庭の姫沙羅が咲き始めました。朝開いて夕方には散る一日花ですが、
今年は蕾がいっぱい。梅雨の日々を明るく照らしてくれそうです。
6月のびわこ句会の後、近くの成安造形大学の「過日を掬う」展にみんなで出かけました。私は、展覧会に行くといつも自分の中で気に入った作品に、最後にもう一度会いに行きます。今回は、「崇拝」(竹村花菜・麻紙、水干絵具、岩絵具)という日本画。向かい合った二つの向日葵は、片方が円熟期の首を垂れた花で、もう片方はこれから伸びゆこうと首を持ち上げています。その色彩から、年を重ねることの豊かさが思われる向日葵。そして円熟期の花と成長期の花が対話するように向き合っている姿が素敵でした。
6月のびわこ句会の作品から。
五月雨や捨てるつもりのシャツ畳む 亮子
雨の日は、内省的な気分になります。捨てる前のこのシャツも、よほど思い出深いのでしょう。感謝の気持ちできれいに畳みます。
言い訳ひとつ合歓の花みっつ 敦子
合歓の花が咲いているのを見ながら、言い訳を考えています。
梅雨長し駒下駄の音今宵また 雅之
梅雨の重たい雨音の中で、駒下駄の音が軽やかに響きます。その対比が句の世界の奥行きを広げています。
女将より雨音高し梅雨始め 正明
梅雨の雨音と比べて、女将さんの声、或は下駄の音も聞こえます。ちゃきちゃきした、さっぱりした気性の素敵なおかみさんでしょうか。
父の日の父とふたりのメロンソーダ 香織
父と娘の良いひとときです。メロンソーダが効いています。
頬杖をついて梅の実傷だらけ 寿子
傷だらけの梅の実を前にして、途方に暮れている。
湖西線山迫りきて青嵐 裕子
電車と青嵐のスピードのある動きと山が迫ってくる迫力と緑の美しさを感じます。
飛び魚の目に色褪せず海の青 和彦
見たものが目に残り、そして宿っていくのでしょう。
にわか雨ほっと私と茄子胡瓜 琴美
私と野菜たちが同格になっていて、茄子胡瓜を大切に思う気持ちが伝わってきます。
青梅雨をカードゲームの泣き笑い 禎
カードゲームに興じる家族を、青葉を濡らす梅雨の雨が応援しています。
校庭の鉄棒孤独梅雨に入る せり
遊ぶ子供がいない鉄棒に自分の孤独感も重なります。
改札に子と待ち合わせ夏の空 寛子
久し振りの帰省でしょうか。夏の空が家族の再会を応援しているようです。
雨の日はどくだみの花の白が好き 千香子
下五の言い切っているところが力強く、好感が持てます。
枝豆や雨足強くなろうとも 登茂子
枝豆さえあれば、豪雨の中でも幸せなのでしょう。
ろくがつを転げてゆくよ生欠伸 ひさし
梅雨の頃、六月の日々はまさしくこんな感じでしょうか。
実梅もぐ光り集めて巫女の指 英子
梅の実と共に光も集める指が輝いています。