内湖の合歓の花

 6月のリアル句会では、「ジューンドロップ」を季語とした俳句が出されたことから、みんなで季語について考えました。季節の言葉である季語は、俳句の作者と読者がイメージを共有できる便利な言葉です。そして、言葉である以上、使われなくなる季語もあれば、新しく生まれる季語もあるでしょう。今では、季語と認められている「春一番」や「万緑」も、そんな新しく生まれた季語でした。

 今回の席題は、「胡瓜揉」。

  〇足元の猫に躓き胡瓜揉む  ひさし

 〇ああ言えばこう言うふたり胡瓜揉 由紀子

 

〇夏の月積木の城の上にあり 亮子

子供たちの作る積み木の城は、再現性がなく独創的だけれどいつも不安定。そんな積み木の城を応援するように、夏の月が力強く輝いている。

〇捜しもの過去とのフーガ皐月闇 裕子

捜しものは過去の思い出につながるもの、皐月闇の中そんな過去の思い出を優しく包むように、バッハのフーガが優しく流れ出す。

〇ジューンドロップ窯の響きを聞き分けて 和彦

六月頃若い果実は仲間の声を聞き分けて自ら落ちていき、焼き物の窯の響きを聞き分けて調節する陶芸家。一句の中で、柿と焼き物が響き合っている。

〇青梅の飴ほうり込み第二章 登茂子

はじまりの第一章が終わり、いよいよ第二章。青梅という若々しい言葉から前向きな雰囲気が感じられる。

〇サングラス似合う漢の高笑い 正明 

なんかちょっと怖そうなおっちゃんの高笑い。大丈夫でしょうか?

〇父の日の父さん山を降りて来る ひさし

何かの夢中の父さんなのか、父の日だけは父親なのか、いろいろ想像できる。

〇梅雨の月合鍵握り部屋の前 花凜

ロマンチックなドラマの展開なのか、梅雨の月がもどかしい気持ちを表し、いろいろ想像される。

〇Cの字の初成りきゅうり皿の上 寿子

Cの字が斬新で、おいしそう。

梅雨晴れやシーツ三枚はためいて 千香子

梅雨晴れのうれしさです。

〇時鳥君に会う前覚めた夢 雅之

時鳥の鳴き声にハッと目覚め、夢の余韻を楽しんでいる。

〇梅漬ける亡父のレシピで七十年 英子

いかにもおいしそうなレシピです。

〇森のカフェ夏うぐいすのお出迎え  琴美

夏うぐいすの声の聞こえる森のカフェなら、おいしい料理が出てきそう。

〇ライオンがぼーと見ている若楓 せり

ゆったりしたライオンの明るい初夏の光景。

〇ほうたるや呼べ呼べ若き母と我 敦子

〇夏の風邪梅がゆ辛い祖母の味 知子 

夏風邪を引けば、祖母の梅がゆが懐かしい。

〇青梅や洗って干してさて何に 寛子

とりあえず青梅を洗って干すというところに、可笑しみがある。