琵琶湖畔の十六夜公園の枝垂れ桜。浮御堂も見えます。

浮御堂の傍のゆりかもめ

(44)朝茶飲む僧静かなり菊の花 芭蕉

 この句は、堅田の祥瑞寺の作でその庭に句碑があります。祥瑞寺は華叟宗曇が開祖の禅宗の寺院で、その昔、青年期の一休さんが入門を許されるまで門前に座り込んだこともあったという寺院です。そして、その祥瑞寺での修行時代に思い悩んだ一休さんが、琵琶湖に入水しようとしたとき、烏の声を聞き悟りを開いたと言われています。私が句会の仲間と尋ねた時、作務衣姿のひとりの禅僧が静かに落葉を焚いておられましたが、なぜか明るいストライプ柄の足袋が印象的でした。

(45)蝶も来て酢を吸う菊の膾かな

堅田の医師木沅の兄に招かれたときのこと、菊の花を甘酢であえた料理がおいしくて、蝶もやってきたほどだったというのでしょう。宴に招かれた芭蕉の挨拶句です。

(46)雁聞きに京(みやこ)の秋に赴かん

この句は、義仲寺滞在中の芭蕉が、所用のため京都へ赴くが、その折に京都滞在中の門人怒誰(曲水の弟)に会いたいと思い、送った手紙に書かれていた句です。

芭蕉には、敬愛する西行法師の、

    横雲の風にわかるるしののめに山跳び越ゆる初雁の声

が念頭にあったのでしょう。実際は、所用で京都へ赴くことを伝える手紙の中に、「京都の秋に、雁の声を聞きに行きましょう」と書く芭蕉の明るいおしゃれ心が、なんとも楽しい俳句です。

(47)見送りのうしろや寂し秋の風

この句には、「野水が旅行を送りて」と前書きがあります。野水への餞別吟で、旅立つ野水を、情愛を込めて見送る芭蕉です。