奥秩父 黒金山 国師ヶ岳 甲武信ヶ岳 縦走(その三) | 気ままにアウトドア

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4:00に起きる、昨夜は寒さの為あまり良く眠れなかったが、睡眠時間自体は充分に取れているので問題は無い。

ガスコンロを点け温かいものを口にすれば、体もテント内も温まって強張った体が解れて来る。

まだ薄暗い中テントの撤収を始める。

凍てついた地面に突き刺したペグがビクともしない。

こんな事になるとは!と、自分の経験不足に厭きれてしまう。

それにしてもここにペグを残置するのは常識外れなので、なんとかして抜き取らなければならない。小石で叩いたり踵で蹴飛ばしたりするが、ジュラルミン製のペグの上部だけが曲がるだけで一向に抜けそうにない。

予備用のペグを、突き刺したペグのアゴに引っかけテコの原理を利用して抜く事を思い付き、試してみると易とも簡単に抜く事が出来た。

しかし、8本中5本のペグを曲げてしまった。

ペグの回収に時間が掛かってしまった為、出発は6:30となってしまった。

雪の乗った凍てついた登山道を木賊山に向かって登りだす。

気温は-1.8℃、昨夜程ではないが風が吹いていて体感温度は低い。

右側が大きく崩れザレた部分に出る。

朝日を浴びた甲武信ヶ岳を振り返る、その左側に続く稜線は昨日歩いて来た国師ヶ岳からの稜線だ。

再び樹林の中の道を登ると木賊山山頂だった、時刻は6:53だ。


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                    木賊山山頂


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                   木賊山からの下り

山頂を東に下る、凍っていてスリップに気を付けながら朝日に向かって緩い下りを下りて行くと戸渡尾根の道を右に分ける。

ここから少し傾斜が強くなる。すぐに甲武信小屋からの道が合流し急坂を下るとザレて開けた展望地に出る。

これから向かう2141mピークが正面に見える、今日も富士山は伸びやかな裾野を伸ばした姿を見せている。

傍にいた登山者と山座同定をする。

頚城山塊から谷川連峰、上州武尊や日光連山、少し離れて筑波山。

直ぐ近くの尖った山は武甲山か?

先ほどまで吹いていた風は収まり、東向きの斜面で日の光を受け体はポカポカと温まって来た。

今日も天気は素晴らしい。


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                    これから向かう2141mピーク

一度鞍部まで下り2141mピークへの登りにかかる。

少し急だがまだ疲れは無いので坦々と登る事が出来る。

2141mピークの露岩からも展望が良い。

直ぐ近くにはギザギザした岩稜を並べた両神山が、山肌を紅葉に染め佇んでいる。

再び下りだす。雁坂峠まではこんなアップダウンの繰り返しが続く。

きれいなササ原に立ち枯れた木々が林立している。この辺りは八ヶ岳の縞枯山と同じように縞枯れ状態になっている。

8:11笹平避難小屋に着く。中はストーブがありきれいな状態だった。


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                   立ち枯れの中を下る


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                    笹平避難小屋

破風山の登りにかかる。急坂に息が上がる。

露岩帯にかかると展望が広がる。

今日も何度も富士山を眺めているが飽きる事が無い。

その場所場所で微妙に景色が変わり、様々な富士山の表情を魅せてくれる。


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                    破風山登りの露岩から望む富士山 手前は広瀬湖


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             破風山登りより黒金山(左のピーク)と国師ヶ岳(右のピーク)を望む

8:59西破風山山頂に到着、ここは樹林に囲まれていて展望が無い。


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                       西破風山山頂

ゴツゴツとした露岩帯を進む。

端正な姿の富士山に見とれながら歩いていると足元への注意が疎かになり危険だ、展望は立ち止まって楽しみたい。

9:48東破風山山頂に到着する。


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                    東破風山山頂

鞍部へ下り再度登りに掛かる。

一人の男性が岩場でグランドシートを乾かしていた。

声をかけると50m程先でクマに遭遇したそうだ。

すっかり気持ちが萎えてしまって、ここで気持ちを取り戻そうとしていると言う。

既に10人ほどそちらへ行っているので大丈夫だと思うとも言っていた。

いつものように手をパンパン鳴らしながら歩きだす、後続の山ガール二人は呼び子を吹きながら付いてくる。

15分程こんな事をしながら歩く。結局クマには遭遇する事も無くその場所を通過する。


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                  こんな気持ちの良い立ち枯れの道を行く


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                   雁坂嶺山頂

10:38雁坂嶺山頂に着く。

ここで小休止、行動食を補給する。

先に休んでいた4人家族に尋ねるが、やはりクマには遭遇しなかったようだ。

結局あの男性だけだったのかも知れない。

昨日のあのカップルがやって来た、自分の方が早くテント場を出発したのだが、きれいな富士山に見とれている時間が永かったのか、ここで追い付かれてしまった。

もう登りは無い、後は下るだけだ。

展望の良いササ原の道を下る。

右側には相変わらず富士山がある。

今日は随分富士山を見てきたけれど、もうこの辺りが見納めのようだ。

11:30雁坂峠に到着する。

ここは日本三大峠の一つ、前回の三伏峠とまだ行ってない針ノ木峠でこう呼ばれている。なので自分は二つ制覇と言う事だ、少し誇らしい気分になる。


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                    雁坂峠


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                     雁坂峠より望む富士山

ササ原の道をジグザグに下る。

日当たりの良い南向きの斜面なので、温かさを通り越し暑ささえ感じるが気温は10℃を下まわっている。


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                    ササ原のこんな道を下る。

樹林帯に入るが皆落葉していて日差しが降り注いでいる。

井戸ノ沢を渡る。

まだ葉を残しているカエデの紅葉が鮮やかだ。


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                      井戸ノ沢を渡る


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                    カエデの紅葉

ロープの張られた濡れた岩場を通過する。左岸に付けられた道は河原の中を下るようになるが、丸太の橋で右岸へと渡る。


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                    峠沢を右岸へ渡る


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                   急斜面の右岸に付けられた道

小沢を一本渡ると急斜面に付けられた道になる。

標高も大分下がって来たのか、紅葉もきれいだ。

滑滝状の小沢を渡る、チョット滑落には注意したい場所だ。


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                   紅葉もきれいな標高まで下りて来た


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                   滑滝状の小沢を渡る

色ずく紅葉を愛でながら歩き易い道を下って行く。

大きく特徴的なブナの大木が現れると沓切沢橋の林道に出る。

後は舗装された林道を下るだけだ。


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                    大きなブナの木

西に傾いた日差しを受け広瀬へと下って行く、気温は13℃もある。

カラマツの黄葉や色付きだしたミズナラがきれいだ。

ダケカンバが淡い色合いで魅了して来る。

ショーカットの道が右側に現れる、ここを下ると雁坂トンネルの上部に出る。

トンネル料金所の辺りから雁坂峠を仰ぎ見る事が出来る。

峠は遥かな高みにスカイラインとなっていた。


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                     ダケカンバの淡い色合い


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                雁坂トンネル料金所付近より仰ぎ見る雁坂峠

久渡沢の釣り堀を右へ行くと直ぐに国道に出る。

道の駅を通り過ぎ、西沢渓谷駐車場へ向かう。

沢山の紅葉を見る観光客が歩いている。

大きなザックを担いだ自分がいることが場違いのような感じにも思える。

14:45西沢渓谷の駐車場に着く。

今回は飽きるほど富士山を眺めたのだが、それでも飽きる事は一度も無かった。

やはり富士山は日本人の心の山なのだと実感する山旅だった。