内湖近くの木五倍子の花。すっくと立った大木の枝に、黄色い小花が集まって垂れ下がって咲けば、なんだか青空の厚みがぐんぐん増していくようです。

 

 昨日の4月のびわこ句会の作品から

キッチンに姿見えねど桜餅 登茂子

桜餅の色と甘さと桜葉の塩加減が、甘酸っぱい切なさを醸し出しています。キッチンという日常の中のふたりの心模様でしょうか。

また拾うまた歩きつつさくら貝 敦子

花吹雪髪にも手にもはらはらと 寛子

さくら貝の句は、何気ない所作のくり返しが、さくら貝と響き合って、静謐で豊かな一人の時間をすっと手渡されたように感じられます。同様に、花吹雪の句も、ゆったり流れる一人の時間が豊かです。

藤の香のきゅっと仁王の肋骨 ひさし

花曇りネクタイキュッと初出勤    千香子

両句とも、「きゅっと」がありますが、ひさし句は藤の香と仁王の肋骨にかかり、千香子句はネクタイと初出勤にかかり、いずれも臨場感が醸し出されています。

バット振る吾子の背中に春の虹  香織

飛行機に子供手を振る黄蝶来る 琴美

春風や赤子のあくびOの型   せり

子供達の未来を、季語が応援しています。

手の内を読まれてをりしヒヤシンス  亮子

手のうちをぜんぶさらして芝桜 雅之

手の内といえば悪だくみと思われますが、それがヒヤシンスや芝桜という季語と響き合って、素敵な秘密の計画のように思えてきます。さらに、それを「ぜんぶさらす」まで言われると、芝桜のかわいらしさと相まってユーモアさえ感じられます。

春の蚊の光に乗りて玻璃障子  和彦 

白れんのはらりと還る黒き土    英子

一句目は小さなものに注目し、二句目は色彩の対比により印象深く、それぞれの情感を醸し出しています。

みんなして牛丼食べて花見して   

捨て切れぬ駄句ばかりなり四月馬鹿  正明

雅(花見)と俗(牛丼)の取り合わせ、そして諧謔は俳句の得意とするところです。ふとしたおかしみ、ユーモアが感じられます。