元わたしの町。 | あおろぐ

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singer song writer あおのブログ。
LIVE情報や日々をこっそりつづっていきます。


随分と前に、幼い頃に家族で住んでいた千葉の町にひとり散歩へお出かけをした記事を書きました。
おさんぽ。】←これ!




そのお散歩は、父のとの思い出の場所を写真に撮って、退職祝いに家族からプレゼントするフォトブックのための写真撮りのためでした




そのときのお話をひとつ、フォトブックをプレゼントし終えたので。
お散歩の続きをすこし。









小さな小さなころに住んでいたこの街は



静かでゆっくりとした時間が流れる場所でした。







道の記憶なんかなくて
地図をたよりに、てくてく歩いて早数分。


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タタン、と音を立てて走る電車は
荒々しくもなく
記憶を遡るのに丁度いいリズム。


歩いた線路沿いのこの道は
多くの方の散歩道になっているようでした。




この街には、何もない。

ただただ、静かに時間が流れてる。





うん10年ぶりに、家族で過ごしたあの家を見に行った。



姿形色まで覚えていなくとも、広かった駐車場や大きな坂道、向かい合わせの同じ建物、よくいたずらをした隣の空き地は、記憶通りのものだった。




小さくなったように見える駐車場
登るのも一苦労だったはずの坂道
通りぬけられなくなった隣の空き地




立ち止まって、思わず見つめた。
知っているはずのここが
知らないものになってしまった気がする。

あたまのなかが、淡い答えのなかから断片を拾い集めて。
確かにここにわたしたちはあったのだと納得したがって。


立ち止まって、思わず見つめた。


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家の前にあったお茶屋さんはまだひっそりと建っていて、新茶ののぼりがはたはたと揺れる姿は、記憶の限りでは見覚えがない。



中に入ろうとしたとき




ふわりと香る甘くて新鮮な緑の匂いは





泣きたくなるほど懐かしかった。






「いらっしゃいませ、今日はいいお天気ですね。」






お店の角に座っていたおばあさんが声をかけてくださって。





「見ていたでしょう?あの建物を。ここへ越して来るのですか?」




どうやらずーっと見られていたようだった。
(ひたすらに写真を撮りながら、ひとの家の周りをぐるぐる回る姿を一部始終や。あかんやつやで。 





ちがうのです、おばあさん。
わたしは、ここを出て行ったひとなの。





事情を話しているあいだ、おばあさんはずーっとにこにこと聞いていてくださいました。





わたしがまだ幼かったころの家だったこと。
家族で福岡へ引っ越したこと。
住んでいたころ、毎日のようにこのお茶屋さんへ通わせていただいていたこと。
父の退職を祝って、家族でフォトブックを作るのに思い出場所巡りをしていたこと。




「そうですか。それはそれは。住んでいたときに、お名前を聞いておけばよかったですね。」





このお茶屋さんには、思い入れのものがある。


透明の縦長の袋に入った、緑茶飴。





当時、姉とよく買いに行ったものだった。
弟はまだ歩けたか歩けないかくらいの年だった。





「お茶の飴は、もうないのです。子供たちがね、苦いって言うから。夜に眠れなくなるのですって。だから黒糖飴に変えたの。」





この時期なら必ずいた
つばめの姿もない。




「つばめはね、屋根を新しくしてから一度も来なくなってしまってね。もう二度と、来てはくれないのかしらね。」




にこにこ話すおばあさんの目尻の皺が深くなって、わたしもそうですか、と笑うしかなかった。







姉とみた小さなつばめの姿は、いつもせわしなく親鳥にごはんはまだかまだかと声を張り上げて、身を乗り出す体が今にも落ちてしまいそうだった。



ふたりでスカートの端をつまんで広げて




よく、落ちてきても大丈夫なようにと、受け入れ態勢で見上げたものだった。





落ちてきたことはないけれど







今では。








福岡に越してから




父と母は、相も変わらず穏やかに子供たちを見守ってくれていて。






姉は母になり。
あの頃のわたしたちと同じような年の子がいる。



弟は、就職をして。
深夜まで仕事に追われているようだ。
毎日楽しいと聞くと安心するは、わたしもどうやら姉としてのこころをちゃんと持っているらしい




わたしは、ひとりこの地へ出向くことの出来る場所で、ひっそりうたを歌ってる。





「あのおうちはね、出て行ったかと思えば、直ぐにひとが入ってくるの。そして長く長く住むの。家族が増えて、歩けなかった赤ちゃんが大きくなって歩くようになって、ランドセルを背負って、もう何人も見てきたの。もう、何人も。…倅がお茶をいれましたよ、いかがです?」






いつか、きっと。
またこうやって、大きくなったそのときの子たちは、きっとこの街にふらりとやってくる。




このお茶屋さんは、そんな甘くて柔らかな香りがする。






つばめ。
つばめ、戻ってくるといいですね。
きっと、戻ってきます。
だって戻りたくなる場所ですもの。
現にこうやって、戻ってきたではありませんか。
わたし、つばめなのかもー。




グレーのロングカーディガンをぱたぱたとはためかせて、にーっこり。






おばあさんが、にーっこり。





「これはまた。ずいぶんと、大きくなりましたね。またいつでも、待ってますから。」




あの時と同じ笑顔。



幼いつばめをいっしょに見上げた笑顔だ。











この町にはなにもない。
なにもないけれど、すべてがある。






耳元でからだに流し込んだうた声が
わたしにそう言っていて






思わず
帰りたくなるこの場所は





何もない
全てがある町。





元わたしのまち。
元わたしたちのまちだ。


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おすすめの新茶をいただいて、片手にてくてく。



お酒でもいいけどさ。
お茶を飲みながら
ゆっくり話ができたらいいな。





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今日もいい1日でした。
空がきれいで、少し雨がふりました。

みなさま、今日はいかがお過ごしでしたか?
今度は、あなたの元あなたの町のおはなし、聞かせてくださいませ。




今日もありがとーう


おわるるる!


Schedule
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2016.09.17 Sat
@吉祥寺 麻よしやす
ハンモックカフェさまにて生演奏BGM。
投げ銭スタイル!
14時頃からフリーにBGM予定!
カフェでございますゆえ、ゆっくりコーヒーやランチをお楽しみくださいませ!(OvO)

2016.10.30 Sun
comming soon

2016.11.06 Sun
comming soon
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