⑱アイデアの宝庫から飛び出すお話 | 青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

「青い光が見えたから(講談社)」の筆者、高橋絵里香による
フィンランドの暮らしの記録。



クリスマスのかざりつけがされた教室で、授業を受ける4年生。



季節はずれだけど(笑)、昔書いてた連載が出てきたのでご紹介!フィンランドの小学校で、1年にわたって授業を観させてもらった体験は本当に貴重だった。フィンランドの教育について、もっと教育者の視点で知りたいと思ったのも、自分が教師を目指そうと思ったのも、この体験がとてもつよく影響しているのは間違いない。


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十二月に入り、四年生のクラスでは「クリスマスカレンダー」と題して、一日一つクリスマスにまつわるお話を先生が読み聞かせることになりました。


電気を消して、クリスマスのかざりの光だけがぼんやり照らす教室で、パイビ先生がノートパソコンを開きました。

「あるところに、サンタクロースのおじいさんが、おばあさんと一緒に暮らしていました。サンタさんは、今年も何千万というプレゼントを作るために、お手伝いの小人と大忙しです……」。

この話、サンタさんの仕事をじゃましにきたいたずらな小人を掃除機で吸いとってしまうという、とってもゆかいな結末。


こんなおもしろい話、いったいどこで見つけてきたのだろうと思っていたら、実は子どもたちが作ったものでした。

「一人一つ作って、それを毎日読むことにしているのよ。だれがどのお話を作ったかはわからないようにしてね」と、先生。

知らずに聞いていたわたしは、あらためてお話の完成度の高さにびっくり。子どもたちの独創力には本当に圧倒されます。


この学校の子には、独創力を大いに発揮できる場が十分に与えられています。本来、子どもたちは、エネルギーや興味のかたまりで、アイデアの宝庫。それを大人がうまく保ってあげられれば、やる気を起こさせる必要などないはずです。


日本では学力低下が問題にされているようですが、それよりも、子どもたちの個性の単一化に、わたしは不安を覚えます。さまたげとなるものを最小限におさえて、いかに感性をつぶさずにいられるか。子どもたちの未来は、それ一つにかかっているように思えてならないからです。


2008年12月7日 朝日小学生新聞掲載




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