表紙の雪降る窓は本を開くたび、きらっきらっとまばゆく光ります。
本書は、あとがきによると、「この句集の原稿は、ポルトガル・リスボンの靴屋の裏でまとめた」という、ねんてん先生の13番目の句集『リスボンの窓』です。
オレンジの花の真下があなたかも
カマキリの草色が乗り湖西線
こんな風に呼びかけられ誘われて始まる句集です。
鬼百合は発火寸前半島も
雲は秋座礁の船を見に行こう
心だがポピーになって戻らない
ちょっぴり切なく危険な匂いが魅力的。
友情は蛸のぶつ切り青葉風
一雨二雨三雨以上メダカの名
自由な発想のおかしさ、楽しさ。
二月だし雑木林の道選ぶ
八月の女は強いピーマンも
あんパンを買った九月の空広い
ママカリの酢漬け分け合う秋がゆく
思わぬ発見のある雑木林。
つやつやのグリーンは、八月を生き抜く女性たちの強さ。
小さなあんパンと無限に広い澄んだ九月の空。
ささやかなおかずを分け合う爽やかさ。
人はみな誰かの死後を生きて雪
葦芽ぐむ心は先へ行きたがる
未来を見つめる視線は、いつもどこかに明るさがあります。
窓へ来る岡本太郎ぶんぶんも
ぶんぶんは金亀虫のこと。ぶんぶんと一緒に来る岡本太郎は、「未熟にこそ価値があるよ」と、私を励ましてくれているようです。