鳥渡る空にショパンの指を追う 由紀子

 

 子供の頃、先生の家へ行く途中の道が楽しくて通ったピアノのレッスン。ショパンのワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2は、そんな私が初めて好きになった曲でした。明暗が小気味よく交互に展開していく短調の哀愁に満ちたマズルカのリズムは、中学生だった私の心のモヤモヤに寄り添ってくれたのかもしれません。ショパンの恋人だったジョルジュ・サンドの田園小説を読んだのも、その頃でした。小説の中のこおろぎと呼ばれた、いたずら好きな鬼火のような少女にも、マズルカのリズムを感じました。ショパンとジョルジュ・サンドの恋は、その頃の私の憧れでした。