あおいです。
参観日でのナンシーさんは、騒いで注意されては「ウケる」と言っては同意を求め、キャシーさんが「分かる」と言ってしばらく静かになる、という行動を繰り返していました。
ナンシーさんは声が大きく、本当に何でも大声で喋ります。
「シャーペン落とした!」「消しゴムかして!」「ノートいらないじゃん!」「教室暗くない???」などなど…
この日は、とある男性保護者が自分の娘の頭をはたき、それを目の当たりにした周囲の生徒たちは沈黙を守っていました。
なので、ナンシーさんの大きな声に、誰も反応しないのです。
キャシーさんですら私語の内容そのものには返答しません。
学年主任の先生は、その状況を巧みに利用して、ナンシーさんを注意します。
「注目されたいの? でも今は授業中だよ、みんな静かにしてるのに、ナンシーさんったら一人で騒いでる、おかしいね」
ここで口をつぐめないのが、さすがとしか言いようがないのですが、ナンシーさんは更に別の方向から騒ぎはじめます。
先生が「血小板は血液を固める働きをします…」と言った瞬間のことでした。
「こわーい! 血、固まるなら、血管の中で血が止まっちゃうってことー?!」
ナンシーさんが班のみんなを見渡しながら、大声で感想を述べます。
ジョニーの英語での雄叫びよりはマシですが、この不規則発言はこの雄叫び並みの大声です。
連絡がなくても参観日に来るような保護者なんて、みんな真面目なタイプ(自分で言うけども…)なので、一気に不穏な空気になりました。
「ナンシーさん、こわいってどうしたの? 何がこわいの?」
先生は何も聞こえなかった表情でナンシーさんに問いかけます。
聞こえていないはずもないし、私たち保護者の表情が強張っていることくらいは見えているはずです。
「えー? だからー、身体の中で血がぁ、固まったら、ウチら死んでる、ゾンビ?」
「え? 聞こえないな、ちょっとみんなも静かにしてくれる?」
たった数人の保護者たちしかいませんでしたが、私たちの「何言ってんだ?」という態度に気付いている生徒も多く、このときには、すでに静かになっています。
「えーと…」
「ナンシーさん、聞こえない、もう一回言ってみてー!」
「…血管で血が固まらないのは不思議です…」
「えー? ナンシーさん、発表するなら大きな声で、だよー! あ、時間がなくなってきた、授業に戻るね!」
最後は本当に声が小さすぎて先生の場所まで届かないようでした。
息子に聞いてみると、いつもならナンシーさんのヘンテコ疑問にみんなが声をあげていって大騒ぎになる流れなんだそうです。
ナンシーさんは、自分のキャラを作っている人なのでは? と思いました。
なるほど、同級生の男子から「あいつだけは退化してる」と言われるだけのことはあります。
→ キーパーソン
幼い口調、周りの反応を誘導しようとする態度、そしてそれを面白がる性格…なかなか厄介な子ではありますが、それでも彼女の神通力には限界がある。
実際、その日、理科の授業を支配したのは、間違いなく先生だったのです。