2024年6月8日
またまた花を求めて
今回は冷涼な亜高山帯に咲くオサバグサ
北信五岳の一つ黒姫山に
その姿を訪ねてみました
何時ものように前夜に現地入り
戸隠牧場に程近い大橋登山口で車中泊
翌朝、身支度をして
4:54
登山口を出発
歩き出しは笹に覆われた緩やかな登山道
ミズナラやシラカバの木立の中を
ゆったり歩調で登って行けば
程なくして種池の分岐点
そこを矢印に従って僅かに辿ると
5:09
種池の畔に辿り着く
冷んやりとした朝の空気の中で
水面いっぱいに水草を蔓延らせ
静かに佇んでいる
この池の水は古より
雨乞いの儀式に用いられたという
如何にも水の神様が宿りそうな
雰囲気のする神秘的な池だった
種池から登山道へ復帰して
更に緩々と道を辿って行けば
道すがらには
ズダヤクシュやサギゴケの花が
湿っとりと朝露に濡れて咲く
5:22
古池までやって来た
4年前に来た時は制水施設の工事の為に
水を抜かれていたが
今回は満々と水が湛えられている
制水施設には中部電力の文字
如何やらこの水は今は発電用水のようで
嘗ての池の様子ではないようだ
池の周回路を時計回りに行くと
小さな広場に苔むした祠がある
恐らく水の神様を祀っているのでしょう
それに池の名前も何か云われがありそう
古池の北側は草原と化した湿地帯
東西に真っ直ぐに延びる木道を行けば
レンゲツツジやノビネチドリの花が咲く
池の北端まで廻ると黒姫山への分岐点
直進すれば池の周回路となるが
残り半分の周回は下山時に辿るとして
ここを黒姫山方面へと進路をとる
道は相変わらず美しい広葉樹の森の中
ゆったりと高度を上げつつ
緩やかな道を行けば
程なくして沢音が聞こえだして
美しい小沢に辿り着く
地図を見るとこの小沢は
先程の湿地帯を経て古池へと流れ込んでいる
苔むした丸太橋の中程で立ち止まれば
瑞々しい苔や草が流れの際まで蔓延って
目に心地良い景色が飛び込んでくる
軽やかな水音は鼓膜を程よく刺激して
ひんやりと冷涼な空気が肌を掠めて行く
そんな光景の中に暫し佇めば
眠っていた五感が
活き活きと目覚め出してくる
そんな小沢にすっかり癒されて
丸太橋を渡れば
道は幾分傾斜を増して斜面を登りだし
林相はブナ木立へと移って行く
道すがらにはユキザサやツクバネソウが咲き
遠く木霊するように
カッコウの声が聞こえてくる
6:57
新道分岐へと辿り着き
ここで遅めの朝食タイムをとる
相変わらず爽やかなカッコウの声がして
漸く林床にも朝日が届き出した
その分岐点を峰ノ大池方面へ向かう
こちらの道は”あまとみトレイル“
林道状の幅広道がゆったりと続いている
小さな涸れ沢沿いには
今年お初のサンカヨウの花
この時期に見たい花の一つだ
7:15
竹細工の森監視テントを過ぎて
7:43
”大ダルミ“へとやって来た
タルミとは鞍部の意だと思っていたのですが
ここは湿原となっていて
残念ながら木道などの施設は無し
湿原の際から遠巻きに覗いてみると
湿原の中ほどには白い穂の群生が見える
多分、ワタスゲだろうと思うのだが
近付けないのが何とも歯痒い
登山道へ復帰して
道端にツバメオモトの花を見る
この花もこの時期に見たい花だ
大ダルミを過ぎると
道は緩やかに下りだし
8:06
西登山口へと辿り着く
ここを左に下れば笹ヶ峰
山頂へは直進だ
道はここから次第に傾斜を増して
8:35
今日一番の難所”天狗岩“までやって来た
折り重なる大岩を
慎重に乗り越え渡り通過すれば
その先は傾斜はあるものの
歩き易い登山道へと切り替わる
道端には春の花々が咲き
好きな花のサンカヨウには
何度もカメラを向けてしまう
道は更に高度を上げると
ユキザサも花から蕾状態へと逆戻り
そろそろ目的のオサバグサが
姿を現しても良い頃と
辺りを見回しながら登って行くと
想定通り
道端に白い花を咲かせ始めていました
まだ初々しい緑の葉と
白く小さな飴細工のような花
この何とも可愛らしい組み合わせに
心を惹かれて
今年もこうして会いにやって来たのでした
因みに、名前の由来は葉っぱの形から
オサ(筬)とは機織りに使う
櫛状の器具を言い
葉っぱをそれに見立てて名付けられたとか
目的のオサバグサの群生が
期待通りに咲いていて
気分は高揚気味
次から次へと現れるオサバグサに
カメラを向けながら撮り進めば
花は次第に蕾へと逆戻り
群生地はまだ続いているのだけれど
高度差による温度差は
思いの外成長差を生んでいたのでした
盛期にはもう少し時間がかかりそう
上部では花芽はおろか
葉っぱが漸く萌え出した株も沢山見られた
オサバグサの株が疎らになると
道は次第に傾斜を緩めて
緩やかに乗越を越える
地図を見るとこの先は火口原のよう
大岩の折り重なる道へと切り替わると
岩間には氷化した残雪が現れる
そこをツボ足のまま慎重に下って行く
岩間の道は直ぐに穏やかな針葉樹の森へ
コメツガだろうか?
太く逞しい幹を空高く伸ばして
下枝も頭上高くにある
黒木の森にありがちな暗さはここにはなく
見通しの良い不思議な空間に入り込む
ここは斧入らずの森か?
神域の聖なる森と云えばわかるだろうか?
何処かにコロボックルが潜んで
こちらを伺っているような雰囲気の中
所々に僅かに残る残雪を踏んで
緩々と不思議空間の道を辿って行く
(その二)へ続く