サザンオールスターズ
キラーストリート (通常盤)

 2003年に現在のサザンが活動を再開してから出されたシングルを聴いて、私は「次のアルバムは『Young Love』みたいなアルバムになるのではないか。」と考えた。好き嫌いは別にして、『さくら』よりポップで、一般受けしやすい作品になると。

 すでにシングルで発売されていた曲はすべて何らかの手を加えているとのことだが、既発表曲が12曲、新曲が18曲という構成である。実はこの並べ方が巧妙なのだ。

 桑田は「シャッフルしないで1曲目から順番に聴いてほしい」と発売前後に言っていたが、曲間の長さや順番を考えるのにも苦労したことを理解してほしいという気持ち以外にも「順番に聴く」意味があるのだ。


<DISC-1>

01) 新曲
02) 新曲
03) シングル
04) 新曲
05) 新曲
06) シングル
07) シングル
08) 新曲(原Vo.)
09) 新曲
10) シングル
11) 新曲
12) シングル
13) 新曲(キラーストリート)
14) シングル
15) 新曲

<DISC-2>

01) 新曲
02) 新曲
03) シングル
04) 新曲
05) シングル
06) 新曲
07) シングル
08) 新曲(原Vo.)
09) 新曲
10) シングル
11) 新曲
12) シングル
13) 新曲(キラーストリート(Reprise))
14) シングル
15) 新曲


 それぞれのディスクに既発曲6曲、新曲9曲と平等に配置し、順番も5・6曲目の入れ替わりを無視するとほとんど同じ。8曲目にいずれも原由子のボーカル曲が入り、アルバムタイトル曲(インスト)が13曲目で既発シングル曲へと繋がる。自分のラジオ番組で桑田は、1曲目を何にするか最後まで迷ったのは、「からっぽの~」と「ごめんよ~」だと言っていたが、その2曲がそれぞれのディスクのトップを飾っていることを考え合わせると、私に思い浮かぶことは一つだった。


 アルバム『キラーストリート』は2枚組ではなく

 1枚物のアルバムを2枚同時に発売した作品


ということだ。CDアルバム一枚の値段は、現在だいたい2,500円~3,000円ぐらいの間ではないか。新曲9曲、既発シングル6曲が収録されているオリジナルアルバムなんて今ではごく普通にあるだろう。ズルをしようと思えば、ある程度間隔を空けて(1~2年)1枚ずつ小出しにする方法だって選択肢としてあったわけだが、桑田はそうしなかった。テレビ出演などでたびたび繰り返した「量感」というコンセプトの根源は、実はこの一言に集約されていたのだ。


 「待たせてゴメン」


 「7年も待たせて今さら小出しなんて出来ないよ。限定でDVDも付けちゃうからこれで許してね。」ということなのではないか。


 このアルバムを『キラーストリート(Vol.1)』『キラーストリート(Vol.2)』という別々に発売されたアルバムとして一度聴きなおしてほしい。あなたは各々のアルバムに3,000円ずつ払ってアルバムを買うだろうか?

 私は、本作を「今のサザンで出せる最大限のクオリティを持った2枚」だと思う。これほどコスト・パフォーマンスに優れたアルバムは、今の日本のロック・バンドではサザンオールスターズ以外には作れないだろう。

ごめんよ僕が馬鹿だった

 歌詞は「浮気がバレて言い訳している男」を歌っているわけだが、韻をふむことにかなり拘ったことがライナーノーツにも書いてあります。「Love-desperation」という造語だって、No satisfaction や Good vibration と韻をふむためだし。他にも


 lonely - sorry

 Gory - Doki

 心乱れて - 髪をとかせて

 Angel - belle

 ラプソディー - メロディー - ジェラシー - ハーモニー


など。日本語、英語(belle はビートルズの「Michelle」にも出てくるフランス語だが)問わずってところが、まあ桑田がメジャーにした手法ではありますけど、私は桑田の「自己満足」だとは思いませんし、これきっとカラオケで歌うと気持ちいいだろうな、って思いますけどね。


八月の詩(セレナード)

 これは隠れた名曲ですよ。曲調はぜんぜん違うんですけど、『冷たい夏』みたいな味がある。音はといえば、フィル・スペクターっぽいんですけど、ライナーノーツの最後に「こういうのを聴いて山下達郎は何を思うだろうか」、って訊けばいいじゃん(笑)。あんた仲いいんだからさ、ってツッコミ入れたくなります。


DOLL

 2☆TOPシングルの陰に隠れたカップリングです。レビューはこちら


別離(わかれ)

 ビートルズが使った「アナログ的手法」で云々とライナーノーツに書かれてますが、楽曲そのものクオリティは高いと思います。某巨大掲示板では割と高評価を受けてるようです。私のファースト・インプレッションはこちら


愛と欲望の日々

 2004年11月24日に発売されたシングル。レビューはこちら


Mr. ブラック・ジャック ~裸の王様~

 これは1番のみならず明らかに某国の首相を批判した歌でしょう。「某国」って何処かって?


  「世界でただひとつの被爆国だっちゅうの!!」


 歌詞では


 税金(かね)が出てゆく 道路(みち)となる

 大金(かね)がもらえる 天下(あまくだ)る


 ってとこが上手いですね。「かね」の読みで違う漢字をあてて、「出てゆく」「もらえる」と対の言葉をならべ、最後にちゃんと韻もふんでる。

 まあ投票に行かない人ですから、極めて感覚的に深く掘り下げることもなく、どうとでも言い訳できる「批判」ですけどね。一番言いたいことはライナーノーツにもあるように、「拉致問題」と「被爆国(=戦争反対?)」ってことでしょう。


君こそスターだ

 2004年7月21日発売のシングル。アルバムバージョンで目立つのは出だしのカウントとギターのノイズが入っているところですか。レビューはこちら


リボンの騎士

 2曲目の原由子ボーカル作品。こちらは女性らしさが爆発でエロい。原坊にこういうエロい歌うたわせるな!なんていう奴がいるけど、大人なんだからいいじゃん。子供は黙ってなさい(笑)。ファースト・インプレッションはこちら


愛と死の輪舞(ロンド)

 なんか曲調といい、桑田佳祐の歌い方といい、『我らパープー仲間』を思い出しちゃったよ。色んな意味で名曲ですよ、これは。ドラムの松田弘の息子が参加してるのね。『チャコの海岸物語』のB面のタイトルになってる彼ですよ。


恋人は南風

 『涙の海で抱かれたい』のカップリング


恋するレスポール

 レスポール愛好家の私としてはウェルカムなナンバー。桑田佳祐のレスポールというと、グリーンのセミホロウのカスタムと、『涙の海で抱かれたい』のPVで使われたやつを思い浮かべるけど、雑誌『ぴあ』のインタビュー写真で持っているのは、後者のやつと同じものではないかと思われ・・・(確信はない)。

 ファースト・インプレッションはこちら


雨上がりにもう一度キスをして

 『涙の海で抱かれたい』のカップリング との明らかな違いは、出だしのドラムでしょうか。


The Track for the Japanese Typical Foods called "Karaage" & "Soba" ~キラーストリート(Reprise)

 これで丸屋さん大儲けですね(笑)。「ホープ軒」の方はさほど影響はないでしょうけど。この歌でドラムの松田弘が肉を食えない(ベジタリアン?)ことを初めて知りました。これも「キラーストリート(Reprise)」から次の『FRIENDS』の流れがとてもよい。


FRIENDS

 『彩 ~Aja~』のカップリング 。シングルとはミックスを変えてあるとのこと。最後のコーラスは、The 5th Dimension の 『Aquarius』(『愛と欲望の日々』の歌詞にも登場)がモチーフですか。最後のドラムが Led Zeppelin の John Bonham ってぇのが俺には分からんぞ!(名ドラマーにかわりはないが)


ひき潮 ~Ebb Tide~

 矢沢永吉に同じタイトルの歌があったような・・・。どうしても8分の6拍子の曲を入れたかったらしいが、「今のサザンでやると『栞のテーマ』は超えられそうにないから」あたりにサザンの現状が出てる気がします。

 これも名曲なんですけど、 Disc-1 の『限りなき永遠の愛』同様、桑田も年取ったのね、って感じる作品ですね。

 そしてこのあとは「総括編 」に続く。

サザンオールスターズ
キラーストリート (初回限定盤DVD付)

 リミテッド・パッケージに収められている「桑田佳祐セルフライナーノーツ」を中心に話を進めたい。

からっぽのブルース

 仮タイトルが「CSN&Y」だったとあるが、曲調は Crosby Stills Nash & Young を意識したということになるのか。歌詞は五木寛之の『大河の一滴』 からインスパイアされた部分があるとのこと。

 聴いた感想は、「桑田佳祐も年取ったのね」。なんか早めに桑田佳祐の遺言を聞かされているような気分になった。一発目からこういう曲を聴かすことによって、このアルバムが単純なポップアルバムでないことを宣言してるようにも思える。

セイシェル ~海の聖者~

 ハワイで作詞したとのこと。ファースト・インプレッションはこちら にあります。

彩 ~Aja~

 2004年4月14日に発売された先行シングル。シングル発売時のレビューはこちら 。ライナーノーツには「亡き父に捧げる」歌だと書いてあります。そうやって聴いてみると、また違った味がある曲です。

JUMP

 初めて聴いた時に、Sly & The Family Stone あたりのミディアムテンポのファンクを連想したのですが、ライナーノーツにもそのようなことが書いてあります。なんか「ひきこもり」の人たちに宛てた歌のような印象があります(そんな狭義なメッセージではないですが)。

夢と魔法の国

 ライナーノーツには「Neil Young & Crazy Horse を目標に」と書いてありますが、マナーの悪いコンサートの観客に怒りをぶちまけてる、と言ったほうが分かりやすいかと思います。ちなみにサザンのバンド名の由来は、Neil Young の「Southern Man」から採ったという説もあるぐらいで、昔から桑田氏の憧れではあるんでしょう。

神の島遥か国

 2005年7月20日に発売された「BOHBO No.5」のカップリング(CDケースの背にはタイトルが併記されているが、あくまでもカップリングのはず)。詳しくはこちら (たいして詳しくはないが)。

涙の海で抱かれたい

 2003年7月23日発売の先行シングル。リミックス、リマスタリングされているとのこと。個人的にはシングルのバージョンより軽快な感じと言うか、ギター、ベース、ドラムなどのバンドサウンドの基本となるべきが楽器がボーカルとともに前に出て来ている気がする。プレビューはこちら


山はありし日のまま

 原由子がメインボーカルのナンバー。リミテッドパッケージに付いているDVDには、この曲を桑田佳祐が歌うシーンがあるが、それもまた味があった。この曲自体は男が歌っても、女が歌ってもはまる歌詞になっているが、原由子は昔からこういう骨っぽい歌も上手く歌う人だね。The Band なんかを意識したようなことがライナーノーツにも書いてあります。

 「歌詞は原坊が読んだ本の物語がイメージの基本となった」とあるが、なんの本だろう?


ロックンロール・スーパーマン ~Rock'n Roll Superman~

 仮タイトルの「電気男」は、T-REX の「電気の武者(ELECTRIC WARRIOR)」から来ているのでしょう。明らかに T-REX を意識したグラム・ロック調の楽曲である(ライナーノーツにも書いてあるが)。DVDの映像でこの曲が Disc 1 の M-1(つまり1曲目)と紙に書いて掲げてあるシーンがある。歌詞は中・高校生時代の桑田佳祐自身を歌っているとのことだが、その頃ちょうど流行ってたのが、T-REX なんかのグラム・ロック、というつながりのようです。


BOHBO No.5

 ブラス、ボーカル、ドラムのレベルを若干上げて、シングル より派手なアレンジになっている。


殺しの接吻(キッス) ~Kiss Me Good-Bye~

 Nina Simone をイメージしたとのこと。歌詞はサイコサスペンス風。ファースト・インプレッションはこちら


LONELY WOMAN

 シングル『愛と欲望の日々』のカップリング。このアルバム収録分は、「ティッ、ティッ、ティッ、ティッ・・・」というコーラスが2コーラス目から登場(シングル は3コーラス目から)。


キラーストリート

 アルバムのタイトルチューンとなるインストゥルメンタル・ナンバー。ライナーノーツにもあるように、イタリア映画のサントラっぽい仕上がり。私は基本的にサザンにおけるインストが好きではないのだが、次の「夢に消えたジュリア」への流れにはピッタリはまっている。


夢に消えたジュリア

 2004年7月21日にリリースされた『君こそスターだ』と「2☆TOP」を飾った曲。シングルのレビューはこちら


限りなき永遠(とわ)の愛

 Disc-1 の最後を飾るのは、John Lennon を意識したバラード。ライナーノーツでも遠回しに「誕生日」のこと言っているので、間違いない。桑田佳祐もある程度年をとったからこんな歌が出来るのでしょう。ファースト・インプレッションはこちら


 そして、Disc-2 へと続く。