佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。

 

 

脳卒中後、手足が動きにくくなる原因はさまざまですが、主なものは「運動麻痺」が原因です。

 

 

しかし、運動の命令を出す場所や運動の命令を伝える経路にダメージがなくても、手足が動きにくくなる場合があります。

 

 

運動に関する脳の場所が直接ダメージを受けなくても、手足が動きにくくなる原因として、「感覚障害」が挙げられます。

 

 

感覚障害は運動麻痺と異なり、わかりにくい面があると思います。

 

 

今回は、感覚障害の影響について記していきたいと思います。

 

 

 歩行への影響

 

下肢の運動麻痺が軽度である脳卒中後の方々の感覚障害と歩行速度の関係を調査した報告があります。

 

 

この報告では、下肢の感覚障害を正常・軽度・中等度・重度と4つにわけて調査していますが、下肢の感覚障害と歩行速度に関連はみられなかったと報告しています。

 

 

 歩行自立への影響

 

下肢の運動麻痺が軽度で、入院時に歩行が自立していなかった脳卒中後の方々を対象とし、歩行の自立までの期間に影響を及ぼす影響を調査した報告があります。

 

 

下肢の感覚障害の重症度と歩行が自立するまでの期間とは有意な相関を認めていたと記しています。

 

 

これについては、Redingらの先行研究でも運動麻痺のみの方に比べて、運動麻痺に感覚障害を伴っている方では歩行自立者の割合が少なく、自立に至るまでの期間が延長することが報告されています。

 

 

それを踏まえ、脳卒中後の感覚障害の合併は、リハビリテーションの能率を低下させているので歩行自立までの期間を要すると解釈しています。

 

 

 上肢の動作能力への影響

 

脳卒中後の方々で上肢の運動麻痺が軽度であるが上肢の感覚障害がある方を対象に、上肢の動作能力との関連を調べた報告があります。

 

 

その結果、上肢の感覚障害と上肢の動作能力との間に有意な相関関係が認められていました。

 

 

また、先行研究では表在感覚障害のみ有する方では、障害がない場合と比較して上肢の運動機能に差はないけれども、深部感覚障害がある場合は障害がない場合より上肢運動機能が不良になるという報告があります。

 

 

 最後に

 

今回は感覚障害の影響についてまとめました。

 

 

脳卒中後、感覚障害を有していると、歩行の自立までの期間や上肢の動作能力と関連があることがわかっています。

 

 

手足の動きにくさには、運動麻痺だけではなく感覚障害も影響しています。

 

 

リハビリを行うとき、運動を行う最中に、ご自身の手足の感覚に着目していただけたらいいなと思います。

 

 

引用・参考

1) 石井 由起子 他:脳卒中片麻痺者の下肢の感覚障害が歩行速度に及ぼす影響. 理学療法科学 30(1):105–108,2015

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/30/1/30_105/_pdf/-char/ja

 

 

2) 小川 浩紀 他:脳卒中片麻痺者の下肢の感覚障害が歩行自立に至るまでの期間に及ぼす影響.Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)

 

 

3) 柳瀬 由起子 他:脳卒中片麻痺患者における麻痺側上肢の感覚障害と動作障害との関連.理学療法士学第37巻第6号(2010)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/37/6/37_397/_pdf/-char/ja

 

 

4) 大橋 拓朗 他:回復期脳卒中患者における感覚障害が簡易上肢機能検査の得点に与える影響. 日本臨床作業療法研究 No.3 2016

https://kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?path=sys%5Cjournal%5C20160810211603-5368AB6A63275B973FB4C14437DBC3B6CAE1580D89886878A168F12017DDAD0F.pdf&sid=848&id=2253&sub_id=39476&cid=471

 

 

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