あおいです。
学ランのみならず、ハーフパンツも筆箱も、誰かが持ち帰った可能性が高い、と学年主任の先生は仰いました。
その発言を聞いた時の私の心境は「たとえ嘘でも嬉しい、寄り添ってくれて嬉しい」というもので、不覚にも涙が出そうになりました。
もちろん、学年主任の先生は、割と本心で思っているようでした。
「中学二年生になると、思春期に入って身体は大きくなるし、反抗期に入って親との会話は減るし、まぁ色々とある時期なんです。
制服やジャージ類がサイズアウトしても、それを親に言い出せない子はやっぱりいて、たまにサイズがピッタリあう他人の服を持ち帰る不埒者が、いるんです。
学ランは、ちょっと分かりませんが、ハーフパンツは、そういうことがありえます。
筆箱は、失くしたとされる日の時間割(←息子と話すだけで、その日のことをすぐに思い出せていた)を考えても、息子くんの話を聞いていても、帰りの会までに紛失したと考えるのが自然でしょう。
誰かが持ち帰った可能性がゼロではありませんので、持ち帰ったという前提で調べます。
すぐには解決出来ないかもしれませんが、特にハーフパンツの件は体育の授業や行事毎に全職員でネームの確認をしていきます。
ご心配をおかけする期間が続きますが、対応は継続させますので…」
まともな、というか、私の想定する普通の対応をしていただくうち、心も落ち着いてきました。
私だってこじれていて、ハーフパンツも筆箱も、もうどうでもいい気分ではあるのです。
息子は今のところ理路整然と十全に話せるタイプではないし、突っ込んだ事情聴取となると「分からない」「自信がない」と逃げ口上になりがちです。
そんな私たちに寄り添って、とにかくまずは傾聴に徹してくれる、そして想定する反応を返してくれる学年主任の先生はありがたい存在だと思います。
ありがたいんですが、じゃあ、どうして、担任の先生は残念な反応を返してくるのでしょうか。
彼の指導も、学年主任の先生の役割ではないのでしょうか。
校長室を出ると、学年主任の先生が担任の先生を呼び止めました。
聞き耳をたてると「〇〇先生、今すぐジョニーの親に電話しなさい、今すぐに」と伝えていました。
何だ、学年主任の先生は、ちゃんと担任の先生に的確な指示が出来てるじゃないか…ぼんやりとそんなことを思いながら車に乗り込みました。
まさに学校の敷地を出る瞬間、携帯が鳴ります。
車を停めて電話に出ると、担任の先生からのものでした。
いや、あと15分ほど待ってもらって、帰宅してから電話はとりたかったな…と思いつつ、話を聞きます。
「学ラン、見つかりました。ジョニーくんの家にありました!」
「…あー」
「ちゃんとハンガーにかけてあって、部屋のカーテンのところに飾ってあったそうですよ!」
「飾ってたんですか…」
「買いなおす前に見つかって、ほんと良かったですね!!」
前向きです。
明るいです。
そうだけどそうじゃない感満載の発言です。
よくもまぁ「買いなおす前に~」などと言えるものです。
そういえば、今日は一対一になったときに「すみませんでした」の言葉がなかったなと思いつつ、そういうことに目くじらを立て始めた自分にも嫌気がさします。
「ほんと、良かったですね。ありがとうございます」
「明日、お返し出来ると思います!」
「よろしくお願いします」