『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を鑑賞。

 

『セブン』を鑑賞してからまたこの監督とブラッドピッドのタッグをみたいな~と思っていた。

ネットフリックスで配信していたのでラッキー!

 

監督はデヴィット・フィンチャー

『セブン』『ファイトクラブ』などの作品を手掛けている。

 

 

以降ネタバレありで感想を~

 

 

 

 

ベンジャミン・バトンの体験記

今作は主人公ベンジャミン・バトンの体験記。2005年現在の時間軸でデイジーがベンジャミン・バトンの日記を娘のキャロラインに読ませることから始まる。ベンジャミン・バトンは若返りというタイトルの通り、数奇な人生を辿る。まさに奇跡的なことである。しかし、彼の体験してきたことはかなり普遍的なことであった。様々な人たちと出会い、別れ、何かを感じ取る。その体験から何かを学ぶという過程は映画でなくとも日常の誰にでもあるような普遍的なものであった。この映画の面白いところはそんな奇跡のような人物が、様々な体験をしてより普遍性を強く表出しているところである。そんな普遍的な物語をいくつかピックアップして以下にまとめてみた。

・死生観

老人介護施設で育ったベンジャミン・バトンは多くの人間の生死を目の当たりにする。彼は誰かが死んだら、すぐに新しい入居者が入ってくるということを幼いころから見続けた。そこから死とは誰にでも訪れる、避けられないものであるということを悟る。恐怖というより成長の一つの過程としてみているようである。

また、船長マイクの死からも「はらわたが煮えくり返りそうになる」「女神が迎えに来る」「行くしかない」というセリフがあるように死はどうしても避けられないもののように描かれている。

・愛

ホテルでのエリザベスとの密会を重ねるベンジャミン・バトン。

不倫を通して、初めて女性に対する恋愛感情を抱く。そこで彼はどうやって相手を喜ばせるかということを知る。服装を気にしたり、どんな会話をすればいいのか、相手が何を考えているのか、食べ物は何が好きなのか・・・恋愛というものがどんなことで他者をどういう感じで見るのかを学ぶ。

・金

船長マイクとの出会いから風俗での初体験やお酒を覚え、金を稼ぐことの意味を知る。老人介護施設でほぼ外の世界と遮断された生活を送っていた彼にとっては新鮮な体験であった。そんな様々な経験をしていくためにはお金が必要である。これからも新たにしていくためにもお金というものは必要不可欠なものなのである。

・孤独

老人介護施設で出会った黒人は孤独というものを教える。人間は生まれてくる時と死ぬときは独りぼっちである。そんな寂しさはもちろん、孤独を通して得られるものも知る。孤独であることにより、それまでにあって当たり前のものがどれだけ重要なものかわかるようになる。

また、父トーマスの死からも学ぶことがある。トーマスはベンジャミンが生まれた後妻も死んでしまい、すぐに彼を捨ててから一人で生きてきた。戦時中ということもあり需要が伸びたボタン工場を成功させた。しかし孤独であった。その最期を看取ることでベンジャミンは何かを感じ取ることができた。

 

テーマは永遠の愛

今作はフィッツジェラルドの『THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON』という小説をもとにした作品。映画化に伴い、小説のラストと映画のラストが違う。小説はベンジャミン・バトンは記憶を取り戻すことなく独りで死ぬ。映画のラストはデイジーに看取られ最後にデイジーのことを思い出してから死ぬ。ここで小説のラストを変えたのには意図があるように思われる。

孤独というものを散々学んだ彼であったが、最後は愛というものをより強く表現している。愛する者に看取られること。デイジーの感覚ではあるけど、彼は最後に記憶を取り戻したこと。それはデイジーに向けたいくつもの手紙からも分かるように彼女に対する愛をより強調させるような演出であった。ラストは愛が起こした奇跡。これは小説にはない感動を得られることができた。

もしこれが小説のラストに従っていたら、もっと作品は寂しいものになっていたと思う。より孤独や死というものを強調した作品になり、最後見終わってからなんだか悲しい感じになる。

これが愛というものを強調させるラストにしたことでより感動的に、ドラマチックになった。

そして愛を描きたがるのが監督デビットフィンチャーらしい。

 

 

老年ベンジャミン・バトンを造り出すCG技術

どうやって作られたのかはこの3つの記事と動画で分かる。めちゃくちゃな時間と人員と資金が必要だってことがゴリゴリに伝わる。

 

 

 

 

技術的な面をクローズアップすることも大事だが、ここではなぜ複数の役者を使わずブラッドピッドのみが演じなければならなかったのか、なぜ特殊メイクでなくてVFXにこだわったのかという2つのことについて考えた。

監督はまず一人の役者に演じさせることにこだわっていた。そうすることで一貫した演技になる。この作品はベンジャミン・バトンの一生を描いた物語だから、役者を分けてしまうと何人か使わなければいけない。そこにはどうしてもずれが生じてしまう。あとは監督がブラッドピッドものすごく好きだから・・・という理由もあるだろうな~www観客もこの監督とブラピのタッグが見たい!!ってなってるだろうし、もしかしたらそういった要望がこうさせてしまったのかもしれない。

次に、メイクでもよかったのでは?という問題だが、これはクロースアップに耐えられないだろうということからVFXで再現することにしたらしい。ただそこで思ったのはやはり生身の演技には負けてるなと感じた。CGで作り出すときにおこる不気味の谷現象というものがあるのだが、それを感じさせられるような映像であった。不気味の谷現象というのはCGで人間に近づけば近づくほど違和感が生じるというものなのだが、これをクリアしていくことは今後の映画業界にできるのだろうか・・・それこそ永遠を得ることができるんじゃないか・・・?永遠というものが今作で描かれていた一つの課題であったが、VFXが本当に生身の人間の演技に負けずに成功したならば本当の永遠というのは描かれてしまう。これは面白い問題だなと思った。監督が意図していたのかどうかは不明だが、このVFXへの執着が今作で描いていた永遠というものに繋がっているような気がしてならない。

 

 

●個人的に語りたい事

コロナ禍の今でこそ見るべき映画だな~という感想。今自分は育児休業中でほとんど家にいてステイホームと言われても、そりゃそうだろとしか思わない。でも旦那や子ども、多くの人が外出自粛で自宅にいることを余儀なくされている。それはベンジャミンのような新たな体験になるのではないだろうか。ステイホームという体験からまた見えてくるものがある。こんな時代になったからこそ新しい経験があると思ってこれからも強く生きていかなければならないのだな・・・と考えさせられるような映画でした。

ステイホームと言えば、旦那が緊急事態宣言が出たことで在宅勤務の日が数日だがするようになった。そこで問題発生ww我が家のWifi環境が悪いということである。UQのWiMAXというホームルーターを使用しているのだが、これ3日間で10ギガ?使ってしまうと速度制限がかかるというどうしようもないもの・・・。携帯代と合わせて月に4000円という破格の値段なのはありがたいが、これではネットフリックスで映画見たらすぐに速度制限がかかってしまうのだ・・・!!!旦那はその最悪なネット環境の中仕事をしている。が全く仕事にならないらしいwwwでも映画を見ることに文句を言ってこないあたりいい旦那だなwそれにかこつけて映画を見まくる自分も自分だけど・・・。

 

 

●総合評価  

13点/20点満点

・脚本 4点

難 ・ ・ ★ 易

・テーマ 2点

社会的、普遍的 ・ ・ ★ 雰囲気に特化

【ベンジャミン・バトンの一生

・演出 4点

・キャスト 3点