佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
失語症がある方で、話したい内容は頭の中にあるのに、口から出てくる単語が間違うという症状をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
失語を理解する視点として、入力系(読む・聞く)に症状があるが、出力系(話す・書く)に症状があるか見ていく考えがあります。
出典:失語のみかた
言い間違えは出力系の症状で、「錯誤(さくご)」と呼ばれる症状です。
今回は、失語症による言葉の誤りについて、まとめていきたいと思います。
言い違いは2つに分けられる
言葉の言い違いは、大きく2つに分けられます。
□ 「大工」→「タイク」と言い間違える
□ 「舌」→「耳」と言い間違える
「大工」を「ダ/イ/ク」と音で区切って、その音を間違えるタイプがあります。
上の例で言えば、「ダ/イ/ク」を「タ/イ/ク」と一つ言い間違える症状です。
この言い間違えを「音韻性錯誤」と呼びます。
上の例の2つめの誤りは、「舌」を「耳」と言い間違えているタイプです。
言葉の音を間違えるのではなく、言葉(単語)そのものを間違えます。
このタイプの間違えは、言葉の意味のカテゴリーが似ているものと言い間違えることが多いです。
「舌」を「耳」と言い間違えるとき、体の部分の名前のカテゴリーで間違えているということです。
「バナナ」を「リンゴ」と間違えたり、「机」を「椅子」と言い間違えるといった症状です。
この言い間違えを「語性錯誤」と呼びます。
音韻性錯誤:
✔ 音節性錯誤・音素性錯誤・字性錯誤などとも呼ばれる
✔ 音の選択・配列の問題
✔ 「にわとり」→「にわたり」などの誤り
語性錯誤:
✔ 意味性錯誤とも呼ばれる
✔ 意味の要素の言い間違え
✔ 「犬」→「猫」など
錯誤に関するリハビリテーション
失語症のリハビリテーションの一般的な方法をご紹介します。
失語症に対する考えは、検査法や分析方法、治療内容もさまざまな考えがあります。
しかし、共通する考えは、以下に引用しているシュールの刺激法ではないでしょうか。
シュールの刺激法は、あくまで刺激法で、矯正や訂正をさせていくような方法ではありません。
出来るだけ失敗体験を引き起こさない、エラーレスラーニングに似ていると感じています。
音韻性錯誤がある場合
「えんぴつ」を「えんつぴ」と言い間違える場合、実際に平仮名を書いてみて、音韻の配列の誤りを修正したり自覚を促していきます。
語性錯誤がある場合
絵カードを見せながら、治療者が実際言葉に出して、刺激を行なっていきます。
「えんぴつ」の絵カードを見せながら、治療者が「えんぴつ」と言って、患者さんが言葉に出しやすいように刺激します。
また、言葉を発する前に、復唱・仮名単語音読・漢字単語音読なども行います。
失語症のリハビリは、一対一で患者さんと言語聴覚士とで行っていくことが多いと思います。
退院後、自宅で失語症のリハビリを行っていこうと思うとき、ご本人と支援する方でどんなことを行えばいいのか手がかりになれば幸いです。
引用・参考
1) 大槻 美佳:失語症の診療.臨床神経,48:853―856, 2008
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/048110853.pdf
2) 大槻 美佳.言語機能の局在地図.高次脳機能研究 27(3): 231 ~ 243,2007
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/27/3/27_3_231/_pdf
3) 種村 純:失語症治療における認知神経心理学的方法.高次脳機能研究 26(1): 1 ~ 7,2006
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/26/1/26_1_1/_pdf
4) 小嶋 知幸:失語症セラピーにおける認知神経心理学的アプローチについて.認知神経科学.Vol.11 No.1.2009
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/11/1/11_1_59/_pdf/-char/ja
5) 大槻 美佳:失語のみかた.神経治療 Vol.34 No.4(2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/34/4/34_374/_pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました.。.:*☆