『バトルロワイヤル』を鑑賞。
2002年公開映画。高見広春の小説をもとにしている。
監督は深作欣二。仁義なき戦いシリーズを手掛けた監督。アクション映画を多く手掛けていて、自身の戦争体験をもとに暴力的なシーンも多々ある。
以降ネタバレありで感想を~
強キャラ揃い、3年B組の生徒
まず、主要なキャラクター紹介。
七原秋也。今作の主人公。どうにかして人を殺さずゲームに勝ち抜きたいと考えている。
中川典子。教師であるキタノが唯一心を許す存在。
川田章吾。自分から志願してゲームに参加。過去にゲームに参加したことがある。その時に慶子という女性と一緒に生き残ったが、最後に慶子は死んでしまい自分が生き残った。七原秋也と中川典子とともにゲームを進めていく。
相馬光子は父親に性的虐待をされそうになった過去を持つ。「あたしただ、奪う側に回ろうと思っただけよ。」彼女は殺されそうになったから殺すというかんじで、生き延びようとしているだけ。それは動物の本能。自分を守ろうとしているだけ。
桐山和雄はサイコパスのように描かれている。人殺しが楽しい。快楽殺人者。そんな人物が普通の中学生と対峙してよりバイオレンスな演出を描いている。
このように多種多様な中学生をキャラクターとして作り出した。そうすることによりゲームという枠の中で彼らを混ざり合わせ、より凶暴にバイオレンスに物事が進んでいく。その過激さが今作の作風しかり、テーマ性をより強めていったと思う。
ゲームでは様々な人の死が描かれた。付き合っているカップル同士で海に身を投げ心中したり、仲のいい女子グループが喧嘩になって殺し合いをしたり、その引き金になった女の子もまた自殺したり・・・とワンパターンではない。その死に方も様々な形のキャラクターが描かれているからこそ成り得た形なのだろう。それもまた過激な演出に繋がっている。
深作欣二×暴力
深作欣二監督作品では「暴力を描くことで暴力を否定する」という考えがある。今作はR15指定作品になってしまったが、監督はこれに不服であったらしい。映画のレイティングというのは難しい問題。今作での暴力的なシーンは必須であると思うし、こうした過激なシーンが観客の心に残り、記憶に焼き付けるような映像をつくってこそ映画のメッセージが読み取れるんじゃないかと思う。『バトル・ロワイヤル』というタイトル通り、生徒たちが次々と殺し合いをしていく様を脳裏に焼き付け、これが最後どうまとまっていくのかということを考えるのが見ている側の使命。レイティングで見られなかった世代の人にこそ見てほしい作品であった。
キタノとは・・・
失業者が増え続ける日本。国がきちんと機能していないような状況下。大人は生きていくことを放棄するように自殺していく。そんな様子を見ている子どもたちは夢も希望もなく育っていく。多感な時期である中学3年生。そんな大人に色んなことを教わるべき大事な時期であるのに、向き合う余裕がない大人。だから時に凶暴化してしまう。こうして大人が制御できない子どもたちが増えてしまい、今回のゲームが始まった。
キタノは3年B組の教師。彼もまた子どもと向き合う余裕のない大人であった。娘には嫌われ、生徒とは向き合えず、学校で一人の生徒に刃物で傷つけられるシーンもあった。しかしそんなキタノの最後は感動的であった。銃で撃たれて致命傷を負いながらも最後に娘からの電話に出て説教をする。「いいか、人のことを嫌いになるってのは、 それなりの覚悟しろってことだからな!」このセリフの意味を理解しようとするのではなく、こうやって説教していることで娘と向き合っているという事実を受け止めなければならない。キタノは最後の最後でやっと娘とちゃんと向き合えた。死にそうになりながらも、最後親として娘に説教をする父親の姿。それは実に感動的。
また、教師として生徒と向き合おうとする気持ちもちゃんと伝わった。キタノが描いた、殺し合いをしている生徒たちの真ん中に中川典子だけが観音菩薩のように描かれている絵や、典子が見た夢のキタノ。そして典子が相馬光子に殺されそうになる時には助けようとしていた。キタノは、典子とはちゃんと向き合おうと思っていた。
しかし結果として生徒に殺されてしまう。教師として一人の生徒としか向き合わなかった結果、向き合っていなかった生徒に殺されたのだ。
そのキタノの思いも引き継いで、主人公である秋也は典子とともに逃亡という形で知っちゃかめっちゃかなこの時代を生き抜くことを選ぶ。こうしたカオスな状況の日本で死んでいく死者の思いを引き継ぐことを大切に新しい世の中を作ろうとする主人公を最後のシーンで描けていたのもよかった。
●個人的に語りたい事
久しぶりの邦画鑑賞。グロい、エグイという前評判からドキドキの気持ちで見始めました。見てみるとそこまでグロくはないかなぁという印象。それよりもテーマのメッセージ性が強く、そこに惹かれるような映画でした。
若い俳優陣も見ていて楽しかった。みんな若いなぁ!!・・・って思ってたけど、藤原竜也って変わらなすぎwww年取らないの?不思議・・・。
かなりバランスの取れたいい映画。キャストもよかったし、ストーリー自体も面白いし、監督ならではの演出もこの作風に合っていたし・・・ただまとまりがない感じがしたので15点まではいかず・・・。
そして、続編も鑑賞した。これはひどい・・・。記事にできないぐらいにひどい・・・。
深作欣二監督は続編の制作途中で亡くなってしまい、別の人に移されたらしいが本当にどうしようもない作品であった。
●総合評価
14点/20点満点
・脚本 3点
難 ・ ・ ★ 易
・テーマ 4点
社会的、普遍的 ★ ・ ・ 雰囲気に特化
【死者の思いを引き継ぎ、懸命に今を生きることの大切さ】
・演出 3点
・キャスト 4点