内湖のハゼラン

 昨日はびわこ句会。今月の兼題は、レモンでした。木々のレモンの実は、濃緑色から黄色へと色づく頃。紡錘形で、芳香を放ち、噛めば甘酸っぱいレモンは、日本には明治初期に渡来後、梶井基次郎の短編小説『檸檬』、高村光太郎の詩「レモン哀歌」等、文学の世界でも数多く取り上げられています。そんな今月のびわこ句会の俳句から。

 

〇レモンレモン空がおおきくみえる場所 敦子

レモンは人の心の青春性と思えば、そんなレモンのような心には、いつでもどこでも空はおおきくみえるでしょう。「おおきくみえる」と平仮名表記にしているところにも、ファンタジーが感じられます。

〇レモン二個ひとつは君でひとつ僕 登茂子

このレモンはシチリアレモンとか瀬戸内レモンかもしれません。

〇レモンの黄酸っぱい顔の我が息子  禎 

息子の酸っぱい顔はレモンの黄。思春期を迎えた息子がふっと他人に見える瞬間だ。

〇カクテルのレモンスライス西海岸 雅之

カクテルのレモンスライスと西海岸の取り合わせが、素敵です。

〇病院の庭にレモンの青い実よ  千香子

病院の庭に青く実るレモンの輝きは、入院患者の希望のようです。

諍いの渦中へしぶくレモン汁 ひさし

水入りならぬレモンのスプレー。諍いは収まるでしょうか?

〇雨の夜は窓辺のレモン青き影 和彦

 暗い雨の夜、ひときわ輝くレモンの黄とその影の青が印象的。

〇メニュー見てちょっと迷って氷レモン 寛子

迷いの後ならば、よけいに爽やかな氷レモン。

〇雨の午後レモン転がすたなごころ 英子

雨の日のたいくつな心、たいくつなてのひら。

〇つなぐ手をちょっと外して猫じゃらし  亮子

ついつい触りたくなる猫じゃらし。彼の手をちょっと外して遊んでみる。

〇新涼や新聞受けに音澄んで 裕子

涼しくなった秋の朝。新聞受けに届く新聞の音さえ澄んでいる。

〇フライパン踊る新胡麻私も 香織

新胡麻がパチパチ跳ねるフライパンを持つ私も一緒に踊っている。

〇亡き父の積読秋の夜は更けて  琴美

読まずに積んだままの父の本たち。その背表紙が静かに語りだし更けていく秋の夜。

〇虫の夜や来年は越す家の縁 せり

寂寥感が漂います。次の家でも思い出を。

〇軽トラで横寝するなり案山子かな 正明

役割を終えた案山子のくつろいだ様子。