佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
脳卒中後、さまざまな症状を把握するために、医師やリハビリスタッフからたくさん検査を受けたことでしょう。
関節の動く範囲を測ったり、麻痺の程度のチェックがなされたと思います。
ふと思い出すと、なんのために行ったかわからない検査もあったのではないでしょうか。
わたしも学生のときに、この検査はなんのために行うのかわからないものがたくさんありました。
なんのためかわかりにくい検査の中に、「ジェスチャーやパントマイムの検査」が挙げられるのではないでしょうか。
これは、失行症の検査の1つです。
過去に失行症についてまとめていますので、あわせてご一読していただけると幸いです。
失行症の定義
失行症は、研究者でさまざまな見解をもち、定義や考える視点が異なります。
ここでは、日本高次脳機能学会が2003年に提唱した定義をご紹介します。
失行を「錐体路性、錐体外路性、末梢性の運動障害、要素的感覚障害、失語、失認、意識障害、知能障害、情意障害などのいずれにも還元できない運動障害」とする
出典:日本高次脳機能学会
簡単に言い直すと、運動麻痺や感覚の麻痺、失語症などの他の高次脳機能障がいや意識・知的・情動障がいがないにも関わらず、目的のある運動が行えなくなるのが失行症というわけです。
ジェスチャーやパントマイムの検査
失行症の分類のひとつに、「観念運動失行」という失行症があります。
これは、習慣的な動作を行うように指示されても行えなかったり、模倣ができなくなるような症状が出現します。
また、何かの道具を使っているようなパントマイムが行いにくくなります。
日常生活場面では、物品を扱うとき、使う関節を間違えたり、道具を使う方向を間違えたり、握り方を間違えて、行いにくさが出てきます。
道具の使う意味や場面にあった道具の選び方には問題がありません。
リハビリ場面では、左側の脳にダメージをきたした方に対して、スクリーニングとして検査をしたり、患者さんの行動をみて失行症の疑いを持ったときに、失行症に関する検査を行なっていきます。
その検査がジェスチャーやパントマイムの検査です。
指示されたジェスチャーやパントマイムを行ったり、リハビリスタッフが行うジェスチャーやパントマイムの真似ができるか確認していきます。
上記の表は、一般的な観念運動失行の検査内容です。
自動詞的身振りとは、道具を用いないジェスチャーのことです。
他動詞的身振りとは、道具を用いることを想像しながら行うパントマイムのことです。
これらの検査を行い、動作が行えたのか、どのような誤りが出るのか確認していきます。
最後に
リハビリで行う検査には、わかりにくいものがたくさんあります。
毎日の臨床場面では、何の目的のために検査を行うのか丁寧に説明していきますが、わたし自身不十分だなと感じることがあります。
しっかり、内容を共有して、患者さんの状態を把握して、リハビリ内容を組み立てていきたいと思っています。
引用・参考
1) 網本 和:観念失行・観念運動失行の評価.理学療法学 16(1) :25-29,2001
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました。.:*☆