)

(アルバム『Nude Man』より)
M15 思い出のスター・ダスト (109位)
M16 夏をあきらめて (79位)
M17 Oh! クラウディア (9位)

(シングル)
M18 東京シャッフル (94位)

(アルバム『綺麗』より)
M19 そんなヒロシに騙されて (125位)

(アルバム『人気者で行こう』より)
M20 あっという間の夢のTONIGHT (149位)
M21 メリケン情緒は涙のカラー (84位)

(アルバム『kamakura』より)
M22 顔 (127位)
M23 Bye Bye My Love (U are the one) (23位)
M24 メロディ (Melody) (24位)


以上、サザン初期のナンバーをリリース順に並べたものであることが分かる。『いとしのフィート』『働けロック・バンド』『Hello My Love』『メリケン情緒』あたりは久しぶりにライブで聴いたな、という印象。自分にとってはここまでで充分「おなかいっぱい」である。


 MCをはさみ、比較的新しい楽曲を演奏。

M25 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~ (30位)
M26 シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA (97位)
M27 爆笑アイランド (137位)
M28 ごめんよ僕が馬鹿だった (67位)
M29 ロックンロール・スーパーマン ~Rock'n Roll Superman~  (31位)


『愛の言霊』の中途半端な終わり方、『シュラバ★ラ★バンバ』の声の出てなさがとても気になった。「シュラバ」から『おしゃれフリーク』への流れは個人的にはどうでもいい。『爆笑アイランド』のラップ(?)部分の替え歌は「らしい」と言えば「らしい」のだが、もっと「エグって」もいいのではないか。「キラスト」の2曲はサザンが継続するのであればライブの定番となり得る曲だから当然の選曲ではある。


 ここで「追加席」正面に設置されたサブステージへ移動。メインステージからの移動はスタンドとアリーナブロックの間の道をカートに乗って行くわけだが、ここでバカなファンがタオルなどを投げ込む失態をさらしたことにより、多くの人に「顔見せ」するため儀式であろうこの時間が大幅に短縮された(ように思えた)。茅ヶ崎ライブでも、小川直也が入場するシーンでスタンドとアリーナの間を通る演出があったが、初日にファンが押し寄せたおかげで、2日目には取り止めとなった経緯があった。一部モラルに欠けるファンの行為により、本来見せたい演出が予定通りに行かないというのは、ライブを作り上げたメンバーやスタッフに対する冒涜であることに何故気付かない? お祭り騒ぎで盛り上がるのは結構。しかし真っ当なファンを自認するのであれば、ある程度の節度ある行動を求めたい。


M30 涙のキッス (28位)
M31 チャコの海岸物語 (54位)
M32 夕陽に別れを告げて (10位)


 初日の16日には『夕陽に別れを告げて』の前に『せつない胸に風が吹いてた』もやったらしいが、雰囲気が似ている2曲を並べてもしょうがないと思う。1曲余計に聴けてラッキー、ぐらいのありがたみしかない。翌日から止めて正解だと思う。人気があることを承知で言うが、私は『涙のキッス』があまり好きではない。


 メインステージに戻る際に、人気投票のランキング発表。


M33 いとしのエリー (3位)
M34 真夏の果実 (1位)
M35 TSUNAMI (6位)


 人気のバラード3連発である。『エリー』はサザンのファンで居続けることを決断させた曲であり、『真夏の果実』はサザンの最高傑作だとさえ思っているし、『TSUNAMI』はサザン最大のヒット曲なのだから、30周年記念ライブではやらなければならないだろう。どれも楽曲として優れた点が多い曲ではあるが、個人的に「あまりライブで聴きたくない曲」なのだ。とても「CDで聴くよりライブが最高!」と言えないからだ。


M36 I AM YOUR SINGER


 今回のライブ、新曲をどの様に演奏するかがひとつの楽しみだったのだが、この曲にはガッカリである。演奏すらしやしない。腰痛で欠場のはずの毛ガニも入れて「リスザエル」をやることは、バンドとしてのサザンにとっては何の意味もない。


M37 希望の轍 (2位)


 名曲には違いないが、この曲もライブで聴きたくない曲のひとつである。なんでバカみたいにテンポを上げて演奏するのだろう。この曲の雰囲気というか情緒は、あんなアップテンポでは表現できないと思う。やるならせめてCDと同じテンポに落として「聴かせて」ほしい。


M38 OH!! SUMMER QUEEN ~夏の女王様~
M39 エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
(29位)
M40 HOTEL PACIFIC (12位)
M41 ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL) (5位)
M42 マンピーのG★SPOT (8位)


 このへんは勢いで押し切ってしまえばいいので、ノリだけ良ければOK。『エロティカ・セブン』は久しぶりだなぁ。「歌う日本シリーズ」の時のトラウマは解消できたのだろうか。まあ30周年で『TSUNAMI』の次に売れたシングルをやらないわけにはいかないか。それにしてもサザンで2番目に売れたシングルなのに人気投票では29位とは、いかに「CDバブル時代」に売れたのかが窺える。斎藤誠のギターで『Crossroads』のイントロから入る『ボディ・スペシャルII』は聴き応えはあったが、まあどうでもいいか。たまには「ヅラなし」の『マンピー』を観てみたい、って次はいつだか分からんか。還暦近くになった桑田がヅラかぶるだろうか・・・。


ENCORE
EN1 夕方 HOLD ON ME (27位)
EN2 みんなのうた (19位)
EN3 勝手にシンドバッド (17位)
EN4 Ya Ya (あの時代[とき]を忘れない) (7位)


 一時期アンコール1曲目の定番となっていた『夕方Hold On Me』からライブ盛り上げ定番曲を経て、バラードで締めるという流れも「いつものサザン」である。『夕方』の前のこのライブのために急遽作ったような歌があったが、思えば昔サザンはこんなことをよくツアーでやってたなぁ。最後の『 Ya Ya 』は多くのファンが予想した通りの選曲だろう。


 サザンのライブはアルバムを出してからやるツアーとイベント的な単発のライブとでは、かなり趣きが違うものなのだが、今回は30周年記念のイベントライブである。30年の総括という意味では、選曲のバランスや構成も上手く出来ているライブであり、成功したと言えるのはないか。
 終始「また帰ってくる」を連発していたのが、逆にわざとらしく思えて、会場で「この世の終わり」のような顔をして泣いていた人たちの不安をさらに煽ったような気がする。今、桑田佳祐は「無期限活動休止」を告げたことを猛烈に後悔しているかもしれない(サザンを再開させる気があるのなら、だが)。もし簡単に戻ってくるようなら、あの宣言はこのライブのチケットと新曲を売るために宣伝に過ぎなかったということになる。私はそっちの方がずっと悲しい。だからあえて戻ってほしいとは思わないのだ。サザン活動休止に落胆している人たちに言いたいことは、


 サザンオールスターズがいなくても
 すべての桑田佳祐の音楽がなくなるわけではない


今までのものは皆さんの心の中に、新しいものは桑田佳祐のソロで聴ける。


 「みんな、死ぬなよ!」


 最近よく桑田が口にする言葉だが、そっくりそのまま彼に返したい。あなたが死んだら元も子もないのだから。

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I AM YOUR SINGER


 この曲を表題曲にした理由は、誰でも分かることだが、30年もの間応援してくれたファンへの感謝の気持ちを表したかったからだ。そしてライブに合わせて「8月末」という歌詞まで登場する、いってみれば特別な「プレゼント」である。タイトルは、WINGS の アルバム『WILD LIFE』に収められている佳曲と全く同じである。

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WINGS の方の「YOU」はリンダ一人のことを指しているのだろうが、サザンの「YOU」はファンのみんな(あなたがた)のことなのは明白。

 はっきり言って「中途半端」というのが素直な感想。この曲は所謂「いい曲」である。それはギターで普通の8ビートの弾き語りしてみれば分かる。外連味のない素直なコード進行とメロディ(あくまでも桑田佳祐の楽曲においてだが)は、誰の心にもすっと入り込む魔法のようだとさえ思える。

 一方でアレンジは従来のサザンからすれば少し奇抜である(もともとサザンは奇抜な挑戦を度々やってきたバンドなのだが)。まあ、ここ数年サザンがやってきたことに比べれば、このチャレンジは賞賛に値する。

 しかし、「良い物」と「良い物」を合わせて必ずしも「より良い物」にはならない典型的な例のような気がする。素直な楽曲が少々奇をてらったアレンジにより良さが逆にオミットされてるようだ。そしてファンに媚びるような歌詞がそれに拍車をかけている。この歌詞、このメロディでもっと素直に等身大のアレンジを施せば、「ダサく」なるかもしれないが、そのほうが伝わるものも大きかったような気がする。チャレンジは別の機会でよかったのだ。そもそも女にふられて未練たらたらの情けない男の気持ちを代弁するような歌で世の男どもの共感を得ていたはずのサザンが多少ダサくなったところで誰も意に介さないと思う。そのサザンの本質のひとつを理解できないようなら、本当のファンとは言えない、とさえ言いたくなる。

 まあ、これは「今までのサザン」の話だ。復活するにしても間があくだろうから、「ダサい」サザンは忘れて「新しい奇抜なサザン」で帰ってきたとしよう。その時にもう一度この曲を聴いてみれば、この中途半端さが実は「過渡期」であったと理解することになるのではないか。そういう意味では未来のサザンを示す道標なのかもしれない。そしてその「新しいサザン」が帰ってくる日を多くのファンは心待ちにしている。


OH!! SUMMER QUEEN ~夏の女王様~


 桑田佳祐も公式ホームページのインタビューで言っていたが、本来ならこの曲がトップに置かれるべきだろう。資生堂のCMソングとして先に公開されていたのだから、プロモーション的にもその方がいいに決まってる。もちろん前述したように「ファンに向けて」という意味もあるだろうが、これは「今までとは違う」という意思表示のひとつなのだろう。

 楽曲自体は端的に表せば、「『BOHBO No.5』で始まり、『愛と欲望の日々』で終わるサザン得意の淫靡なサマーチューン」である。つまり最近のサザン以下でも以上でもない。ノリ的にはこちらの方がライブで盛り上がると思うのだが。個人的にはこっちの方が好き。


すけっちぶっく


 70年代のブラス・ロックを彷彿とさせるイントロで始まる原由子作詞・作曲のこの曲が、実はこのCDに収められている楽曲のなかで一番の名曲のような気がする。活動休止の発表の時にも書いたが、桑田はサザンという看板を守るために制約が多い中でのソングライティングになるが、原坊はその足枷を気にすることなく自由にやれる分、自然体で作曲ができるのだ。その違いが大きいことはサザンが活動休止する理由に直結する事実である。


 サザンという看板を気にすることなく音楽活動ができる今後、桑田佳祐はいったいどんなサプライズを私たちに提供してくれるのだろう。サザン活動休止の感傷に浸るより、これからの桑田佳祐を思い描くほうがずっと有意義な「サザンの待ち方」だと思う。