内湖で出会った紅く輝く穂と、白く揺れるシロバナサクラタデ、湖面に映る雲たちです。

 本書は2023年10月13日出版予定です。

本書の中で、小川双々子(1922年~2006年)全俳句の中から、編著者の武馬久仁裕氏の選んだ100句を、16名の執筆者がそれぞれ鑑賞しました。その際、執筆者は伝記的な鑑賞をせず、あくまで俳句の言葉そのものに即した鑑賞を試みています。それは、俳句の言葉を通じての、作り手と読み手との時を越えた対話とも言えるでしょう。

 私の鑑賞文を、ひとつ挙げておきます。

 

(りやん)(さん)や坂みづいろにしゆりぐすく       

『命命鳥』

 

 「しゆりぐすく」は、首里城。沖縄の古い言葉です。冷傘はひんやり涼しい日傘で、夏の季語です。作者は、「しゆりぐすく」に合わせて、「りやんさん」と振り仮名をつけています。

 夏の暑い日、冷傘をさして坂道を上ってゆけば、その坂も涼しく感じられ、首里城へと辿り着きます。見渡せば、遥か遠く水色の海が広がっています。その景色の中に、時空を超えて、琉球王国の頃の首里城が浮かび上がってきます。 

 琉球王国は、海を隔てた隣国の中国そして日本と交流しながらも、独自の文化を形成していきました。大海原に遥か昔からぽっかりと浮かぶ島の首里城は、もしかしたら、この島にとって暑い夏の日に差す涼しい日傘のような城と言えるのかもしれません。            (川島)                   

 

   

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