守綱記 第十三章「小牧・長久手の戦い」十二 | グレート家康公「葵」武将隊

グレート家康公「葵」武将隊

天下統一を果たした徳川家康公のふるさと、岡崎市の観光隊を務める
”グレート家康公「葵」武将隊”による日記です。

よし、かかった。

拙者はより一層馬に力を入れる。隣を走る伝蔵も必死で追いすがる。

「伝蔵、はよ走れ!鬼武蔵に殺されるぞ」

「わかってますって!」

山裾を駆ける二騎の騎馬武者と一人の足軽。

水野の軍勢まではもう間もなく。拙者は軍勢に向かって大声で叫ぶ。

「惣兵衛殿!」

軍勢の先頭、名前を呼ばれた騎馬武者―水野惣兵衛殿はこちらに顔を向ける。

「ん・・・半蔵殿?」

拙者は目で惣兵衛殿に合図を送る。

「鬼武蔵じゃ!」

「何!?」

拙者の言葉に惣兵衛殿が驚いている間に、拙者と伝蔵は水野の軍勢の中に駆け込む。

その直後、惣兵衛殿の掛け声が周囲に轟く。

「て、鉄砲隊、撃てぇ!」

凄まじい銃声と共に馬の鳴き叫ぶ声が聞こえる。

拙者はすぐさま振り返り鬼武蔵の方に目を向ける。

倒れた馬の近くで横たわる鬼武蔵。小刻みに体を震わせている。

拙者は馬を走らせ鬼武蔵の元へ近づく。

馬上から鬼武蔵を覗くと、見事に眉間に銃弾の穴があいている。

・・・終わった。『鬼』にしては呆気ない最期だったな。

拙者が片手で鬼武蔵を拝んでいると、突如素っ頓狂な声が聞こえて来る。

「お頭~」

声の主の方に目をやると、そこには弓を携えてこちらに向かって来る足軽の姿がありました。

伝蔵の弟・大蔵であります。

「お頭~置いて行かねぇでくだせぇ」

大きな体を揺らし、息を切らしながら拙者の元までやって来た大蔵に拙者は質問する。

「他の者たちはどうした?」

「直に来ると思いやす」

そう言った直後、倒れた鬼武蔵に気づく大蔵。

「おわっ、派手に死んどるな」

「鬼は死んだ。後は池田軍じゃ」

「池田軍なら、ここから東の方に旗印が見えましたぜ」

「・・・ほうか」

拙者は東の方角に目を向けると、二人の足軽の名前を呼ぶ。

「伝蔵、大蔵!」

「へい!」

大声で応える足軽二人。拙者は二人に視線を移す。

「もうひと戦いくぞ!」

「おうよ!」

拙者は二人の声を聞くと馬を駆ける。

目指すは、池田軍!

・・・・・・・・つづく