佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。



脳卒中後の歩行のリハビリテーションを開始して間もない頃、麻痺側の足に体重を載せようとして、なかなか体重を載せることが難しかった方が多いのではないでしょうか。



そのとき、麻痺側の骨盤が後ろに引けてしまっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。



このような動きのことを、歩行時の骨盤後退ということが多いです。



今回は、歩行時に骨盤が後ろに引けるということ(=骨盤後退)についてまとめていきたいと思います。



 骨盤後退とは


麻痺側の足に体重の載せ始めから中盤(荷重反応期から立脚中期)にかけて、股関節が後方に残った状態のことを「骨盤後退」といいます。



患者さんにはわかりやすく説明するために、「お尻が後ろに残っている」「胴体が前屈みになっている」とイメージしやすい言葉で現状をお伝えしています。



骨盤後退は、麻痺側の足に体重を載せようとする時、以下のことが原因となり出現することが多いです。



□ 股関節が硬くて伸展方向に動かせない


□ 股関節周囲の筋肉の麻痺状態により股関節が伸展できない


□ 麻痺側の足を前に出す時、体幹を前屈みにした代償動作を使用している


□ 足首が硬くて尖足気味で下腿を前傾できない



歩行時の骨盤後退について、さまざまな報告がありますが、大規模研究は探し出せず、症例報告や単独施設での報告が散見されます。



その中でも、歩行時の骨盤後退について関連があった原因は、以下のものが挙げられていました。



□ 麻痺の重症度と歩行時の骨盤後退が相関している


□ 麻痺側の単独支持割合と歩行時の骨盤後退が相関している



 骨盤後退を減少させるための自主トレ


歩行時に、意識的に骨盤が引けないように麻痺側の足にしっかり体重をかけて歩くことが大切ですが、股関節や足関節が動きにくいと、歩行の中で動きを改善させることは大変です。



そのような場合、ご自宅や病室での自主トレとして、ブリッジ運動足関節ストレッチを取り入れていただいています。



ブリッジ運動

イラストは無料でダウンロードできる「自主トレバンク」さんのイラストを用いています。





出典:自主トレバンク


寝た状態で、両足を図のように立てて、お尻を持ち上げます。



この運動は、股関節伸展に関わる筋肉が活性したり、股関節前のストレッチ効果が期待できます。



どなたかと一緒に練習できる場合は、足首を押さえてもらってもよいと思います。



応用編として、麻痺側の足だけでお尻を持ち上げる方法を実践することもおすすめです。



足関節のストレッチ

こちらも「自主トレバンク」さんのイラストを用いています。





出典:自主トレバンク


足首が硬いと、歩く時に体重を十分に乗せることが難しくなります。



特に、ふくらはぎの筋肉の痙縮によって、つま先を上に上げにくくなり、尖足になりやすくなります。



図のように、座っているときに、踵が床につきにくい場合は、踵下ろしがおすすめです。



また、立位が安定している方は、図のように壁や手すりをしっかり持って、スクワットを行うこともおすすめです。



スクワットを行うときは、滑りにくい床の上で実践したり、滑りにくい靴を履いて行うと安心して行えます。



スクワットをするとき、股関節や膝にも意識を向けますが、足首をストレッチするときは、ふくらはぎが伸びる感覚にも気持ちを向けていただけたらよいと思います。



 最後に


今回は、歩行時に骨盤が引けるということについてまとめました。



骨盤が引ける理由と自主トレをご紹介しました。



自主トレを行うときは、無理をせずに安全に・痛みが出ないように実践してみてくださいね。



引用・参考

1) 上條 史子:片麻痺者の下肢・体幹機能差による歩行での体幹の動きの特徴. 文京学院大学保健医療技術学部紀要 第 8 巻 2015:1-6

https://www.u-bunkyo.ac.jp/center/library/hst2015_001-006.pdf


2) 江口 淳子 他:歩行時における脊柱起立筋活動. 川崎医療福祉学会誌  2003

http://www.kawasaki-m.ac.jp/soc/mw/journal/jp/2003-j13-2/24_eguchi.pdf


3) Suruliraj Karthikbab , et al. Pelvic alignment in standing, and its relationship with trunk control and motor recovery of lower limb after stroke. Neurology and Clinical NeuroscienceVolume 5, 2017

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ncn3.12092


4) 自主トレバンク




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