「いざ、勝負!」
「おう!」
両者の間合いが詰まり、鬼武蔵の大きく振りかぶった一撃が拙者の頭上に迫る。
「がぁ!」
拙者は力強く鬼武蔵の一撃を払いのける。
そして、両者は間合いを取り馬を返す。
「ふぅー」
両者は一度息を整えた後、再度相手に向かって行く。
今度は拙者から仕掛ける。横薙ぎの一撃。
それを鬼武蔵はあえて自ら兜を突き出し頭で受け止める。
な!?
驚く拙者を余所に鬼武蔵の強烈な突きが拙者に迫る。
拙者は上体を反らし落馬しそうになりながらも何とかその攻撃を避ける。
「ぐっは!」
拙者は上体を起こすと、馬を進めて再び間合いを取る。
「はぁはぁ」
何ちゅう奴じゃ・・・。
拙者は改めて鬼武蔵の強さに圧倒される。
さて、どうしたもんかの・・・。
拙者が鬼武蔵の攻略に頭を悩ませていると突如一発の銃弾が鬼武蔵をかすめる。
「む!?」
お互いが銃弾の出所に目を向ける。そこには鉄砲足軽の伝蔵の姿がありました。
伝蔵は鬼武蔵を見据えたまま拙者に声をかける。
「お頭、ここは退きましょう」
「しかし・・・」
しかめっ面をする拙者に、伝蔵は視線を横に移し目配せをする。
?
伝蔵の視線の先、そこには永楽通宝の馬印の軍勢がおりました。
あれは、水野の軍か・・・。
拙者がそれを確認すると、伝蔵は頷く。
・・・そういう事か。
拙者は、伝蔵の意図をくみにやりと笑う。
仕方が無い。相手は『鬼』だからな。
拙者は馬を返し鬼武蔵に背を向ける。
「逃げるか、朱槍!」
正に鬼の形相で拙者を睨みつける鬼武蔵を余所に、拙者は馬を走らせる。
「ちっ!」
大きく舌打ちを鳴らす鬼武蔵。案の定、拙者の後を追って来る。
よし、かかった。
・・・・・・・つづく