白馬岳(その一) | 気ままにアウトドア

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2024年6月20日

 

 

予てより見たいと思ってた

白馬岳のツクモグサ

八ヶ岳のものは何度も見ているので

本州のもう一つの自生地のものも見てみたい

そんな想いがずっと心にあったのです

花期は6月~7月の僅かな期間

中々まとまった休みが取り難いのですが

急遽、仕事が休みとなったこの日

梅雨入り前という好条件の中

念願の白馬岳を訪れる事が出来ました

 

 

 

 

何時ものように前夜に現地入り

長野市から快適なオリンピック道路を行けば

登山口のある猿倉までは一本道

この夜は猿倉の登山者駐車場で車中泊

 

翌朝、身支度をして

5:20

駐車場を出発

僅かな距離で猿倉荘横の登山口

 

 

 

登山道へ入ると

早速、初夏の花ヤグルマソウのお出迎え

この時期はまだ台風などに痛めつけられる前

初々しい緑の中に白い花穂が映える

 

 

 

登山道は直ぐに林道へと吐き出されて

左手に白馬鑓温泉の道を分けると

ぽつぽつとタニウツギの花が

路傍を彩りだした

高木に絡みつき白い花を咲かせるのは

ツルアジサイ

同じく樹々に絡みつく

ヤマブドウも花芽を伸ばして

開花の時は間近だろう

植生豊かな森は

夏に向けて多様な賑わいを見せる

 

 

 

谷側の樹林が切れて視界が開けると

正面には小蓮華山が見えてくる

山頂付近の雲が気にはなるが

久々のアルプスの山懐の景色に

気持ちが昂ってくる

 

 

 

多くの場合、林道歩きは退屈なものだが

ここは初夏の花が色々咲き誇って

意外にも退屈させない

 

 

 

御殿場まで来ると林道歩きは終了

ここから本格的な登山道となる

早速キヌガサソウがお出迎え

この車状の葉っぱの中心に一つの大きな花

何とも見栄えがする花で

夏の北アルプスへ来たならば

是非見たい花の一つ

 

 

 

そして、低山ではお目にかかれない

オオバタケシマラン

一見、ナルコユリかと思うほどの

背丈があって

ここは肥沃な土壌である事が良く分かる

 

 

 

春の花の代表のニリンソウも確りと健在

 

 

 

雪渓跡地には日差しを好む

シラネアオイも咲き出して

 

 

 

標高1500mを超えると

いよいよその雪渓が姿を現す

 

 

 

融け出して小さくなった残雪の際には

エンレイソウやサンカヨウ

黄色くて太くプリプリの芽はオオイタドリだ

まるでウドかホワイトアスパラのようで

瑞々しく見るからに美味しそうに見える

実際に山菜として食べられてるし

名前通り痛み止めの薬草でもある

 

 

 

小沢の道は連続するように

雪渓の末端へと続き

残雪上の薄いトレースを辿れば

6:59

白馬尻小屋へと辿り着く

小屋はまだ殆どが雪に埋もれた状態で

小屋開けもされていない

ここで遅めの朝食タイムをとる

 

 

 

さて、ここからは雪渓歩き

アイゼンを装着して歩き出す

ここ白馬大雪渓は日本三大雪渓の一つ

長大な雪渓は真夏でも豊富な雪を蓄えて

麓に貴重な水を提供している

ですが、ここ数年温暖化の為か

雪渓の縮小スピードも早まって

お盆を過ぎる頃には雪渓はズタズタ

夏道登行を強いられる事も多くなった

雪渓の状況をみると

今年も例外ではなさそう

梅雨入り前のまだ雪渓が安定した時期に

ここを歩けるのは有難い事なのかも知れない

 

 

 

目印の赤いベンガラに沿って

雪渓を歩き出せば

上部から冷たい風が吹き下ろして来る

それもその筈

谷沿いに吹き下ろす風は

冷たい雪面を這うように渡って来るからだ

夏山仕様のウエアでは肌寒い感じだったが

頑張って歩いた甲斐もあり

筋肉の産生する熱量が勝って

直に程よい涼風と感じるようになった

 

 

 

雪渓の中程まで来ると

杓子岳前衛の岩峰が姿良く見えてくる

中々の迫力だな~と眺めていると

洗濯機大の落石が

音もなく転がって来た

幸いにも上部を向いていて

その様子に逸早く気付けたし

自分の左側20mほどの所を

通過して行ったので問題は無しだった

涼やかで歩き易いし絶景に囲まれて

のほほんとしていたけれど

雪渓歩きは油断ならないですね

 

 

 

9:19

恐らくここが葱平(ねぶかっぴら)

左手にはまだ雪渓が続いているが

ここで正面の夏道の出ている

小さな尾根へと進路を替える

振り返れば

大雪渓が何処までも落ち込んでいて

その長大さが良く分かる

 

 

 

アイゼンを外して

荒れた小尾根の道に乗れば

 

 

 

早速、高山植物たちが姿を見せる

ピカピカの黄色い花を咲かせるのは

ミヤマキンポウゲ

珍しい八重咲のものも見つける

 

 

 

他にもハクサンチドリやハクサンイチゲ

融雪とともに逸早く伸び出して

短い高山の夏を謳歌するように花開くのは

高山植物の特徴だ

 

 

 

その小尾根から再度大雪渓を見下ろす

長大な大雪渓、末端の白馬尻は

右の方に回り込み杓子尾根の向こう側

ここからはうかがい知る事ができない

 

 

 

そしてすぐ傍には杓子岳前衛の岩峰

こちらからの姿も中々の迫力だ

 

 

 

雪の重みで痛めつけられた道を

ジグを切りながら登って行くと

早くも高茎のオオサカモチが花を付けている

ここは余程雪融けが早かったのだろう

 

 

 

そんな夏道も長くは続かず

再び雪渓へと道は消える

この先は小雪渓の急斜面

再度アイゼンを装着して急斜面に取付いた

だが、斜度は思いの外急角度

手にするストックでは心許なくて

ピッケルを持たずに来た事が悔やまれる

ま、無いものは仕方ない

ストックのゴムキャップを外し

石突を出して短く持てば

ピッケルほどではないけれど

それなりのホールド感は得られる

 

 

 

小雪渓を中ほどまで慎重に登ると

トラバースするように

雪切りのされた部分が現れて

そこを辿ると

10:24

避難小屋へと辿り着く

辺りを見回すと

北西に大岩を背負って

雪が無いのは小屋周りだけ

避難小屋は如何に条件の良い場所に

建てられているかが良く分かる

 

 

 

小屋上部から雪渓は幾分傾斜を緩めて

滑落の危険は消え去った

何時しか杓子岳の頂きも姿を現して

天狗菱が天を衝く鋭さを見せる

 

 

 

そんな景色の中の雪渓を緩々と辿れば

前方に頂上宿舎が見えてくる

 

 

 

稜線はあの小屋の上

もうひと頑張りだ

高度が上がって幾分呼吸は苦しいが

ゆっくりと一歩一歩に体重を預けて

日差しに緩みだした雪渓を登って行く

 

 

 

(その二)へ続く