内湖のそばの花茨

 昨日のびわこ句会は、リアル句会になって3年ぶりに顔を合わすメンバーや新規メンバーも加わり、賑やかでした。名前を伏せたリアル句会なので、遠慮なくお互いの俳句を鑑賞しあい、時に作り直すこともあります。作者、そっちのけで、別々の意見を持つ二人が言い合いになったりすることもありますが、それは言葉の持つ力なのでしょう。

〇画材屋のデッドストック夏はじめ 敦子

画材屋の在庫品といえば、完成品ではなく未知の作品の画材である。そのデッドストックが季語「夏はじめ」と響き合い、未来の作品への希望が感じられる。

〇校章の翼を煽る青嵐 樹   

青葉の頃に吹く少し強い風の青嵐は、学生達の若い希望を応援している。

〇さらららら夏の砂丘と砂時計 ひさし 

夏の砂丘は、まるで砂時計の中の砂のようにさららららと崩れ落ちる。逆に、砂時計の砂には夏の砂丘を感じる。

早朝の君のメールと夏蜜柑 登茂子 

君のメールはまるで夏蜜柑のように酸っぱく甘い。

薫風が空を広げるタンデムデート 花凜 

空を広げるデートは素敵。

故郷の初夏の野山はサラダバー    琴美

「故郷の」と始まって、サラダバーという言葉に行きつくところが面白い。故郷が、新しく感じる。

初夏や明日が見たくて硝子拭く 亮子 

面倒なガラス拭きも、未来へ向かっている。

〇緑陰の辛口ワインとエスプリと  雅之

緑陰では、辛口ワインも柔らかい飲み口になり、おいしそう。エスプリも。

ここここと光が呼ぶよ蛇苺 せり

不思議な感情を呼び起こす蛇苺は、その名前が蛇と苺の取り合わせだからなのか。

〇麦の秋一羽のカラス首傾げ 和彦

麦の秋の黄金色と鴉の黒色の対比が印象深い。

風薫る新刊図書のページ繰る 正明

「る」のリフレイン。リズムが良い。

少年ダンサー若葉青葉の風になる     千香子

風のように踊る少年のストリートダンサー。 

町なかを急旋回の燕かな 寛子

私の心も、急旋回。

青嵐苗の覆いをはためかせ 寿子

丈夫に育つ苗が思われる。

深夜便終われば夜明け目白来る 英子

「深夜便」は、ラジオ番組の深夜便と、夜中に働く運送の深夜便の読み方ができる。