琵琶湖畔の二月の木々の鳥の巣

  柔らかな雨が続いています。水位低下が心配されている琵琶湖ですが、雨が降ってもそれがそのまま水位回復につながるのではなく、一旦周辺の山々に降った雨の水が地面に吸い込まれて湧き水になったり、川となって流れたりして、ようやく琵琶湖の水位上昇につながっていくと言います。なんとおおらかな自然の営みでしょう。

今月のびわこ句会から。

 

芝焼をおもちゃの電車すり抜ける ひさし

早春の季語「芝焼」とは、害虫の駆除、焼いた灰を肥料にして、芝の発芽を促すために行う。そこをおもちゃの電車がすり抜けていく。そんなファンタジーの世界が目に浮かぶ。このおもちゃの電車は、芝の発芽であり、青々と育ってゆく希望だろう。俳句も含め詩歌を読む喜びとは、このような空想に心遊ばせることだと思う。

〇芦の角バックパックとチョコレート  敦子

早春の湖畔で、ぐずぐず濡れた地面に葦の芽を見つけた喜びが、バックパックとチョコレートで表されている。

〇あの角まで次の角まで春ふたり 登茂子

この句のふたりは、様々に読めるところがいい。若い恋人、老夫婦、友人等、、、。しかも、いろいろある未来の曲がり角に立ち向かっていこうとする希望が見えるところに、共感する。

トランプの角の痛みや鳥雲に 亮子

使い古したトランプでしょうか。角が痛んでいます。けれども、そのトランプで遊んだ楽しいひとときの思い出は、決して色あせることはありません。北へ帰る鳥たちにとって、湖での恋の季節が忘れられないように。

〇春の雪ぬれて駅までスニーカー 裕子 

春の雪ではあるし、スニーカーも効いていて、この駅は希望への出発点のように感じられます。

〇立春のクリーム混ぜる角立てて  禎

春の始まりの日、さあとばかりクリームを泡立てて角がたつ頃、わが心の中の小鬼の角も立つ気分

〇あんた誰問う母の目に椿赤く  琴美

娘のこともわからなくなった母だけれど、下五の字余りの「椿赤く」に生きる強さが感じられる。

〇春風と大路の角でハイタッチ 和彦

街角で出会った春風。コートも脱ぎたい気分です。

〇ただいまとくるりひとなでねこやなぎ 香織 

見れば、つい触りたくなる猫柳。ふうわり春の気分です。

〇山茶花の角立ちばなし長話し  英子

立ちばなし長話しのリフレインが楽しい。

〇梅の花「角」の駒持つ丸い指 寿子

将棋の角ばった「角」の駒と子供の丸い指のコントラスト。梅の花との取り合わせがいい。

〇春夕焼頬杖ついて角の席  せり

カフェの角の席で、恋人を待っているのでしょうか。

〇のどけしやどらやき母と半分こ   千香子

どらやきを半分こする母子の豊かな時間。

〇あの角を曲がれば我が家梅香る  正明

いろいろあっても、いつもの家路のうれしさです。