2025年2月1日
(その一)からの続きです
このルート最大の難所
P3ルンゼを何とかクリアして稜線に立ち
ひとつ大きく深呼吸をすれば
これまで張詰めていた気持ちが静かに解けて
安堵感が少しばかり戻って来た
だが、ここはまだルート半ば
残されたルート上部を仰ぎ見れば
まだ岩場は続いていて
最上部に漸く山頂が見えてきたところだ
さあ、もうひと頑張り
幾分傾斜を落として硬く締まった雪の尾根を
上部を目指して歩き出す
尾根上には立体的なシュカブラ
何時もは風の強いところなのだろう
しかし今は吹き抜ける風も緩やか
こんな雪の造形も
穏やかな気持ちで眺められる
そしていよいよ最後の岩場が近づいてきた
先行者のトレースは
その岩場へと吸い込まれて行く
近付いてみれば
僅かな岩の出っ張りに残された
雪の乱れが見て取れる
足幅ひとつ分ほどの岩棚をトラバースする
僅かにハング気味だったが
ゴツゴツとした岩場故に
豊富なハンドホールドで上体を保持
更に階段状の岩場の直登
嫌らしい氷雪と岩のミックスだったが
先程のP3ルンゼほどの難しさは無い
更に東向きの斜面に移り
深雪のトレースを辿る
この辺りから少しずつ傾斜が緩みだして
下を見下ろす余裕も出てくる
目指す上部を仰ぎ見れば
頂きに立つ赤いウエアの登山者が
一瞬だけチラリと見えた
もうピッケルを衝くほどの斜面ではなく
そしてこの先に難しい岩場は無い
ここまで来ればビクトリーロード
沸々と湧き上がる達成感を感じながら
13:05
阿弥陀岳の山頂へと辿り着く
山頂には数名の登山者たち
恐らく東稜から登って来たのだろうが
この時期の東稜も難易度が高いはずだ
彼らもまた同様に
達成感に満たされているのだろう
いい表情をしている
では、何時もの展望写真
昼を回って予報通り
大気の透明度が落ちてきた
遠望は利かないけれど
ここはやはり素晴らしい展望台
写真は北方から順に時計回りで
もう少し登頂気分を楽しんでいたいが
だいぶ時間が押しているので
下山の途へと気持ちを切り替えて
御小屋尾根方面へと下り始める
先ずは犬帰りの岩場を乗り越える
クサリとハシゴが設置されている難所だが
雪が付いて無雪期よりも楽に越えられる
更にヤセ尾根道を辿って
13:20
西ノ肩までやって来る
ここは御小屋尾根の下降点
真っ直ぐに西へ下れば御小屋山
その下降路を数メートル下ったところが
中央稜への取付き点
特に道標は無いが
危うい岩場で南側にルートを外せば
中央稜の下降が始まる
先行するのは二人の登山者
今日、ここを下るのは我々三人だけのよう
勿論、トップはラッセルを伴うが
風の強い西側斜面故に積雪は浅く
トップは中々のスピードで下って行く
一頻り下ると下から二人組が登って来た
ここで上下のトレースが繋がり
すれ違い様に
「山頂はもう少しですよ」と声を掛ける
この先トレースを辿るだけとなった二人は
ちょっと嬉しそうだった
それもその筈、ここまでのラッセル登行は
さぞや大変だったに違いない
ここで見納めとなる展望を楽しむ
下る事に集中していて気付かなかったが
いつの間にか日差しは薄れて
上空には薄雲が広がってる
下って来た中央稜を仰ぎ見ても
もう青空はどこにもない
すぐさま天気が崩れる訳ではないけれど
日差しが無いと本当に寒々しく感じる
更に急斜面の下降路は続き
次第に樹林帯へと入って行く
樹種はダケカンバから針葉樹へ切り替わり
ヤセ尾根の小さな鞍部から南側に急下降
岩場下のトラバース部分へと出る
ここは深雪で不安定な斜面だが
樹林帯の中という事もあって
あまり怖さは無い
無事にトラバース部分を過ぎれば
後は尾根に従って
樹林帯の中を下って行く
腰ほどもあった深雪は
下るにつれて徐々に浅くなり
僅かに傾斜の緩んだ部分で一休み
まだだった遅いランチ休憩とする
上空の雲は然程の厚さも無いのだろう
差し込む薄日でも暖かさを感じる
更に樹林帯の下降は延々と続く
山林管理区の赤いペンキが
シラビソの幹に記されるようになれば
奥山から里へと近づいた証
それを追うように下って行けば
15:24
広河原沢の中央稜取付き点へと
下り立つ事が出来た
そこからは良く踏まれたトレースが
広河原沢に沿って続いている
恐らく沢奥の氷瀑へ向かう
アイスクライマーさんたちの道
すっかり歩き易くなった道を
順調に辿って行き
砂防堰堤下を右岸へと渡れば
15:51
そこは林道の終点だった
後はこの林道を辿るだけとなる
振り返れば
白い薄雲を背景に阿弥陀岳が見える
南稜はあの右側のギザギザ部分
すっかり安全地帯に入って眺めれば
感慨深さも一入だ
ここでアイゼンを外して
残りの林道を軽快に下って行く
程なくして往きに通過した南稜への分岐点
もうここまで来れば舟山十字路は直ぐ
16:36
無事に舟山十字路へと到着です
久しぶりに辿ってみた阿弥陀岳南稜と中央稜
ルート上の雪の状況は今回の方が良い感触で
CTは前回とほぼ同じでした
今回、ここに来るにあたって
ちょっとだけ自宅で自主トレーニング
やっぱり体力減退に抗うには
体を動かすのが良いようです
今回、その事を身をもって感じたのでした
さて、次はどこ行こう
****** 注意 ******
今回辿った阿弥陀岳南稜と中央稜は
一般ルートではありません
熟達者向きのバリエーションルートです
登山技術の未熟な方の入山は控えて下さい