『猫街』(発行人:三宅やよい、編集人:赤石忍、同人代表:近江文代)7号を、送って頂きました。今号は同人が15名に増え、ますます多彩な俳句とエッセイ。いつもながら楽しく読ませていただきました。

馬跳びの背がばらばらに春日射す 三宅やよい

ゆきずりの泡立ち草にひとりごと

「ばらばら」は、きらきらしていて、「ゆきずり」は、自由気ままで素敵です。 

水道にひらくくちびる散るさくら 諸星千綾

地球からそっと出ていくシャボン玉 

「ひらくくちびる」と「ちるさくら」の言葉の響きが似ているせいでしょうか、「くちびる」が、「さくらのはなびら」みたいです。

5月3日わたし九条さんが好き 山崎 垂

長き夜やジンに流漂譚を混ぜ

5月3日は、憲法記念日。好きな気持ちに、理屈は要りません。

     春の星人体にあるフラクタル 芳野ヒロユキ

首振り電気ストーブのグルーブ感

春の星の下、美しく調和のとれた、あのフラクタル構造が人体にあると言い、首振り電気ストーブにはグルーブ感(高揚感)があると言っています。外来語(俗)を取り入れて、新しい言葉の世界を創出しています。

浴場にケロリンの桶花の宿 きゅうこ

ミモザゆらゆらその先の白い橋

ケロリンの桶にリアル感があり、ミモザのゆらゆらの先の白い橋に未来を感じます。

エプロンの似合う父さん水温む  静 誠司

たんぽぽはたんぱぱとたんままの子よ

家事の上手なお父さん、いいですね。「ぽぽ」の言葉遊びも楽しくワクワクします。

    愛はつまりポテトサラダのニンジンだ  杉山魯壜

猫にだけ見えてる春の日のなにか

ポテトサラダの主役は、じゃがいもです。愛は主役じゃないかもしれないけれど、あったほうがいい、そんな奥ゆかしさが素敵です。

先祖にはイソギンチャクもきっといた   坪内稔典

デコポンのポンのあたりがいとおしい

イソギンチャクやポンを大切に思う心に、共感します。

風ふわりチューリップ丼のある食堂 赤石 忍

半島の香りどこかに燕の巣

チューリップ丼って何でしょう、半島の香りとは、、、まず驚いてしまいます。そして、読者の心はゆらゆら柔らかく揺れるのです。

    若布干すからからとゆれゆれる我  今泉秀隆

     牡蠣フライ友の便りの封切らん

この牡蠣フライ、きっとおいしかったことでしょう。

結婚はするにはしたが布団干す  近江文代

筋肉を育てる機械山笑う

結婚と布団干すという日常の家事を、対等に扱っているところが気持ちのよい句です。筋肉を育てるため機械を頼る私達と木々芽吹く早春の山々との対比が、鮮やかです。

     ガラガラポン冬眠券の大当たり 沈 脱

うららかにどーにも呆けはとまらない

ガラガラポンで、冬眠券の大当たりとは、なんとも楽しい俳句です。

グローブの土手を叩けば山笑う ねじめ正一

河底のワニの目ぎよろり月高し

グローブで叩く土手と早春の山、河底のワニの目と夜空高く上る月。視点の動きが、読者の心まで広げてくれます。

小春体というフォントがあるみたい 藤田俊

店員の青いエプロン春隣

小春体というフォント、使ってみたくなります。店員さんの青いエプロンにさえ春を感じる、早春の気分はいい気分。

露草のそばを鯨が通り過ぎ おおさわほてる

さあ帰ろうオリオン座と犬連れて

露草と鯨、オリオン座と犬。気持ちの良い取り合わせです。オリオン座も犬と一緒に連れて帰れそうです。

 ご恵贈、ありがとうございました。